神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

文字の大きさ
4 / 70
第1章 世界の終焉

第4話 力の胎動

しおりを挟む
◆白い部屋

 四方600メートルほどの広さを持つ、無機質な白い部屋。
 室温は一定に保たれ、雑音すら存在しない。

 その中心に、一人の男が立っていた。

 坊主頭に、赤い3本のライン。
 右の眉にも同じく3本のラインが刻まれている。

 鋭い目つき、筋肉質な体格。
 黒いシャツにカーゴパンツ、そしてアーミーブーツ。

 無表情のまま、彼は前方のマネキンへ向けて手を突き出した。

“プロミネンス”

 彼の心臓を起点に、フォースが血流を通じて全身へと巡る。
 薄らと赤い光の粒子が彼の体を包み、熱を帯びていく。

 「――燃えろ。」

 瞬間、両手に集められたフォースが灼熱の業火へと変わり、前方へと放たれる。

 ゴォォォォォォッ!!!

 彼の能力、「プロミネンス」が炸裂した。
 瞬時に部屋の300メートル先までが地獄の炎に包まれる。



 直後、男は両手を左右へと向け、火球を2つ同時に発射。

 ズドン!!

 直径1メートルの火球は正確に2体のマネキンへ直撃し、即座に消し炭と化す。

 最後に、彼は指をピストルの形にし、背後へ向ける。
 その人差し指の先から、高濃度の光の粒子が発射された。

 ドォォォン!!!

 最後のマネキンの周囲、半径100メートルが爆炎に包まれる。

 「……ふぅ。」

 赤いラインの男は軽く息を吐き、脱力する。

◆フォースの数値

 「ただいまの記録、最大FTP14,500、最大FDP1,200。」

 部屋の中に機械音声が響く。

 男は満足げに頷く。

 FTP(フォース・トータル・ポイント):体内に蓄積されたフォースの総量。
 多ければ多いほど、長時間能力を使用できる。

 FDP(フォース・ディスチャージ・ポイント):一度に出力可能なフォース量。
 高ければ高いほど、瞬間的な破壊力が増す。

 一般的な人間の最大FTPは2,000未満。
 FDPも300を超える者は少ない。

 それに比べ、彼の数値は圧倒的だった。

◆軍部の動き

 白い部屋を出ると、そこは研究ラボのような施設だった。
 3名の研究者と、1人の軍服姿の男が待っていた。

 増田晋三――軍部の総司令官。

 3本ラインの男は、軍服の男を見て、隠そうともせずに嫌な顔をした。

 「ご苦労。」

 増田は短くそう告げると、手に持った書類に目を落とす。
 新たな指令が下ったのだ。

 彼らが所属する部隊は、100名の小規模部隊。
 しかし、その特異性は、**「全員がフォースを使える能力者」**で構成されていることだった。



 設立以来、訓練は続けられていたが、実戦投入は一度もない。

 だが、今日――ついに、その時が来た。

◆任務の内容

 「やっと出番ですかい?」

 「任務内容は指令書の通りだ。直ちに行動を開始しろ。」

 「りょ~かいっす!」

 指令書にはこう記されていた。

 「東京周辺に未確認生物が出現。研究所・発電所・軍事施設・人間を攻撃。直ちに駆除せよ。」

 しかし、増田晋三は知っていた。

 ――これは、単なる「未確認生物」ではない。

 **「高濃度のフォースを持つ未知の存在」**が、すでに各研究所や軍事施設を襲撃し、人間を殺戮している。

 確認されているだけで、12体の巨大な生物が存在。
 中には、500,000 FTPを記録したものもいるという。

 通常の火器では効果がない。

 だからこそ、フォースを持つ戦士たちが投入されることになったのだ。

 だが、増田晋三は、自責の念に駆られていた。

 事実を隠し、部下を死地へ送ることになると知りながら――。

 彼は覚悟を決めた。

 「自分も、死地へ向かう」

◆穏やかな昼休み

 一方、その頃の神谷練は――。

 耳に聞き慣れたオルゴールの音が響く。

 昼休憩の合図だ。

 社内は賑わいを取り戻し、ランチの店選びの話題でもちきりになっていた。

 レンは、いつも独りで昼を食べる。

 食事に時間をかけるのが嫌だからだ。
 誰かと一緒に行けば、あっという間に1時間が過ぎる。

 だからいつもは、昼になった瞬間に席を立ち、誰にも声をかけられる前に店へ向かう。

 ――しかし、今日は違った。

 「レン君!たまにはお昼一緒に行かない?この前、魚料理の美味しいお店を見つけたんだけど。」

 「行きます!」

 ――即答していた。

◆予想外の罠

 珍しく、木下恭子に誘われた。

 この前のハイキングの時から、少し距離が近くなったような気がしていた。
 ……いや、多分気のせいだ。

 それでも、彼女に満面の笑みで誘われたら、断るという選択肢はなかった。

 しかし――。

 「じゃあ行こっか!さおりんも行こうね~!」

 「私、お魚大好き~楽しみ~!」

 ……まるで天国から地獄。

 どうあがいても逃げられず、レンは準備を終えた二人の後について行くしかなかった。

◆食事の終わりに

 店を出ると、時計は12時50分を指していた。

 レンは、何故か支払いを押し付けられていた。

 「それでは、そろそろ行きましょうか?」

 「そうね!ごちそうさま~!」

 「……え!? えぇ……」

 無慈悲な現実に打ちひしがれながら、レンは財布を開いた。

 時計は12時56分を指していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...