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Side レオポルト(本編)
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俺たちは十四才になった。
カイルはますます体が大きくなり、大人と変わりないくらいの体格になった。少年というよりは青年と呼ぶに相応しい、しっかりとした見た目になっている。
相変わらず足は長いし顔はかっこいいし、どこからどう見てもイケメンだ! 金髪碧眼の王子様だよ!
来年、俺たちは学園に入学するために、住み慣れた領都を離れて王都へ向かうことになる。
カイルは我が母である侯爵夫人の斡旋で貴族の養子になるために、俺よりひと足早くここを発つことになるはずだ。その時に、俺とは一旦お別れとなってしまう。
そうは言っても、学園ですぐに再会するんだけどね。
学園でカイルは、この国シャルロタ王国の王女と出会うことになる。王女は俺たちと同い年だ。その王女は確か、前世で言うところのツンデレ気質の美少女で、カイルと王女は入学式の日にお互いに一目惚れすることになる筈だ。
そして困ったことに、俺ことレオポルトも王女に一目惚れするというのが本のストーリーだった。だから学園に入学して以後も、俺はカイルのことを一方的に恋のライバル視して、邪険にし、嫌い憎み、なにかにつけて恥をかかそうとしたり邪魔したりしようとする。
うん、話を面白くするための必要悪って感じの役どころだな。
そんなレオポルトのしょぼい活躍とは関係なく、ツンデレ王女とカイルとの仲は、なかなか思うように進展しない。
前世で読者の立場だった俺は、一進一退する二人の関係をもどかしく思ったり、たまに素直に振舞う王女のかわいさに、物語の中のカイルと一緒になって胸をキュンキュンさせていたものだった。
俺たちの一学年上には、魔法大国ヴァルトーシュのイケメン第二王子がお忍びで留学している。この人は物語上かなりのキーマンで、血筋でいうとカイルの従兄弟にあたるこの第二王子こそが、本当の恋のライバルとして、カイルと王女との間に立ちはだかることになるんだ。
俺? 俺は王女に洟も引っ掛けてもらえない。勝手にカイルをライバル視している痛い子の役柄だ。泣ける!
それに比べて第二王子は知的で優秀、銀髪碧眼で見目も麗しいしっとり系イケメンだ。田舎で平民として育った元気系イケメンのカイルとは本当に好敵手ってやつで、学園での様々なイベントで競い合いつつ、カイルの成長を促してくれる大切なキャラだ。
最終的にはカイルと第二王子とは無二の親友となる。そして、二人は協力し、圧政に苦しむヴァルトーシュ王国を諸悪の根源である国王と王太子の手から救い出す行動を起こし、それに成功するんだ。
カイルは王位につき、後世に賢王として名を残す偉大な為政者となる。無論、シャルロタ王国のツンデレ王女を嫁に迎え、子宝にも恵まれて幸せに暮らすことになるわけだ。それで物語エンド。
ちなみに、イケメン第二王子は反乱成功を目前に、お涙頂戴係として死んでしまうことになる。ヴァルトーシュ側からの暗殺者から襲われた時、カイルを庇って毒針を受けてしまい、そのまま帰らぬ人となってしまうんだ。
その亡き親友から受け継いだ熱い魂と、父と母の無念の想いを胸に、カイルは血の滲む努力をしながら困難に立ち向かい、反乱を成功に導くことになるわけだ。
あああ、思い出すだけで超感動する!!
どこにでも転がってそうな話といえばそうなんだけど、小学生の俺にとっては血沸き肉躍る素晴らしいストーリーだったんだ。
浮気者でクソ野郎だった親父のせいで、常に荒んだ家庭での貧乏生活を強いられていた俺にとって、どんな困難や苦労にも負けず挫けず、正面から立ち向かうカイルという人間は、憧れであり、また同志のようなものだった。
いつも励まされ、元気付けられていたんだ。
だから俺はカイルのことを心から尊敬していて、現世では悪役レオポルトとして生まれてしまったけど、俺はなにがなんでも、どんなことがあっても、いつだってカイルの味方でいたいと思っている。
そんな俺には、今ものすごく悩んでいることがある。
この先、俺はどう行動するのがベストなのか、ということについてだ。
本の通りの展開を望むなら、俺は王都の学園に入学するべきなんだろう。そして、王女様に一目惚れしてカイルに意地悪し、同級生からは嫌われ、最終的にフラれる上に社交界から追放、更に親からも勘当、みたいな流れになればいいのだと思う。
しかし、本当にそれで上手くいくのだろうか。
現在の俺は悪役をしていない。むしろカイルとは良い関係を築いていて、深い絆のある乳兄弟としてこの世界に存在している。
そんな俺が学園に行ったら、カイルとヴァルトーシュのイケメン第二王子との関係を邪魔してしまうのではないだろうか。
それはすごくマズい気がする。
邪魔になるくらいなら、俺は王都には行かない方が良いような気がしているんだ。
そりゃあ確かに、美少女の王女様には会ってみたいと思う。本の中の王女が現実世界ではどういう姿をしているのか、単純に興味があることは否めない。
それはヴァルトーシュの第二王子にも同じことが言えて、本の中で活躍していたキャラたちには、全員に会ってみたいという願望がある。
けれど、カイルの邪魔は絶対にしたくない。俺の中で、カイルの幸せがなにより一番に優先されるべきもので、それを邪魔するような行動は一切取るつもりはない。
だとすれば、やはり王都には行かず、この領都に留まるべきだろうか……。
我が侯爵家の跡取りは、今は王都で生活している長男である。おそらく、襲爵後も王都に留まり、政治の中枢を活躍の場にするつもりだろう。
俺は領主代行としてこの領地を発展させていくことにより、兄上や侯爵家のために尽くしていく。そういう道を選ぶべきではないだろうか、それが正しい選択なんじゃないかと最近は思っているんだ。
なにせ俺は精霊王の加護持ちなワケで。
俺のいるところは天候に恵まれ作物は良く育ち、病は流行ることなく皆が幸せに暮らせる土地になるとのこと。
確かに思い出してみれば、加護をもらった頃から、ウチの領地には魔獣がほとんど襲ってこなくなった。定期的に雨も降っていつも豊作だしね。いやはや、精霊王からの加護の効果は絶大だな!
なんてことを考えている俺の周りでは、かわいい緑色の人型妖精が一匹、元気に楽し気に飛び回っている。
見ているだけで笑顔になるほどめっちゃカワイイ。
肩にとまってる時に指を出すと、この妖精は嬉しそうに指に抱き着いてくる。すっごく小さな手。生きて動いていることが不思議なくらいに愛らしい。
その妖精がある方向を指差した。俺はその方向に歩き、普通なら滅多に見つからない珍しい薬草を手に入れて微笑んだ。
「ありがとうね、緑ちゃん!」
お礼を言うと、緑ちゃんこと緑色の妖精は、空中でくるりと一回転し、俺の肩に止まったかと思うと、ほっぺにチュッとキスしてくれた。
ほわー、頬がゆるむ。すごく幸せ。もう堪らなく可愛い!
今日、俺とカイルは妖精の泉がある森とは別の森に来ていた。そこでカイルは狩りをし、俺は薬草や果物を集めている。
俺たちはこうやって森で狩りをしたり、薬草や山菜、きのこ、果物などの植物を採ったりしては、それを売って得た金銭を孤児院に寄付する活動を定期的に行っていた。
俺はやっぱり運動神経があまり良くないので、狩りはどうしても苦手だ。だったらできることをしようと思い、薬草集めに精を出すことが多いんだけれど、逆にカイルは狩り専門で、森に入ればいつも大物を仕留めてくる。
なにをやっても、なにをやらせてもかっこいいし上手くやる。流石は主人公だと本当にそう思う。
ここ数年、俺に妖精の緑ちゃんがいるように、カイルには狼に似た姿の聖獣ロルフが付き従っていて、主の身を守りながら狩りの手伝いもしてくれている。
カイルと同じく、ロルフも狩りがとても上手い。だから狩り組はいつだって大猟で、ロルフが来てから、狩りで得られる獲物の数は二倍以上に増えている。
そのおかげで、近頃の我が領都では、獣から得られる肉や皮、骨や角などの食材や、道具作りの材料に困ることがほとんどなくなった。本当にありがたい。
以前、ロルフに質問したことがある。
ロルフに手伝ってもらって狩りをすることは、森の動物虐めをさせてしまうことになり、それでロルフの聖力が弱ってしまうことにはならないのだろうか、と。
ロルフがいなくなると困ってしまう。ロルフがいてくれれば、例えなにがあってもカイルは安全だと安心できる。
ロルフはすごく強いし、人間が知らないような強い魔法だって使うことができるという。だから、ロルフにはずっとカイルの傍にいてもらって、守ってあげて欲しいと思うんだ。力が弱って契約が切れたりしたら、本当に本気で困ってしまう。
だから気になって尋ねてみたら、狩りは問題ないとのことだった。
魔獣は勿論のこと、森の獣を狩ることは悪しきことではないらしい。どうしてかと聞くと、獣も増えすぎると生態系を崩すことになるし、数が減れば増やそうと努力することにより、生物としての生命力が強くなる。それは自然界にとって、とても良いことであるらしい。
遊戯としての狩りは褒められたものではないけれど、生きるために必要で行う狩りは、全く問題ないとのことだった。
それを聞いて、俺は心底ホッとした。ああ、良かった。
狩り組に対して俺はと言えば、さっきみたいに緑ちゃんが手伝ってくれるから、薬草を簡単に見つけることができて、すごく助かっている。
薬草学は家庭教師の先生から習いはしたけれど、有名なもの数種類について多少の知識を得た程度だ。その植物がどこに群生しているだとか、どの季節によく採れるだとか、そういった詳しいことまでは覚えていない。
勿論、薬草学の本にはたくさんのことが書かれてあった。覚えておけば為になることが、そりゃあもうたくさん!
しかし、残念ながら頭の良くない悪役設定の俺には、その本の知識をほんの少ししか頭に蓄えることができなかったんだ。なので、緑ちゃんの存在はものすごくありがたい。
「近くで薬草が生えてたら教えて欲しいんだけど、お願いできる?」
そう言うと、緑ちゃんはすぐに俺を薬草のところまで連れて行ってくれる。
時には季節外れの珍しい薬草が取れることもある。そういった薬草はかなり高値で取引されることが多い。それらを売って得たお金で、食料や薬や本を買って孤児院に持っていく。そうしたら、子供たちがものすごく喜んでくれるんだ。その明るい笑顔が見たくて、ついつい頑張ってしまう。
でも実を言うと、俺が孤児院に肩入れしているのは、単に子供たちが大好きだからって理由だけじゃない。
本のストーリーにおいて、将来この孤児院の子供たちが、カイルがヴァルトーシュでの反乱を成功させる上で、とても大切な役割を担っていると知っているからなんだ。
本の中で、悪役レオポルトとあまり仲が良くないカイルは、孤児院に入り浸って子供たちと仲良くなる。カイルは貴族教育で得た知識を彼らに遊び感覚で教えるんだけど、それは普通だったら平民が持ちえない高等教育の内容ばかりなんだ。
おかげで成人して孤児院を出た彼らは、近隣諸国の様々な商店に高待遇で職を得ることが可能になり、カイルに対する友情と感謝の気持ちを胸に抱いたまま、世界中に散らばっていくことになる。そしてカイルがヴァルトーシュで反乱を起こした時、彼らが様々な情報を集め、また必要な物資を素早く手に入れてくれるおかげもあって、反乱は無事に成功を来すんだ。
将来、カイルの大切な仲間になる孤児院の子供たちに、俺にできることならなんだってやってあげたいと思うのは当然のことだ。勿論、単純に子供たちのことが大好きだし、助けになりたいって気持ちもあるしね。
兄弟がいても会ったことがない現世の俺にとって、孤児たちは疑似的な兄弟のような存在でもあるんだ。だから、カイルのことがなくても、俺は彼らのことをとても大切に思ってる。
だからかな。孤児院のためについ頑張りすぎちゃって、それでカイルから怒られることがたまにある。孤児ばかりじゃなく、俺のことももっとかまってくれ、だとか言ってね。
ふふ、また面白い冗談言っちゃって。
顔や性格が良いだけでなく、冗談まで上手いなんて、流石はカイルだなと感心する。悪い所がひとつも見当たらないどころか、良い所はどんどん増えていくばかり。
カイルという人間は、神が作りたもうたこの世の奇跡みたいな存在だなぁ、とつくづく思ってしまう。ホント大好き!
