ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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再びの首都

第370話 夕食会

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「アイリス……」

そう呟いた声は そんなに大きくはなかったんだけど、土竜の皆が同じように固まっていて静かだったこともあり 皆の耳に届いたようだ。

「ネリアさん、お母さんと知り合いなの?」

アイリスという名は珍しくないとは思うけど、私の髪色を見てそう言うということは 私の母を知っているのだろう。
私の質問にハッとしたように涙を拭って笑顔を見せてくれたけど、聞き間違いじゃないよね?

「ネリアさん、アイリスって 私のお母さんの名前だったの、先生のお家の人達は この色を知ってるから 戻しちゃったんだけど、この色はお母さんとお揃いなの。
ねえ、お母さんを知ってるの?」

「ヴィオ嬢、まずは夕食にしないかい? 君たちも今朝ウミユを発って来たばかりだろう?
そう短い話になることはないだろう、しばらく君たちには滞在してもらうし ゆっくり聞いた方がいいのではないかな?」

思わずネリアさんに問い詰めるような言いかたをしてしまったけど ドゥーア先生に止められた。
先生の言い方を考えれば先生も事情を知っているのかな?
お父さんとお兄ちゃん達も驚いていないけど、もしかして 知らなかったのは私だけ???
困ったように笑うお父さんに 頭をポンポンされたので 言わなかったのではなく 言えなかったのかもしれないと思い直す。

目の前の土竜の皆も 少し落ち込んだ様子だから もしかしたらネリアさんが知り合いというのではなく、土竜の皆が知り合いなのかもしれないね。
銀ランク冒険者同士だもの、そういう事もあるかもしれないね。


「そういえば 君たちが潜って1週間くらいしてからオトマンから手紙をもらっただろう?
5階層以降でポアレスが見つかったという事だったから 早速ウミユのギルドに採集依頼を出しておいたんだよ。
最初は怪訝な顔をされたようだったんだがね、私が昨年からハズレ素材で新しいレシピを発表していた事もあって 名前を出したら直ぐに 常設依頼にしてくれたようだよ。
お陰で火の週第二週から定期的に 首都へ届くようになったよ。
今はまだ炊飯魔道具が完成していないから 在庫になってるけど、あの魔道具が完成したらすごい勢いで売れると思うよ」

おぉ!それは凄いね。
お米は主食だから ある程度今は倉庫に積み上がったとしても、美味しさが分かれば 凄い消費されるはずだからね。
米と炊飯器、セットで凄い売れそうだね。

「あの炊飯魔道具の権利は ヴィオ嬢の「えぇ!??? 先生それは駄目だよ!」」

思わず被せてしまったじゃないか。
流石に魔道具の権利を私が持つのは大分やばいと思う。

今までのカルタは子供が考えてもおかしくない、例の公爵令嬢がトランプを考えたのも5歳だったらしいし 天才児ならあり得る。
ハンモック風呂だって、元々ハンモックは存在したし、お風呂だってある。
それを冒険者のマントの素材で考えたのは 私も父も冒険者だからという言い訳が出来る。

だけど魔道具は駄目だ。6歳が何で魔道具作れるねん ってなるし、購入する人が冒険者や平民ではなく 貴族になる可能性が高い。調査してくる人が絶対にでるから 今以上に危険が危ない。

「あぁ……、確かにそうだね。こうして共にいると 全くおかしくないと思うし 実際にあれを考え付いたのはヴィオ嬢だからこそだったが、そうだね……」

「先生、魔法と同じで ブン先生とエミリンさんが考えた事にしてもらえますか?」

「まぁ!」「お嬢様!そんな莫大な権利を頂けませんよ!」

名前を挙げた二人が 飛び上がってびっくりしてるけど、構想だけ渡して実験してくれたのは二人でしょう?出来上がりは見てないけど、最終の仕上げをしてくれるのも二人になるはずだ。
そう告げたけど、二人は 発生するであろう収益はお返ししますと頑なです。

「私とお父さんのお部屋をそのままにしてくれたでしょう? ここでのお勉強をみてくれたこともそうだし、今回もお兄ちゃんたちのお洋服だって準備してくれてるし、沢山してもらってばっかりだもの。
これからもお屋敷に来ていいよって言ってくれるなら きっとその時にも色々準備してくれるでしょう?
その度に申し訳ないなって思っちゃうもの。
だから、その収益を使ってもらえると 気兼ねなく来れるかなって……、ダメですか?」

「「んぐっ」」

必殺上目遣い!
今日の私は色合いも加算されて 可愛さアップしている、必殺技の効力も上がっている筈です。

「ははっ、これはヴィオ嬢の言う通りにしようじゃないか。
確かに最初は一部料理人や 前回レシピを伝えた領主たちだけが反応するだろうが、きっと直ぐに反響が出る。魔道具作りの質問も来る事を思えば 君たち二人が矢面に出ておいた方が面倒は少ないだろう?」

ドゥーア先生の言葉で納得してくれた二人。
そうか、新しい魔道具だから 設計図を販売したところで 上手に作れない事もある。そういう時に質問がきたりすることもあるんだね。それは面倒な事をお願いすることになったのでは?
逆に申し訳ないかもと思ったけど、そんな事は全く問題にならないと言われたので 甘えることにした。

夕食は ダンジョンで見つけた美味しい食材の話が中心で、オークナイトのお肉の美味しさを伝えたら 是非食べてみたいと言われたので 明日それも振舞うことにした。
深層階はナイトも沢山出たからね、ちゃんと先生たちの為に お土産用の肉も確保してますよ。

「深層階にしかない食材というのもあったのかい?」

「オークナイトの肉が大量に欲しいなら 深層階に行く必要がありましたが、食材は20階層までの種類と変化なしでしたね。というか 深層階は 木々が増えすぎて草花系の採集物が減りますし、肉以外の素材採集だったら20階層までで十分です」

オトマンさんが説明してくれている通りで、お米の群生地も開けた場所がないから 凄く少なかったんだよね。
お肉は上質になったけど、食材がほしくて入るなら20階までの往復で充分だと思う。

20階までの魔獣情報や 採集できる素材の情報などは ブン先生がメモしているので、あれを元に採集依頼を出すことになるのだろう。
明日以降のレシピ次第って感じかな?

そんな感じで お母さんのことも気になったけど、夕食会は ダンジョンのお話で盛り上がり お母さんの話は出なかった。
食事が終わり ネリアさんから話を聞こうと思ったんだけど、お兄ちゃんたちも一緒に聞きたいと希望したので 応接室に移動するのではなく このまま食堂でお話を聞くことになった。
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