16 / 32
16
しおりを挟む
気が付くと、ベッドの上にいた。
「アリア…っ!」
傍らで私の手を握っていた男が、潤んだ瞳で覗き込み、私の頬にそっと触れた。
「落ちた時の傷は、すべて治していただいた。何か思い出したか?」
首を振ってみせる。何もわからない私を早くここから追い出して。
「そうか。あの時は、俺も混乱して試すような酷いことを言って悪かった。アリア…君の名前はアリア・エストリア、おれの妻だ。俺の大事な大事な妻だ。俺はイーサン・エストリア。アリア、いつも呼んでいたみたいに、イーサン様、って言って」
…いつも呼んでいたみたいに?
「し、知らない人ですから、呼べません、私は、」
男は立ち上がり、ベッドに横たわる私をそのまま抱き上げてまた傍らの椅子に腰掛けた。私の頭を胸に抱き込むようにして、髪の毛を撫で始める。
「アリア。君はね、ウェスト侯爵家の娘だった。今はエストリア公爵家の嫡男である俺の妻。記憶がなくても君は貴族なんだ。貴族は政略結婚で一度も顔を合わせることなく夫婦になることもある。君と俺はもう結婚しているけれど、記憶がない君は、今日初めて俺と顔を合わせて夫婦になるのだと思えばいい」
「アリア…っ!」
傍らで私の手を握っていた男が、潤んだ瞳で覗き込み、私の頬にそっと触れた。
「落ちた時の傷は、すべて治していただいた。何か思い出したか?」
首を振ってみせる。何もわからない私を早くここから追い出して。
「そうか。あの時は、俺も混乱して試すような酷いことを言って悪かった。アリア…君の名前はアリア・エストリア、おれの妻だ。俺の大事な大事な妻だ。俺はイーサン・エストリア。アリア、いつも呼んでいたみたいに、イーサン様、って言って」
…いつも呼んでいたみたいに?
「し、知らない人ですから、呼べません、私は、」
男は立ち上がり、ベッドに横たわる私をそのまま抱き上げてまた傍らの椅子に腰掛けた。私の頭を胸に抱き込むようにして、髪の毛を撫で始める。
「アリア。君はね、ウェスト侯爵家の娘だった。今はエストリア公爵家の嫡男である俺の妻。記憶がなくても君は貴族なんだ。貴族は政略結婚で一度も顔を合わせることなく夫婦になることもある。君と俺はもう結婚しているけれど、記憶がない君は、今日初めて俺と顔を合わせて夫婦になるのだと思えばいい」
128
あなたにおすすめの小説
婚約破棄される令嬢は最後に情けを求め
かべうち右近
恋愛
「婚約を解消しよう」
いつも通りのお茶会で、婚約者のディルク・マイスナーに婚約破棄を申し出られたユーディット。
彼に嫌われていることがわかっていたから、仕方ないと受け入れながらも、ユーディットは最後のお願いをディルクにする。
「私を、抱いてください」
だめでもともとのその申し出を、何とディルクは受け入れてくれて……。
婚約破棄から始まるハピエンの短編です。
この小説はムーンライトノベルズ、アルファポリス同時投稿です。
断罪された魅了の悪女は過去に戻ってやり直します!~嫌われてたはずの王太子様に迫られてます!?~
かべうち右近
恋愛
魅了の力を悪用して王太子の婚約者の座にまで上り詰めたものの、断罪され処刑された悪女イレーニア。十歳に巻き戻ったので今度は治癒の聖女として魅了の瞳を封印して奮闘し、前世で処刑に追い込んだ王太子ジルドとは距離を取ろうとする。なのに、イレーニアの聖女引退と同時にジルドが求婚してきて…!?
※この小説は他のサイトにも掲載しています。
※R回には「※」をつけています。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
離縁希望の側室と王の寵愛
イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。
国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。
いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──?
※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。
シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み
【完結】 愛されない私と隠れ家の妖精
紬あおい
恋愛
初恋は心に秘めたまま叶わず、結婚した人まで妹を愛していた。
誰にも愛されないと悟った私の心の拠りどころは、公爵邸の敷地の片隅にある小さな隠れ家だった。
普段は次期公爵の妻として、隠れ家で過ごす時は一人の人間として。
心のバランスを保つ為に必要だった。
唯一の友達だった妖精が、全てを明かした時、未来が開ける。
「離婚しよう」と軽く言われ了承した。わたくしはいいけど、アナタ、どうなると思っていたの?
あとさん♪
恋愛
突然、王都からお戻りになったダンナ様が、午後のお茶を楽しんでいたわたくしの目の前に座って、こう申しましたのよ、『離婚しよう』と。
閣下。こういう理由でわたくしの結婚生活は終わりましたの。
そう、ぶちまけた。
もしかしたら別れた男のあれこれを話すなんて、サイテーな女の所業かもしれない。
でも、もう良妻になる気は無い。どうでもいいとばかりに投げやりになっていた。
そんなヤサぐれモードだったわたくしの話をじっと聞いて下さった侯爵閣下。
わたくし、あなたの後添いになってもいいのでしょうか?
※前・中・後編。番外編は緩やかなR18(4話)。(本編より長い番外編って……orz)
※なんちゃって異世界。
※「恋愛」と「ざまぁ」の相性が、実は悪いという話をきいて挑戦してみた。ざまぁは後編に。
※この話は小説家になろうにも掲載しております。
何故、私は愛人と住まわねばならないのでしょうか【おまけ】
Lynx🐈⬛
恋愛
オーヴェンス公爵であるアーロンと結婚した、ロヴァニエ子爵のレイラ。
結婚して3ヶ月後。首都とロヴァニエ子爵領を行き来しながら、甘い新婚生活を2人は送っていたが、レイラが首都に居た日、ロヴァニエ子爵領でまた海賊の被害が出た、と聞き、急ぎアーロンと領地へ帰る。
今迄の海賊は船を襲われるだけで済んでいたが、今回は不法上陸され、港が荒らされる被害。
若い女は連れて行かれ、労働力として子供迄攫われるという暴挙に出られ、軍艦を撒かれて上陸した形跡もある事から、連携されて不法入国されたとされる。
レイラとアーロンはこの事をどう解決していくのか−−−−。
*Hシーンには♡付
【10話完結】 忘れ薬 〜忘れた筈のあの人は全身全霊をかけて私を取り戻しにきた〜
紬あおい
恋愛
愛する人のことを忘れられる薬。
絶望の中、それを口にしたセナ。
セナが目が覚めた時、愛する皇太子テオベルトのことだけを忘れていた。
記憶は失っても、心はあなたを忘れない、離したくない。
そして、あなたも私を求めていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる