ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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父娘の寄り道旅

第378話 カトリーナダムの町

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町の人たちから聞いたダムの正式名称〖カトリーナダム〗
女性の名前っぽいなと思ったら このダムの建設を指揮した ケストネル公爵のお名前だったらしい。
カトリーナ・ケストネル 
例のトランプとオセロの発案者ですよ。
ダムといい 河川工事といい、ケストネル女公爵の前世は国土交通省とか建築士とか そう言う感じの人だったのかな。
まあとにかくベラボウに頭がいいという事だけは確かだよね。

私の記憶にあるダムは 黒部ダムくらいで、他は道すがら「あ~、ダムだ~!」レベルの記憶しかない。
黒部ダムだって テレビで再現ドラマが流れてたのを見たくらいで 実際に見に行ったことはないと思う。
作れるとしたらダムカレーくらいで、カレーのスパイスが見つからない今は ダムシチューくらいしか作れないだろう。

ああ、ちなみに このダムの名前を決めたのは ケストンジェの町の住人達とオランジェ侯爵の総意だったそうです。
ケストンジェという町も ダムを建設するために集められた人たちの為に作られた町で、工事を行う人、その人たちが食事をするための食堂、工事で必要な道具類を売る人、などなど。
次々に人が集まってこの町になったそうで、ケストネル女公爵への感謝の気持ちから ケストネルの〈ケスト〉と、オランジェの〈ンジェ〉をくっ付けた町名が付いたんだって。

ダムが完成した時には 皆が呼んでいた〖カトリーナダム〗が定着しすぎており、女公爵ご本人は恥ずかしいからと名称変更を依頼したそうだけど、尊敬している皆から キラキラした目で頼まれたら断れなかったんだと。
噂でしか聞いたことがないけど ケストネル女公爵様 結構好きです。



ケストンジェの町は ダムにより堰き止められた湖から程近くにある。
ここまでは山道を上ってくる必要があるんだけど あの橋と町を建築した公爵ですからね、しっかり整備された道でした。
馬車用の2車線、その外側は歩行者用の道まであって 馬車道と歩道は20センチ程の段差もあるので 馬車が歩道に乗り上げるなんて心配もありませんでした。

「ここもあの橋の町と同じで 景色がすっごく良いね」

お宿には窓があり そこから見えるダムの湖は空の青を反射して凄く美しいし、夕方は湖が赤くなって とても美しかった。

「そうじゃな、これだけ木々が多いのに 魔獣の心配がないっちゅうのは 逆に不思議な感じがするが、あっちの森にはそれなりに居るようじゃから 棲み分けをさせておるんじゃろうな」

「サマニア村の初心者の森みたいな感じにしてるのかな」

「多分そうじゃろうな。こっち側は かなり森を拓いとるし、魔獣除けの間隔も狭く立てておる。
ダムの前に ここを開拓するのが大変じゃったと思うぞ」

確かに、山は魔獣の住処だから この場所に町を作るなんてかなり最初は危険だったんだろうね。
けど、湖の反対側にいる魔獣も サマニア村周辺程ではない気がする。

「それなりにいるけど サマニア村の裏山より 小さい気配が多いよ?」

「そりゃそうじゃろう。あの山レベルの魔獣が多ければ 山に入ろうなんて思えんはずじゃ」

どういうことかと聞けば、レミスドーレ山脈は 皇国によって遮られた魔獣たちが 逃げ場がなくて集まっているから 魔獣の量がそもそも多いんだって。
こっちのジョカイ山脈は縦長で、リズモーニ、メネクセス どちらにも行き来できるし、一番の魔素濃度を高める原因である竜がいない。

皇国周辺で山によって遮られているのは リズモーニだけらしく、他の国との国境は森とか川で、山ではないらしい。
なので 一番皇国からの被害を受けているのはリズモーニで、プレーサマ辺境伯が尊敬されるのは その一番危険なエリア一帯を守護しているからなんだって。

うん、プレーサマ辺境伯領地の中でも 山と川のダブル魔素で魔獣が凶悪になっているサマニア村周辺が この大陸の中で一番危険な場所って事ですね。
うんうん、なるほど なるほど。
それは秘境とか 魔境とか言われるわけですね。
あの村に住む人たちと この町に住む人たち、同じ辺境で 同じ山の近くなのに 何故こんなに違いがあるのかがよく分かったね。


天国にいるお母さん、私 凄い村で育ったみたいです。きっと一流の冒険者に成長することが出来そうです、安心して見守っていてくださいね。
PS、あの変な杖を使うことはないと思いますので ご安心ください。


町からダムまでは 見学ツアーのようなものがあるらしく、私たちも昨日のうちに申し込みをしておいた。
あの変な貴族が一緒なら嫌だなと思ったけど、貴族は貴族枠の案内役がいるらしいので 安心してくださいとの事。

≪お父さん、あの人たちって貴族じゃなかったのかな?≫

≪あ~、多分貴族じゃろうな。けど 平民に紛れるつもりで来ておるんじゃから その対応を期待しとるんじゃないか? ≫

昨日いた高貴さを隠せていないもう一組の貴族は 平民枠に一緒にいた。
ワクワクを隠せていない様子は 純粋にこのダムを楽しみに来ているんだろう。
兄弟なのか 弟さんは私と同じくらいに見えるけど、昨日いたはずのご両親は一緒ではないっぽい。
護衛がいるから大丈夫って事? 
偉そうな貴族はどう見ても大人だったから 単独行動(従者は引き連れていたけど)も分かるけど、彼らはどうみても未成年なのに 子供だけで行動させるって凄いね。

「お待たせしました。これからカトリーナダムの見学へ参りましょう。
このダムは一日に三回放水を行っております。将来的にはこの放水をさせる時の力を使って動力を作る予定となっていますが、こちらはまだ開発中です。
ダムの上を歩いて頂きますが、湖はとても深いですし 魔魚もおります。
反対側の川の方は高さを作っておりますので 落ちれば非常に危険です。助けに行くこともできません。
お子様連れの方はくれぐれも お子様の手を離されませんようにお願いします」

集合場所に集まったのは十人ほど。
とはいえ その十人の殆どは 高貴な子供達の従者だから 実質私たちと彼らの二組と言えるだろう。
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