そんな風に、俺がカイルのいい所を頭の中で数えながら、緑ちゃんと楽しく薬草を採っていると、ロルフを引き連れたカイルが森の奥から戻ってきた。
「お疲れ様、カイルにロルフ。首尾はどうだった?」
「上々だ。かなりの大物が取れたから解体に時間がかかった。戻ってくるのが遅くなってごめん。なにも問題はなかったか?」
「平気だったよ」
『精霊王の加護持ちのレオポルトに襲い掛かるような獣はそうそういまい。心配することもないだろう』
「分かってるけど、それでも心配なんだよ」
『過保護の甘やかしだな』
「それを言うならロルフだって同じだろう。さっきだって、ホラ…」
カイルからジト目で見られ、見た目狼のロルフがなんとも言えない顔をする。俺が首を傾げると、ロルフは少しそわそわするような態度を見せた後、インベントリとかいうロルフ専用の亜空間倉庫みたいなところから、果物のついた枝を出して俺に渡してくれた。
『前にそれが好きだと言っていたであろう。あの時は孤児たちに全部渡してしまっていたが。今日はレオポルトが自分で食べろ』
「僕のためにこれを? これってなかなか見つからないし、見つけても今の季節だと高所にしか残っていないから、手に入れるのが難しいのに……」
手に持ったその果物をまじまじと見つめた後、俺は満面の笑顔でロルフにお礼を言った。
「ありがとう、ロルフ。すごく嬉しいよ!! 今年はもう食べられないだろうって諦めてたんだ。うわー、嬉しいなぁ。本当にありがとう!」
薬草の入った籠と、今貰ったばかりの果物を足元に置くと、俺は両手を広げてロルフの首元に抱き着いた。
「ロルフ、大好き! 大切にじっくりと味わって食べるね」
ロルフの金色の美しい毛並、すごくツヤツヤのモフモフで抱きつくと最高に気持ちがいい。俺が頬をスリスリ擦りつけて毛並の感触を楽しんでいると、ロルフの尻尾が機嫌良さそうにぱたぱた動いているのが見えた。
体は大きいけれど、ロルフもすごくかわいいと思う。緑ちゃんと同列一位だね。
しばらくそうやってロルフにくっついて毛並を堪能していたら、目に表情のない変な笑顔のカイルから、ベリッと引き剥がされてしまった。
「もういいだろう。いい加減いつまでくっついてるんだ」
「ごめんね、カイル。怒っちゃった? 心配しなくても、ロルフはカイルのロルフだから! 僕が取ったりしないから安心して!」
カイルは俺がロルフと仲良くするのは気に入らないらしい。
まあ分からないでもない。こんなにかっこよくて有能なパートナーだもの。他人に奪われたくないのは当然だと思う。
余計な心配をカイルにさせないように、俺も気を使うべきだな。
しかし、それが分かっていても、モフモフが気持ち良くて幸せで、つい抱き着いてしまうことをやめられない。
それにロルフ自身、さっきみたいにお土産を持って帰ってくれたりして、俺にすごく優しいものだから、ついつい調子にのって甘えてしまうんだ。反省、反省。
でも、本当に心配しないで欲しい。ロルフが主と認めているのはカイルだけなんだから。とは言え、嫉妬するカイルも人間味があってとても素敵だと思うけどね。
そんな気持ちを込めて「ロルフが一番好きなのはカイルだよ」って言ってあげたら……なぜだろう。カイルからこれ以上ないくらい大きなため息をつかれてしまった。
んん? どうしたのかな。
「ともかく、あまり遅くなる前に町に戻って、獲物や薬草を換金してしまおう。今日中に孤児院に行くんだろう?」
「カイルが疲れていないならそうしたい」
「よし、それじゃあ急いで帰ろう」
俺たちは仲良く並んで町へと馬を走らせた。ロルフも俺たちの後ろを走って付いてきてくれている。
ちなみに、カイルの今日の獲物は、イノシシ二頭とシカが一頭らしい。そして、ロルフがクマ一頭。
なるほど、聞いていた通りかなりの大猟だ。
既にイノシシとシカの解体は済ませたらしいけれど、クマは大物すぎるのでそのまま毛皮製品を取り扱っている商店へ持ち込むそうだ。
獲物はすべてロルフのインベントリに入れてるらしい。
便利だな、インベントリ。俺も欲しい。
ロルフに聞いたところによると、ほぼ無限に物を収納できるロルフ専用の亜空間であるらしい。遠くに出かける時や荷物が多い時など、とても便利なアイテムなんだそうだ。内では時間が止まっているから、生物も腐らないんだって。すごいなぁ。
どうやらそのインベントリというものを持つためには、大量の魔力が必要ならしく、カイルならその内持てるようになるかもしれないとロルフは言っていた。
あああ、やっぱりカイルは凄いんだね!
魔法大国の王族の血筋は伊達じゃない。
とにかく、ロルフがいてくれると、荷物の持ち運びがとても便利で助かっている。今日みたいに狩りで大猟の時などは特にそうだ。
これもすべてカイルが聖獣ロルフと契約してくれたおかげだよ。
カイルにはどれだけ感謝してもしきれないな。
また心の中で平伏しておこう。
しばらくすると、町の防御壁まであと少しのところまでやってきた。ここでロルフには普通の犬の大きさになってもらう。獲物もインベントリから出してもらい、隠しておいた荷車に積んだ。
ここからは自分たちで町まで荷を運ぶことになる。そうしないと、ロルフが特別な存在だということがバレてしまうからだ。
精霊王と会ったことは、他の人間には内緒にしてある。知られたら国家レベルでの大騒ぎになるからだ。
聖獣との契約者も精霊王の加護持ちも、国に捕らえられ、軟禁に近い生活をさせられる可能性があるらしい。事実、国の権力者に捕らえられ、幽閉されたまま生涯を終えた契約者や加護持ちも過去にはいたのだそうだ。
そんな話をロルフから聞かされた俺たちは、考えた末、精霊王に会った話は誰にも言わないことに決めた。だから、領主館や町の人たちにでさえも、ロルフのことは聖獣とは言わずに猟犬ということにしてあるのだけれど、皆疑うことなくすぐに信じてくれた。ホッとした。
領都入口の門の前には、いつも門番が立っている。
今日の門番役は顔見知りの自衛団の一人で、二十代半ばとまだ若く、気さくで楽しいお兄さんのダンだった。絶賛彼女募集中らしい。
「坊ちゃん、お帰りなさい。どうです、大猟でしたか?」
「ただいま戻りました! ほら見てよ、カイルがたくさん狩ってくれたよ。今日はね、シカとイノシシを狩ってくれたんだ。イノシシは二頭だよ」
「おっ、やるなぁ、カイル。また腕を上げたか」
「まあね。あとはロルフがクマと戦って勝った」
クマと聞いてダンが目を大きく見開いた。
「本当かよ、すげーな!」
「クマは……そうだな、革製品店に卸しにいくつもりだったけど、兵舎に差し入れするよ。肉は皆で食べてくれ。渡していいよな、レオ」
「勿論だよ! そもそも僕に了解を取る必要はないよ。ロルフが狩った獲物だし、そのロルフの主人はカイルなんだから。ただ、毛皮は革製品店で換金してもらってくれる? 孤児院に寄付したいから」
「了解了解! ひゃほーい、クマ肉大好き。皆喜ぶぞー! にしても、カイルもすげーけど、ロルフもすげーなぁ。普通は一対一の対決で犬はクマにゃあ勝てねーだろ? いやー、いい犬だな」
そう言ってロルフの頭をダンが撫でようとしたけど、ロルフはふいっと避けてしまった。
聖獣は誇り高い。誰にでも触らせるわけではない。それを考えると、ロルフに触らせてもらえる俺は、とてもありがたいと思う。
ダンはロルフの態度を気にせずハハハと笑い、主人にだけ忠実なのも良い犬の証だな、と朗らかに言った。
