93 / 169
王総御前試合編
21
しおりを挟む「さっき、俺たちも機械人形とやらに襲われた。……イベントは中止だな」
それにしても。
「どうして俺たちだけ無事なんだろう」
「さあ……やっぱりオドの加護ワヌかね」
それだと俺が平気なのはおかしくないか。もしくはこの肩に埋まってるカードの影響があるのか。
「エイトさん……ミジル……」
ふらつくハイロを、ミジルが受け止める。俺が代わりにローグを支える役になる。
「だいじょうぶ、ハイロ?」
ミジルが不安そうにして、姉のおでこを触る。
「……ミジルとくっついたら、すこし楽になりました……不思議ですね……」
そういうハイロの顔は、本当にみるみるうちに精気を取り戻していった。
「エイトさん、なにか精神に悪影響をあたえる魔法が、発動しているんだと思います。……むかしのにがい思い出を、おもいだしてしまいました。私がふがいないばかりに、ミジルに恥をかかせてしまったときの……」
お前はふがいなくなんかない。大したやつだよ。俺は心のなかで彼女を讃える。
「エイト……」
焦燥(しょうそう)の色を浮かべるフォッシャ。考えていることは同じか。
「呪いのカード、かもな」
「で、でもフォッシャは別に……!」
あわてるフォッシャを、俺は落ち着かせる。
「お前は関係ないよ。ローグがくれたカードのおかげで力は制御できるようになったんだから。呪いのカードなら、勝手に暴走するってこともありえるだろ」
そう、ほかでもなく俺は呪いのカードのせいでこの世界に飛ばされたからな。仮にフォッシャの力が洩れ出ているんだとしたら、俺たちの手持ちのカードが実体化してなきゃおかしい。でもそうはなっていない。
十中八九原因は呪いのカードだと考えるべきだ。
「なに……? なんの話!?」
ミジルはやや取り乱している様子だった。無理もない、こんな状況では。ゼルクフギアの経験がなければ俺も困惑していただろう。
「災厄カードです。私たちでなんとかしましょう。ミジル、ローグさんたちをお願い」
ハイロが冷静に諭(さと)す。
ローグは俺の元を離れ、「私は大丈夫……いきましょう」といつもどおり強気に振舞う。しかし頬には汗がみえている。
いずれにせよ参加者たちのことを考えれば、急がなくてはならない。
「だまっていたのですが、この館にはお化けがでるというウワサがあるんです。関係あるかわかりませんが、気を引き締めておきましょう」
「お、お、おばけ!?」
ハイロに言葉に、フォッシャが悲鳴のような声をだす。俺も嫌な汗が自分の背中に流れたのがわかった。
だが参加者の人たちが苦しんでいるのをほうっておくわけにはいかない。お化けでもなんでも、いざとなればフォッシャの力がある。ここは進もう。
「フォッシャ、嫌な感じがするって言ってたよな。それでカードの場所がわかったりしないか」
「やってみるワヌ。集中して……」
フォッシャのあとについて進んでいく。時々ふらついているローグを、ミジルとハイロが助けてやっていた。頼みの綱の存在が今は不調だ。なにが起きても対応できるように俺は辺りに注意を払う。
「そういえば、隠し通路みたいのを見つけたな」
「そっちから危険な感じがするワヌ」
俺の視線の先を追って、フォッシャが言う。
隠し通路を通り、今度は地下の方へと階段をおりていく。暗闇がつづいていたが、やがて元々ここにかけられている魔法が起動したのか急に灯かりが点いた。
最近人が通った形跡がなく、何年も放置されていたのではないかと察する。建物のつくりは非常に精度が高く、ボロついているということはない。
地下の広間に出ると、奥にカードがあるのがわかった。怪しげな緑色の光に包まれて宙に浮いている。
間違いなく呪いのカードだと確信が持てた。この部屋にきたときから気分が悪い。嫌な思い出が浮かんだりカードの中に出てくるような怪物の幻覚が見えたり、吐き気とめまいまでする。
ハイロも同じなのか、小さな悲鳴をあげてローグに抱きついていた。やはりモンスターの幻覚が見えているのか、辺りを何度も見回したり、幻影を消そうと強くまばたきをしている。
一方フォッシャとミジルはあいかわらずなんともなさそうだった。とにかく早いところあれを壊さないと。
呪いのカードに向かって進もうとした時、どこからともなく、笛の音色がきこえてきた。
オカリナのようなものを持って広間にあらわれたのは、前に見かけたあの少女だった。
「あれは……あれ?」
