前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee

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ダイチの本心

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「あー……集中しすぎて、ちょっと疲れちゃったわ。今日はこれでおしまい。あ、そうだ、佐藤ちゃんに今度遊びに来てって言っといてね」 
「わかりました。ありがとうございます。なんだか少しすっきりしました」 
「そう? じゃあよかったわ」 

 結局のところ、本人と話し合わないことには何も解決しないってことだよね。 

 わかりきってたことだけど、こうして相談したことで、考えも整理されたし、覚悟もできた。 

 それにロッシュのことも。 

「サイさんに背中を押してもらえた気分です」 
「その彼氏が、もしもよ? 『おっさんには欲情しない』なんてことをほざいたら、ここに連れてらっしゃい。私が締めてやるわ」 

 サイさんが机の脇からタバコの箱を取り出し、1本口に咥えた。カチッとライターで火をつけた後、フーッと紫の煙を吐き出しながら片腕を上げて力こぶを作り、ニッと笑った。 

 そのムキムキな腕で締め上げられたら、さすがのダイチでも悲鳴をあげるだろう。 

 でも、サイさんにそう言ってもらえると、なんだか心強い。 

 サイさんにお礼を告げ、俺は店を後にした。 

 帰り道、電車の中で窓の外を流れる景色をぼんやり眺めながら、サイさんに占ってもらったことを反芻する。 

 サイさんは、ダイチは俺のことを性的な意味で好きだと言った。でもそれは占いでは、ということであり、本当のところは本人にしか分からない。 

 もう少し俺のほうから積極的にアプローチして、ダイチの反応を見ようかなと思う。 

 電車が最寄り駅に着き、俺は慣れた道を歩いて、マンションへと帰る。オートロックを解錠し、ドアを開けると、ロッシュが俺の足元に突進してきた。 

 真っ白でフサフサの尻尾をちぎれんばかりに振り、キャンキャンと鳴きながら俺の足元をくるくると回っては足にタッチする。そんなふうにロッシュは、俺の帰りを大げさなほど喜んで迎えてくれる。 

「ロッシュ! ただいま! 寂しかったねー」 

 抱き上げると、まるで俺に笑いかけるかのように、ロッシュはハッハと口を開けて舌を出した。 

 黒木がロッシュ、もしくはダイチに影響しているかどうかについて、サイさんは無関係だと占った。 

(サイさんの言ったとおり、ドッグスクールに通わせてみようか) 

 こんな小さなロッシュに、しつけなんかと思ったりもする。でもトレーニングで改善される程度のものなら、ロッシュが黒木に影響されたわけではないという証明にもなる。 

 ロッシュにごはんをあげた後、俺はサイさんから手渡されたドッグトレーニングスクールのフライヤーに記載されたURLにアクセスした。 

  

「――で、今日ロッシュはドッグスクールに預けているんですか」 
「そう。犬の幼稚園ってやつ。俺初めてでさ、預けるのなんかかわいそうかと思ってたんだけど、やっぱりダイチを噛んじゃったワケだし、一度は訓練させないとだめだなって。今は初級クラスで、慣れたらもっと高度な訓練ができるクラスに変更しようと思ってる」 
「――俺のせい、ですか?」 

 ダイチが、ロッシュのいないソファに座って、申し訳無さそうな顔で俺を見ている。 

 もちろんサイさんに会った話は、ダイチには言っていない。 
 ロッシュは俺の思いつきで、ドッグスクールに通っていることになっている。まああながち嘘じゃない。 

「ダイチのせいじゃないよ。ダイチを噛んだのは、ロッシュを甘やかしていた俺のせいだから」 
「でも……」 

 いつもロッシュがいるはずの俺の隣を、ダイチが見た。 

 俺が椅子に座ると、いつも膝に飛び乗ってくるはずのロッシュがいないのは、やっぱりちょっと寂しい。でも夕方にはスクールから帰ってくるんだから。 

「ロッシュはスクールで、トレーナーの女の人にすっごく懐いててさ。その人にすごく可愛がって貰っているから大丈夫だよ。……それで今日はさ、ダイチに聞きたいことがあって」 
「俺に聞きたいことってなんですか」 

 不安な心をダイチに悟られないよう、なるべくさりげなく話を振ると、ダイチが人懐っこい笑顔を見せた。 

 俺はダイチの座るソファの横に尻をずらし座り直すと、ダイチの手を両手で包んだ。 

 ……そうここまではいい。勇気を出せ、俺! 

「ダイチはさ、俺と……その、手をつなぐ以上の関係になりたいとかって思わないのかな」 
「え……」 

 俺の握ったダイチの手がピクリと動いた。 
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