ダンにクマを渡して俺たちが門から町に入ると、すれ違う人たちが皆声を掛けてくれた。挨拶してくれたり、猟の成果を聞いてきたり、奥さんや子供の話をしてくれたり、近所で猫の子が生まれた話をしてくれたりと、領主の息子とその乳兄弟に対し、皆すごくフレンドリーで温かい。
本当に我が領民たちの心の健全さときたら、なんて素晴らしいのだろうとシミジミ思う。
俺が前世を思い出す前、中身が悪役レオポルトだった頃は、俺は領民たちからものすごく嫌われていた。
そりゃそうだろう。我儘で自分勝手で暴力的な貴族のお坊ちゃんなんて嫌われて当然だ。
そんな俺も、近頃になってやっと領民たちと打ち解けてきた。町で会うと、坊ちゃんと呼びながらも大人は我が子の様に、子供は兄弟みたいに接してくれる。本当にありがたい。
孤児院の運営にしても、領主からの寄付金で大半が賄われているけれど、それに負けないくらい町の人たちからのカンパも多く、とても助かっている。
思いやりや助け合いの精神が、当たり前のように皆の心に宿ってるんだ。
ウチの領民は本当に最高だと思う。
こんな素晴らしい人たちの中で育ったから、悪役レオポルトからどんなに虐められても、カイルは真っ直ぐ健やかに成長できたんだろうな。
うー、そんなことを考えていると、なんだか感動して泣けてきちゃったな。
気付かれないように俺がコソッと涙を拭いていると、カイルが優しい目で俺を見つめてくれていた。
「領民が皆温かい心を持っているのは、この領地がとても豊かだからだと思う。自分が恵まれているから、他者を思いやることもできる。じゃあ、どうしてこの領地が豊かでいられるかと言うと、それはレオが精霊王の加護を持っているからに他ならない。つまり、全部レオのおかげってことだ。誰よりもすごいのはレオなんだ。俺はそう思う」
「そ、そんなことないと思うけど……でも、そんな風に言ってもらえて嬉しいよ。カイル、とても優しい言葉をありがとう」
カイルに褒められて、俺は照れくさくて赤くなった。
俺は本当なら悪役だった。嫌われ者のはずだった。それなのに、あんなに優しい言葉を言ってもらえて、お世辞なのは分かってるけど、もう死んでもいいと思うくらい幸せで胸がいっぱいになる。
その後、俺たちは狩りの獲物の一部を換金し、買い物を済ませて孤児院へと向かった。院の世話係をしてくれている教会のシスターに、肉と野菜に本、そして残ったお金を手渡した。
「レオポルト様、カイル、いつも本当にありがとうございます」
老年の域に達した優しい笑顔のシスターに頭を下げられ、俺もカイルも恐縮してしまう。
「僕こそシスターにお礼を申し上げなければ。子供たちは未来の我が領を支えてくれる宝物のような存在です。そんな大切な子供たちの世話をして下さり、いつも本当に感謝しています」
「俺は狩りは得意だから、肉で良ければまた持ってくるよ」
「ふふふ。あらあら、今日もお肉がたくさんね。育ち盛りがたくさんいますから、とても助かります。子供たちとお夕食、一緒に食べていきますでしょう?」
「お邪魔じゃなければ、ぜひそうさせてください」
「ご馳走になります」
「子供たちも喜びますわ」
それから俺たちは子供たちと走り回って遊び、一緒に本を読んで勉強し、楽しみながら料理の手伝いをした。
皆と共に食べる食事はとても美味しかった。貧しいけれど温かく、笑顔が溢れるこの場所は、まるで楽園のようだと俺には思えた。
かっこいいカイルは女の子にモテていて、いつもキャーキャー言われて取り囲まれている。あの女の子たちの何人かにとって、カイルは初恋の人だったりするんだろうな。俺の知らないところで誰かがカイルに恋している。しかもそれはきっと初恋で、彼女たちにとって一生の大切な思い出になったりするわけだ。
そう思うと、なんだか胸がキューンとしてしまった。ふふ、胸の奥がむずがゆーい。
女の子に人気のカイルとは違い、俺はどちらかというと男の子に人気があるっぽい。
抱きつかれたり、一緒に走り回って地面を転がりまくったり、小柄な俺より体のおっきな子からは特に人気で揉みくちゃにされてしまう。
青筋立てたカイルがその子たちを蹴散らしているけれど……そんなに気にしなくてもいいのに。俺も男だ。ちょっとくらい乱暴な遊びをしたって平気だよ。
え、無防備すぎ? 俺以外に触らせるな? ん~?
なんだか良く分からないけど、とにかく心配してくれてるんだよね、ありがとうカイル! 相変わらず優しいね!!
散々遊んでから孤児院を出た後、領主館へと帰る道すがら、俺は真剣に考えていた。やはり俺がいるべき場所はここ。王都ではなく、我が侯爵家領地なのではないだろうか、と。
前世の高校生までの知識はあるし、現世でも家庭教師について勉強はしっかりとやってきた。そりゃあカイルに比べたら成績は良くないけど、それでも、今更王都に行って学校に通う必要があるとは思えない。
カイルと離れるのはすごく寂しい。
でも、どこにいても、どんなに離れていても、俺は誰よりもカイルの幸せを願っているし、大切に想ってる。もしも必要とされたなら、どこへだって、どこにいたってすぐに駆けつけるつもりだ。
前世で読んだ本の中での俺の役どころは、カイルの子供時代を彩るための悪役だ。だから、カイルの子供時代の終わりを象徴する王都学園の卒業式の日、俺はカイルにやらかしてきた数々の無礼な行いにより、手酷く断罪されることになる。
それを考えると……やはり王都に行くのは少し怖いとも思う。
それがカイルのためになるのなら、断罪されることは嫌じゃないし我慢もできる。だけど……他の誰でもなくカイルから断罪されるのは、やっぱりとても悲しいと思ってしまうんだ。
気になっていることはもう一つ。学園入学後、カイルが新しい人間関係を築いていく過程の中で、悪役ではない俺の存在が、カイルとカイルの周囲に変な影響を与えずにいられるのかどうか。
とにかく、カイルの邪魔をしてしまうことが、なによりも怖くて仕方がない。
と同時に、これまで毎日一緒に過ごしていたカイルが、俺から離れて別の人を親友とし、別の人を愛する姿を見なければならない日々は、俺にとってとても寂しくて辛いものだと想像できる。
寂しさのあまりカイルに縋ってしまい、彼の幸せを邪魔してしまうことが、足を引っ張ってしまうことが、他のなによりも怖くてたまらなかった。
それを考えても、俺はカイルと一緒に王都へ行くべきではないと分かる。
うん、決めた。
やはり学園へは行かず、この領都に残ろう。
それが最善の選択だと信じ、俺はついに決断したのだった。
一緒にいられる時間はもう残り少ない。
だからこそ、残りの時間を大切にしようとそう思った。
いっぱい一緒に笑おう。
いっぱい一緒に楽しいことをしよう。
困ったり怒ったり、たまには悲しんだりも一緒にしよう。
それらの思い出を胸に、俺はここで頑張るから。
カイルがこの地を離れても、俺はここがもっと栄えるように、ずっと努力するからね。
いつか疲れたカイルがちょっと休憩したくなった時、安心して休める場所を俺がここに作っておくから。
だからカイル。
俺の大好きな心から尊敬する憧れのカイル。
ずっと一緒にいるという約束を破る俺を、どうか許して下さい。
大好きな大好きな大好きなカイル。
これまでどんな時もずっと一緒にいたけれど、もうすぐお別れです。
どうか、どうか幸せになって下さい。
カイルが誰よりも幸せになってくれること。
それこそが、俺にとっての最良の幸せなのだから…………。
カイルはますます体が大きくなり、大人と変わりないくらいの体格になった。少年というよりは青年と呼ぶに相応しい、しっかりとした見た目になっている。
相変わらず足は長いし顔はかっこいいし、どこからどう見てもイケメンだ! 金髪碧眼の王子様だよ!
来年、俺たちは学園に入学するために、住み慣れた領都を離れて王都へ向かうことになる。
カイルは我が母である侯爵夫人の斡旋で貴族の養子になるために、俺よりひと足早くここを発つことになるはずだ。その時に、俺とは一旦お別れとなってしまう。
そうは言っても、学園ですぐに再会するんだけどね。
学園でカイルは、この国シャルロタ王国の王女と出会うことになる。王女は俺たちと同い年だ。その王女は確か、前世で言うところのツンデレ気質の美少女で、カイルと王女は入学式の日にお互いに一目惚れすることになる筈だ。
そして困ったことに、俺ことレオポルトも王女に一目惚れするというのが本のストーリーだった。だから学園に入学して以後も、俺はカイルのことを一方的に恋のライバル視して、邪険にし、嫌い憎み、なにかにつけて恥をかかそうとしたり邪魔したりしようとする。
うん、話を面白くするための必要悪って感じの役どころだな。
そんなレオポルトのしょぼい活躍とは関係なく、ツンデレ王女とカイルとの仲は、なかなか思うように進展しない。
前世で読者の立場だった俺は、一進一退する二人の関係をもどかしく思ったり、たまに素直に振舞う王女のかわいさに、物語の中のカイルと一緒になって胸をキュンキュンさせていたものだった。
俺たちの一学年上には、魔法大国ヴァルトーシュのイケメン第二王子がお忍びで留学している。この人は物語上かなりのキーマンで、血筋でいうとカイルの従兄弟にあたるこの第二王子こそが、本当の恋のライバルとして、カイルと王女との間に立ちはだかることになるんだ。
俺? 俺は王女に洟も引っ掛けてもらえない。勝手にカイルをライバル視している痛い子の役柄だ。泣ける!
それに比べて第二王子は知的で優秀、銀髪碧眼で見目も麗しいしっとり系イケメンだ。田舎で平民として育った元気系イケメンのカイルとは本当に好敵手ってやつで、学園での様々なイベントで競い合いつつ、カイルの成長を促してくれる大切なキャラだ。
最終的にはカイルと第二王子とは無二の親友となる。そして、二人は協力し、圧政に苦しむヴァルトーシュ王国を諸悪の根源である国王と王太子の手から救い出す行動を起こし、それに成功するんだ。
カイルは王位につき、後世に賢王として名を残す偉大な為政者となる。無論、シャルロタ王国のツンデレ王女を嫁に迎え、子宝にも恵まれて幸せに暮らすことになるわけだ。それで物語エンド。
ちなみに、イケメン第二王子は反乱成功を目前に、お涙頂戴係として死んでしまうことになる。ヴァルトーシュ側からの暗殺者から襲われた時、カイルを庇って毒針を受けてしまい、そのまま帰らぬ人となってしまうんだ。
その亡き親友から受け継いだ熱い魂と、父と母の無念の想いを胸に、カイルは血の滲む努力をしながら困難に立ち向かい、反乱を成功に導くことになるわけだ。
あああ、思い出すだけで超感動する!!
どこにでも転がってそうな話といえばそうなんだけど、小学生の俺にとっては血沸き肉躍る素晴らしいストーリーだったんだ。
浮気者でクソ野郎だった親父のせいで、常に荒んだ家庭での貧乏生活を強いられていた俺にとって、どんな困難や苦労にも負けず挫けず、正面から立ち向かうカイルという人間は、憧れであり、また同志のようなものだった。
いつも励まされ、元気付けられていたんだ。
だから俺はカイルのことを心から尊敬していて、現世では悪役レオポルトとして生まれてしまったけど、俺はなにがなんでも、どんなことがあっても、いつだってカイルの味方でいたいと思っている。
そんな俺には、今ものすごく悩んでいることがある。
この先、俺はどう行動するのがベストなのか、ということについてだ。
本の通りの展開を望むなら、俺は王都の学園に入学するべきなんだろう。そして、王女様に一目惚れしてカイルに意地悪し、同級生からは嫌われ、最終的にフラれる上に社交界から追放、更に親からも勘当、みたいな流れになればいいのだと思う。
しかし、本当にそれで上手くいくのだろうか。
現在の俺は悪役をしていない。むしろカイルとは良い関係を築いていて、深い絆のある乳兄弟としてこの世界に存在している。
そんな俺が学園に行ったら、カイルとヴァルトーシュのイケメン第二王子との関係を邪魔してしまうのではないだろうか。
それはすごくマズい気がする。
邪魔になるくらいなら、俺は王都には行かない方が良いような気がしているんだ。
そりゃあ確かに、美少女の王女様には会ってみたいと思う。本の中の王女が現実世界ではどういう姿をしているのか、単純に興味があることは否めない。
それはヴァルトーシュの第二王子にも同じことが言えて、本の中で活躍していたキャラたちには、全員に会ってみたいという願望がある。
けれど、カイルの邪魔は絶対にしたくない。俺の中で、カイルの幸せがなにより一番に優先されるべきもので、それを邪魔するような行動は一切取るつもりはない。
だとすれば、やはり王都には行かず、この領都に留まるべきだろうか……。
我が侯爵家の跡取りは、今は王都で生活している長男である。おそらく、襲爵後も王都に留まり、政治の中枢を活躍の場にするつもりだろう。
俺は領主代行としてこの領地を発展させていくことにより、兄上や侯爵家のために尽くしていく。そういう道を選ぶべきではないだろうか、それが正しい選択なんじゃないかと最近は思っているんだ。
なにせ俺は精霊王の加護持ちなワケで。
俺のいるところは天候に恵まれ作物は良く育ち、病は流行ることなく皆が幸せに暮らせる土地になるとのこと。
確かに思い出してみれば、加護をもらった頃から、ウチの領地には魔獣がほとんど襲ってこなくなった。定期的に雨も降っていつも豊作だしね。いやはや、精霊王からの加護の効果は絶大だな!
なんてことを考えている俺の周りでは、かわいい緑色の人型妖精が一匹、元気に楽し気に飛び回っている。
見ているだけで笑顔になるほどめっちゃカワイイ。
肩にとまってる時に指を出すと、この妖精は嬉しそうに指に抱き着いてくる。すっごく小さな手。生きて動いていることが不思議なくらいに愛らしい。
その妖精がある方向を指差した。俺はその方向に歩き、普通なら滅多に見つからない珍しい薬草を手に入れて微笑んだ。
「ありがとうね、緑ちゃん!」
お礼を言うと、緑ちゃんこと緑色の妖精は、空中でくるりと一回転し、俺の肩に止まったかと思うと、ほっぺにチュッとキスしてくれた。
ほわー、頬がゆるむ。すごく幸せ。もう堪らなく可愛い!