ハイロが声をだしたとき、俺も気づいた。さっきまで不調だった気分が、ずいぶんよくなっている。体もなんだか軽い。あの音色の力なのだろうか。
「な、なんか怪しい女の子があらわれたワヌ……まさか……お、お化け!?」
口を開けてガタガタと震えるフォッシャ。そういえばこいつは資料室でこの子と会ってなかったな。
少女はオカリナをしまって、冷たい目でこちらを一瞥すると、
「精神に作動して恐怖心をあおる災厄カード【催眠ポルターガイスト】。過去につらい思い出がある者ほど影響されやすい……という。この館の侵入者を排除するために仕掛けられた……といったところか」
やけにカードのことに詳しいな。さっきすれ違ったときにも違和感をおぼえたが、ここにいるということは只者(ただもの)じゃない。
呪いのカードがある方になにか動きがあったのを、視界の端にとらえた。カードの横で地面に崩れていた機械人形がぎこちなく立ちあがり、呪いのカードを手にとって自分の胸の中に収納した。かなり古いのか、ところどころ塗装や部品の痛んだ子供くらいの大きさの機械人形だった。その姿には独特の恐怖を与えるものがある。
『侵入者を感知しましタ。セキュリティ起動。解除する場合は、ヴァーサスに勝利してくださイ……イイイ』
古ぼけた機械音声で人形はそう告げた。
「呪いを解除するには、カードゲームで勝てってことか……?」
俺がつぶやくとフォッシャが悠々(ゆうゆう)と前にでてきて、
「めんどっちいねえ。まどろっこっしいからフォッシャの力でぶっとばすワヌ」
ぶ、ぶっそうなこと言ってる!?
フォッシャは置いておいて、俺はほかのみんなの状況を確認する。ローグはまだ本調子ではないようだし、ミジルは元気そうではあるがカードの経験はなさそうだ。となると、ハイロか俺しかいないか。
「どっちが試合するかだけど……」
俺はハイロに目配せする。
「では、ここは公平にジャンケンで決めましょうか」
「コインでもいいんだぞ。先攻をとることに命をかけてきた俺に勝てるかな?」
「私だって……負けませんよ」
俺たちが冗談めかして言っていると、フォッシャが割り込んできて、
「ここはフォッシャの出番のようワヌね……」
だからお前はちがうだろ!?
「お前が下手したらこの館ごとふっとぶわ」
「えーこんなにやる気あるのに」
ブーたれるフォッシャに、小声で「ミジルとあの子の前で能力をみせないほうがいいだろ」と耳打ちする。フォッシャは「そっかそっか」と笑顔で納得してくれた。
さきほどの少女がまた詩をそらんじながら、カードのほうへとゆっくり進んでいく。
「ヨロズの精霊と魔物が入り乱れに争う
果てを統べるべくあらわる力の兆し
我今こそ詩片の英雄となりて天を助けん」
「おい」と俺が呼び止めたが、彼女は振り返らずに「5分もかからず終わらせる」と堂々言ってみせた。
「……ずいぶん落ち着いてるわねー」
その様子を見て感嘆するミジルに同感だ。しかしフォッシャは慌てて、
「ちょっ、ちょっ! なんかあの子変なこと言いながらカードに向かってるワヌよ!?」
「……自信があるのかな」
とりあえず任せてみるか。彼女が何者なのか、知りたいって気持ちもあるしな。
やがてゲームが始まった。少女と機械人形をはさんで、カードが人間の半分サイズのホログラムとして広間の中央にあらわれる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
生贄の少女と異世界ぐらしwith 持ち物一つ
青樹春夜
ファンタジー
俺の部屋にあるもので異世界生活?高校生の俺の部屋にはマンガ・ゲーム・趣味の物プラス学用品・服・ベッド…。生贄の金髪碧眼少女と一緒に村を立て直すとこから始まる救世主生活!だけど特にスキルがついている気がしない⁈あっ…転生じゃないから?
1話1話は短いです。ぜひどうぞ!
このお話の中には生活用品で魔物と戦うシーンが含まれますが、その行為を推奨するものではありません。良い子も悪い子も真似しないようお願い致します。
主人公ヒロキ……17才。
現実世界でつまづき、ある理由によって異世界に呼ばれたヒロキは、その世界で優しさと強さを手に入れる——。
※数字の表記について——一から九までを漢字表記。それ以上は見やすくアラビア数字で表記しています。
※他サイトでも公開中。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる