見つからない願い事と幸せの証明

鳴海

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Side レオポルト(本編)

01

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 前世、日本人として生きていた俺は、正直言ってあまり幸せとは言えなかった。

 下半身がだらしない親父は浮気を繰り返すダメ人間で、付き合う女たちに金を貢ぎまくっていた。そのせいでウチは常に貧乏で、お袋はいつも泣いてばかりいた。

 そんな光景を幼い頃から見て育った俺は、浮気するような男には絶対にならないと決めていた。なによりも家族を愛し、大切にする人間になろうと思いながら成長したのだった。


 中学二年の梅雨の頃、親父が愛人と失踪した。そこからお袋との二人暮らしが始まった。

 親父の残した借金のせいで生活は苦しかったけど、それでも俺は親父がいた頃より幸せだった。お袋を泣かしてばかりのあんなクソ親父なんて、いない方がよほどマシだと思ったからだ。

 親父の失踪前から近所のスーパーでパートをしていた母親は、今はそこの社員となって懸命に働いている。俺も高校生になってからはコンビニでバイトをして、少しでも家計の助けになればと頑張っていた。


 高校三年の春、進路をどうしようか真剣に悩んだ。
 やっぱり就職かな。できれば安定していてリストラのない公務員がいい。

 そんなことを考えていた俺は、ある日曜日の昼下がり、お袋から中年の男性を紹介された。驚いたことにお袋はその男性と交際しているらしく、彼はお袋が務めているスーパーの店長をしている人らしい。

 その人の隣にいる時のお袋は、とても幸せそうな顔をしていた。俺が今まで見たことのない女の顔で、親父がいた頃には決して見せたことのない、少し甘えたような色のある表情をしていた。

 彼に全幅の信頼を寄せて穏やかな顔をするお袋の姿に、俺は大きな喜びと一抹の寂しさという二つの感情を持ちながらも、満面の笑みで二人に祝福の言葉を送ったのだった。

 お袋と彼は半年後に籍を入れ、俺たち三人は家族になった。

 新婚家庭にいつまでも俺がいては邪魔に決まっている。馬に蹴られるのは嫌だから、就職したら一人暮らしをしようと思っていた。

 お袋たちが住む家からそれほど遠くなく、でも近すぎることもない丁度いい距離のアパートでも借りて住もう。そんなことを考えながら、バイトが終わって自転車で家に帰っている最中、俺は信号無視して横断歩道に突っ込んできた軽自動車に轢かれて……多分――――死んだ。

 記憶がそこまでしかないから、はっきりしたことは分からない。でも多分、そういうことなんだろうと思う。


 本当はもっと長生きするつもりだった。自分の家族を得て、彼らを愛して大切にしようと思っていた。

 それができなかったことは残念だったけれど、でも、本当だったら最大の心残りになるはずのお袋は、もう俺がいなくても幸せに生きていけることが分かっている。それだけは本当に良かったと心から思った。

 お義父さん、お袋をどうかよろしくお願いします。
 俺が死んだことを知ったら、きっと泣くだろうと思うけど、そんなお袋をどうか、どうか慰めてやって下さい。

 先立つ不孝、本当にごめんなさい。許して下さい。

 これからの二人の更なる幸せを、心から祈っています。




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