今日、俺とカイルは妖精の泉がある森とは別の森に来ていた。そこでカイルは狩りをし、俺は薬草や果物を集めている。
俺たちはこうやって森で狩りをしたり、薬草や山菜、きのこ、果物などの植物を採ったりしては、それを売って得た金銭を孤児院に寄付する活動を定期的に行っていた。
俺はやっぱり運動神経があまり良くないので、狩りはどうしても苦手だ。だったらできることをしようと思い、薬草集めに精を出すことが多いんだけれど、逆にカイルは狩り専門で、森に入ればいつも大物を仕留めてくる。
なにをやっても、なにをやらせてもかっこいいし上手くやる。流石は主人公だと本当にそう思う。
ここ数年、俺に妖精の緑ちゃんがいるように、カイルには狼に似た姿の聖獣ロルフが付き従っていて、主の身を守りながら狩りの手伝いもしてくれている。
カイルと同じく、ロルフも狩りがとても上手い。だから狩り組はいつだって大猟で、ロルフが来てから、狩りで得られる獲物の数は二倍以上に増えている。
そのおかげで、近頃の我が領都では、獣から得られる肉や皮、骨や角などの食材や、道具作りの材料に困ることがほとんどなくなった。本当にありがたい。
以前、ロルフに質問したことがある。
ロルフに手伝ってもらって狩りをすることは、森の動物虐めをさせてしまうことになり、それでロルフの聖力が弱ってしまうことにはならないのだろうか、と。
ロルフがいなくなると困ってしまう。ロルフがいてくれれば、例えなにがあってもカイルは安全だと安心できる。
ロルフはすごく強いし、人間が知らないような強い魔法だって使うことができるという。だから、ロルフにはずっとカイルの傍にいてもらって、守ってあげて欲しいと思うんだ。力が弱って契約が切れたりしたら、本当に本気で困ってしまう。
だから気になって尋ねてみたら、狩りは問題ないとのことだった。
魔獣は勿論のこと、森の獣を狩ることは悪しきことではないらしい。どうしてかと聞くと、獣も増えすぎると生態系を崩すことになるし、数が減れば増やそうと努力することにより、生物としての生命力が強くなる。それは自然界にとって、とても良いことであるらしい。
遊戯としての狩りは褒められたものではないけれど、生きるために必要で行う狩りは、全く問題ないとのことだった。
それを聞いて、俺は心底ホッとした。ああ、良かった。
狩り組に対して俺はと言えば、さっきみたいに緑ちゃんが手伝ってくれるから、薬草を簡単に見つけることができて、すごく助かっている。
薬草学は家庭教師の先生から習いはしたけれど、有名なもの数種類について多少の知識を得た程度だ。その植物がどこに群生しているだとか、どの季節によく採れるだとか、そういった詳しいことまでは覚えていない。
勿論、薬草学の本にはたくさんのことが書かれてあった。覚えておけば為になることが、そりゃあもうたくさん!
しかし、残念ながら頭の良くない悪役設定の俺には、その本の知識をほんの少ししか頭に蓄えることができなかったんだ。なので、緑ちゃんの存在はものすごくありがたい。
「近くで薬草が生えてたら教えて欲しいんだけど、お願いできる?」
そう言うと、緑ちゃんはすぐに俺を薬草のところまで連れて行ってくれる。
時には季節外れの珍しい薬草が取れることもある。そういった薬草はかなり高値で取引されることが多い。それらを売って得たお金で、食料や薬や本を買って孤児院に持っていく。そうしたら、子供たちがものすごく喜んでくれるんだ。その明るい笑顔が見たくて、ついつい頑張ってしまう。
でも実を言うと、俺が孤児院に肩入れしているのは、単に子供たちが大好きだからって理由だけじゃない。
本のストーリーにおいて、将来この孤児院の子供たちが、カイルがヴァルトーシュでの反乱を成功させる上で、とても大切な役割を担っていると知っているからなんだ。
本の中で、悪役レオポルトとあまり仲が良くないカイルは、孤児院に入り浸って子供たちと仲良くなる。カイルは貴族教育で得た知識を彼らに遊び感覚で教えるんだけど、それは普通だったら平民が持ちえない高等教育の内容ばかりなんだ。
おかげで成人して孤児院を出た彼らは、近隣諸国の様々な商店に高待遇で職を得ることが可能になり、カイルに対する友情と感謝の気持ちを胸に抱いたまま、世界中に散らばっていくことになる。そしてカイルがヴァルトーシュで反乱を起こした時、彼らが様々な情報を集め、また必要な物資を素早く手に入れてくれるおかげもあって、反乱は無事に成功を来すんだ。
将来、カイルの大切な仲間になる孤児院の子供たちに、俺にできることならなんだってやってあげたいと思うのは当然のことだ。勿論、単純に子供たちのことが大好きだし、助けになりたいって気持ちもあるしね。
兄弟がいても会ったことがない現世の俺にとって、孤児たちは疑似的な兄弟のような存在でもあるんだ。だから、カイルのことがなくても、俺は彼らのことをとても大切に思ってる。
だからかな。孤児院のためについ頑張りすぎちゃって、それでカイルから怒られることがたまにある。孤児ばかりじゃなく、俺のことももっとかまってくれ、だとか言ってね。
ふふ、また面白い冗談言っちゃって。
顔や性格が良いだけでなく、冗談まで上手いなんて、流石はカイルだなと感心する。悪い所がひとつも見当たらないどころか、良い所はどんどん増えていくばかり。
カイルという人間は、神が作りたもうたこの世の奇跡みたいな存在だなぁ、とつくづく思ってしまう。ホント大好き!
そんな風に、俺がカイルのいい所を頭の中で数えながら、緑ちゃんと楽しく薬草を採っていると、ロルフを引き連れたカイルが森の奥から戻ってきた。
「お疲れ様、カイルにロルフ。首尾はどうだった?」
「上々だ。かなりの大物が取れたから解体に時間がかかった。戻ってくるのが遅くなってごめん。なにも問題はなかったか?」
「平気だったよ」
『精霊王の加護持ちのレオポルトに襲い掛かるような獣はそうそういまい。心配することもないだろう』
「分かってるけど、それでも心配なんだよ」
『過保護の甘やかしだな』
「それを言うならロルフだって同じだろう。さっきだって、ホラ…」
カイルからジト目で見られ、見た目狼のロルフがなんとも言えない顔をする。俺が首を傾げると、ロルフは少しそわそわするような態度を見せた後、インベントリとかいうロルフ専用の亜空間倉庫みたいなところから、果物のついた枝を出して俺に渡してくれた。
『前にそれが好きだと言っていたであろう。あの時は孤児たちに全部渡してしまっていたが。今日はレオポルトが自分で食べろ』
「僕のためにこれを? これってなかなか見つからないし、見つけても今の季節だと高所にしか残っていないから、手に入れるのが難しいのに……」
手に持ったその果物をまじまじと見つめた後、俺は満面の笑顔でロルフにお礼を言った。
「ありがとう、ロルフ。すごく嬉しいよ!! 今年はもう食べられないだろうって諦めてたんだ。うわー、嬉しいなぁ。本当にありがとう!」
薬草の入った籠と、今貰ったばかりの果物を足元に置くと、俺は両手を広げてロルフの首元に抱き着いた。
「ロルフ、大好き! 大切にじっくりと味わって食べるね」
ロルフの金色の美しい毛並、すごくツヤツヤのモフモフで抱きつくと最高に気持ちがいい。俺が頬をスリスリ擦りつけて毛並の感触を楽しんでいると、ロルフの尻尾が機嫌良さそうにぱたぱた動いているのが見えた。
体は大きいけれど、ロルフもすごくかわいいと思う。緑ちゃんと同列一位だね。
しばらくそうやってロルフにくっついて毛並を堪能していたら、目に表情のない変な笑顔のカイルから、ベリッと引き剥がされてしまった。
「もういいだろう。いい加減いつまでくっついてるんだ」
「ごめんね、カイル。怒っちゃった? 心配しなくても、ロルフはカイルのロルフだから! 僕が取ったりしないから安心して!」
カイルは俺がロルフと仲良くするのは気に入らないらしい。
まあ分からないでもない。こんなにかっこよくて有能なパートナーだもの。他人に奪われたくないのは当然だと思う。
余計な心配をカイルにさせないように、俺も気を使うべきだな。
しかし、それが分かっていても、モフモフが気持ち良くて幸せで、つい抱き着いてしまうことをやめられない。
それにロルフ自身、さっきみたいにお土産を持って帰ってくれたりして、俺にすごく優しいものだから、ついつい調子にのって甘えてしまうんだ。反省、反省。
でも、本当に心配しないで欲しい。ロルフが主と認めているのはカイルだけなんだから。とは言え、嫉妬するカイルも人間味があってとても素敵だと思うけどね。
そんな気持ちを込めて「ロルフが一番好きなのはカイルだよ」って言ってあげたら……なぜだろう。カイルからこれ以上ないくらい大きなため息をつかれてしまった。
んん? どうしたのかな。
「ともかく、あまり遅くなる前に町に戻って、獲物や薬草を換金してしまおう。今日中に孤児院に行くんだろう?」
「カイルが疲れていないならそうしたい」
「よし、それじゃあ急いで帰ろう」
俺たちは仲良く並んで町へと馬を走らせた。ロルフも俺たちの後ろを走って付いてきてくれている。
ちなみに、カイルの今日の獲物は、イノシシ二頭とシカが一頭らしい。そして、ロルフがクマ一頭。
なるほど、聞いていた通りかなりの大猟だ。
既にイノシシとシカの解体は済ませたらしいけれど、クマは大物すぎるのでそのまま毛皮製品を取り扱っている商店へ持ち込むそうだ。
獲物はすべてロルフのインベントリに入れてるらしい。
便利だな、インベントリ。俺も欲しい。
ロルフに聞いたところによると、ほぼ無限に物を収納できるロルフ専用の亜空間であるらしい。遠くに出かける時や荷物が多い時など、とても便利なアイテムなんだそうだ。内では時間が止まっているから、生物も腐らないんだって。すごいなぁ。
どうやらそのインベントリというものを持つためには、大量の魔力が必要ならしく、カイルならその内持てるようになるかもしれないとロルフは言っていた。
あああ、やっぱりカイルは凄いんだね!
魔法大国の王族の血筋は伊達じゃない。
とにかく、ロルフがいてくれると、荷物の持ち運びがとても便利で助かっている。今日みたいに狩りで大猟の時などは特にそうだ。
これもすべてカイルが聖獣ロルフと契約してくれたおかげだよ。
カイルにはどれだけ感謝してもしきれないな。
また心の中で平伏しておこう。
しばらくすると、町の防御壁まであと少しのところまでやってきた。ここでロルフには普通の犬の大きさになってもらう。獲物もインベントリから出してもらい、隠しておいた荷車に積んだ。
ここからは自分たちで町まで荷を運ぶことになる。そうしないと、ロルフが特別な存在だということがバレてしまうからだ。
精霊王と会ったことは、他の人間には内緒にしてある。知られたら国家レベルでの大騒ぎになるからだ。
聖獣との契約者も精霊王の加護持ちも、国に捕らえられ、軟禁に近い生活をさせられる可能性があるらしい。事実、国の権力者に捕らえられ、幽閉されたまま生涯を終えた契約者や加護持ちも過去にはいたのだそうだ。
そんな話をロルフから聞かされた俺たちは、考えた末、精霊王に会った話は誰にも言わないことに決めた。だから、領主館や町の人たちにでさえも、ロルフのことは聖獣とは言わずに猟犬ということにしてあるのだけれど、皆疑うことなくすぐに信じてくれた。ホッとした。
領都入口の門の前には、いつも門番が立っている。
今日の門番役は顔見知りの自衛団の一人で、二十代半ばとまだ若く、気さくで楽しいお兄さんのダンだった。絶賛彼女募集中らしい。
「坊ちゃん、お帰りなさい。どうです、大猟でしたか?」
「ただいま戻りました! ほら見てよ、カイルがたくさん狩ってくれたよ。今日はね、シカとイノシシを狩ってくれたんだ。イノシシは二頭だよ」
「おっ、やるなぁ、カイル。また腕を上げたか」
「まあね。あとはロルフがクマと戦って勝った」
クマと聞いてダンが目を大きく見開いた。
「本当かよ、すげーな!」
「クマは……そうだな、革製品店に卸しにいくつもりだったけど、兵舎に差し入れするよ。肉は皆で食べてくれ。渡していいよな、レオ」
「勿論だよ! そもそも僕に了解を取る必要はないよ。ロルフが狩った獲物だし、そのロルフの主人はカイルなんだから。ただ、毛皮は革製品店で換金してもらってくれる? 孤児院に寄付したいから」
「了解了解! ひゃほーい、クマ肉大好き。皆喜ぶぞー! にしても、カイルもすげーけど、ロルフもすげーなぁ。普通は一対一の対決で犬はクマにゃあ勝てねーだろ? いやー、いい犬だな」
そう言ってロルフの頭をダンが撫でようとしたけど、ロルフはふいっと避けてしまった。
聖獣は誇り高い。誰にでも触らせるわけではない。それを考えると、ロルフに触らせてもらえる俺は、とてもありがたいと思う。
ダンはロルフの態度を気にせずハハハと笑い、主人にだけ忠実なのも良い犬の証だな、と朗らかに言った。
ダンにクマを渡して俺たちが門から町に入ると、すれ違う人たちが皆声を掛けてくれた。挨拶してくれたり、猟の成果を聞いてきたり、奥さんや子供の話をしてくれたり、近所で猫の子が生まれた話をしてくれたりと、領主の息子とその乳兄弟に対し、皆すごくフレンドリーで温かい。
本当に我が領民たちの心の健全さときたら、なんて素晴らしいのだろうとシミジミ思う。
俺が前世を思い出す前、中身が悪役レオポルトだった頃は、俺は領民たちからものすごく嫌われていた。
そりゃそうだろう。我儘で自分勝手で暴力的な貴族のお坊ちゃんなんて嫌われて当然だ。
そんな俺も、近頃になってやっと領民たちと打ち解けてきた。町で会うと、坊ちゃんと呼びながらも大人は我が子の様に、子供は兄弟みたいに接してくれる。本当にありがたい。
孤児院の運営にしても、領主からの寄付金で大半が賄われているけれど、それに負けないくらい町の人たちからのカンパも多く、とても助かっている。
思いやりや助け合いの精神が、当たり前のように皆の心に宿ってるんだ。
ウチの領民は本当に最高だと思う。
こんな素晴らしい人たちの中で育ったから、悪役レオポルトからどんなに虐められても、カイルは真っ直ぐ健やかに成長できたんだろうな。
うー、そんなことを考えていると、なんだか感動して泣けてきちゃったな。
気付かれないように俺がコソッと涙を拭いていると、カイルが優しい目で俺を見つめてくれていた。
「領民が皆温かい心を持っているのは、この領地がとても豊かだからだと思う。自分が恵まれているから、他者を思いやることもできる。じゃあ、どうしてこの領地が豊かでいられるかと言うと、それはレオが精霊王の加護を持っているからに他ならない。つまり、全部レオのおかげってことだ。誰よりもすごいのはレオなんだ。俺はそう思う」
「そ、そんなことないと思うけど……でも、そんな風に言ってもらえて嬉しいよ。カイル、とても優しい言葉をありがとう」
カイルに褒められて、俺は照れくさくて赤くなった。
俺は本当なら悪役だった。嫌われ者のはずだった。それなのに、あんなに優しい言葉を言ってもらえて、お世辞なのは分かってるけど、もう死んでもいいと思うくらい幸せで胸がいっぱいになる。
その後、俺たちは狩りの獲物の一部を換金し、買い物を済ませて孤児院へと向かった。院の世話係をしてくれている教会のシスターに、肉と野菜に本、そして残ったお金を手渡した。
「レオポルト様、カイル、いつも本当にありがとうございます」
老年の域に達した優しい笑顔のシスターに頭を下げられ、俺もカイルも恐縮してしまう。
「僕こそシスターにお礼を申し上げなければ。子供たちは未来の我が領を支えてくれる宝物のような存在です。そんな大切な子供たちの世話をして下さり、いつも本当に感謝しています」
「俺は狩りは得意だから、肉で良ければまた持ってくるよ」
「ふふふ。あらあら、今日もお肉がたくさんね。育ち盛りがたくさんいますから、とても助かります。子供たちとお夕食、一緒に食べていきますでしょう?」
「お邪魔じゃなければ、ぜひそうさせてください」
「ご馳走になります」
「子供たちも喜びますわ」
それから俺たちは子供たちと走り回って遊び、一緒に本を読んで勉強し、楽しみながら料理の手伝いをした。
皆と共に食べる食事はとても美味しかった。貧しいけれど温かく、笑顔が溢れるこの場所は、まるで楽園のようだと俺には思えた。
かっこいいカイルは女の子にモテていて、いつもキャーキャー言われて取り囲まれている。あの女の子たちの何人かにとって、カイルは初恋の人だったりするんだろうな。俺の知らないところで誰かがカイルに恋している。しかもそれはきっと初恋で、彼女たちにとって一生の大切な思い出になったりするわけだ。
そう思うと、なんだか胸がキューンとしてしまった。ふふ、胸の奥がむずがゆーい。
女の子に人気のカイルとは違い、俺はどちらかというと男の子に人気があるっぽい。
抱きつかれたり、一緒に走り回って地面を転がりまくったり、小柄な俺より体のおっきな子からは特に人気で揉みくちゃにされてしまう。
青筋立てたカイルがその子たちを蹴散らしているけれど……そんなに気にしなくてもいいのに。俺も男だ。ちょっとくらい乱暴な遊びをしたって平気だよ。
え、無防備すぎ? 俺以外に触らせるな? ん~?
なんだか良く分からないけど、とにかく心配してくれてるんだよね、ありがとうカイル! 相変わらず優しいね!!
散々遊んでから孤児院を出た後、領主館へと帰る道すがら、俺は真剣に考えていた。やはり俺がいるべき場所はここ。王都ではなく、我が侯爵家領地なのではないだろうか、と。
前世の高校生までの知識はあるし、現世でも家庭教師について勉強はしっかりとやってきた。そりゃあカイルに比べたら成績は良くないけど、それでも、今更王都に行って学校に通う必要があるとは思えない。
カイルと離れるのはすごく寂しい。
でも、どこにいても、どんなに離れていても、俺は誰よりもカイルの幸せを願っているし、大切に想ってる。もしも必要とされたなら、どこへだって、どこにいたってすぐに駆けつけるつもりだ。
前世で読んだ本の中での俺の役どころは、カイルの子供時代を彩るための悪役だ。だから、カイルの子供時代の終わりを象徴する王都学園の卒業式の日、俺はカイルにやらかしてきた数々の無礼な行いにより、手酷く断罪されることになる。
それを考えると……やはり王都に行くのは少し怖いとも思う。
それがカイルのためになるのなら、断罪されることは嫌じゃないし我慢もできる。だけど……他の誰でもなくカイルから断罪されるのは、やっぱりとても悲しいと思ってしまうんだ。
気になっていることはもう一つ。学園入学後、カイルが新しい人間関係を築いていく過程の中で、悪役ではない俺の存在が、カイルとカイルの周囲に変な影響を与えずにいられるのかどうか。
とにかく、カイルの邪魔をしてしまうことが、なによりも怖くて仕方がない。
と同時に、これまで毎日一緒に過ごしていたカイルが、俺から離れて別の人を親友とし、別の人を愛する姿を見なければならない日々は、俺にとってとても寂しくて辛いものだと想像できる。
寂しさのあまりカイルに縋ってしまい、彼の幸せを邪魔してしまうことが、足を引っ張ってしまうことが、他のなによりも怖くてたまらなかった。
それを考えても、俺はカイルと一緒に王都へ行くべきではないと分かる。
うん、決めた。
やはり学園へは行かず、この領都に残ろう。
それが最善の選択だと信じ、俺はついに決断したのだった。
一緒にいられる時間はもう残り少ない。
だからこそ、残りの時間を大切にしようとそう思った。
いっぱい一緒に笑おう。
いっぱい一緒に楽しいことをしよう。
困ったり怒ったり、たまには悲しんだりも一緒にしよう。
それらの思い出を胸に、俺はここで頑張るから。
カイルがこの地を離れても、俺はここがもっと栄えるように、ずっと努力するからね。
いつか疲れたカイルがちょっと休憩したくなった時、安心して休める場所を俺がここに作っておくから。
だからカイル。
俺の大好きな心から尊敬する憧れのカイル。
ずっと一緒にいるという約束を破る俺を、どうか許して下さい。
大好きな大好きな大好きなカイル。
これまでどんな時もずっと一緒にいたけれど、もうすぐお別れです。
どうか、どうか幸せになって下さい。
カイルが誰よりも幸せになってくれること。
それこそが、俺にとっての最良の幸せなのだから…………。
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