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ご挨拶
しおりを挟む皇子宮のリビングに通されたナターシャ。
入ると、既に4人の皇子が出迎えていた。
「は、初めてお目に掛かります。ウィンストン公爵の娘、ナターシャでございます。」
ナターシャは深々と頭を下げた。
「ナターシャ、やっと君と話せるよ。私が第一皇子リュカリオンだ。リュカ、と呼んでくれ。この日をどんなに待ちかねたか……。」
「リュカ殿下、この度はわたくしをこの様な場に迎えて頂ける事、感謝致します。わたくしの様な者が、殿下と直接お話出来る等、思ってもいませんでした。」
ゾクッ………。
(…………あぁ、何て愛らしい声と謙虚さだ。)
リュカだけではない、ナターシャに恋したトーマスやタイタスもナターシャの立派な挨拶に、ゾクッとした。
「ナターシャ嬢、第二皇子トーマスだ。14歳の誕生日おめでとう。これは私達4人からのプレゼントだ。受け取って欲しい。」
トーマスはそう言うと、深紅の薔薇の花束をナターシャに渡す。
「………まぁ、ありがとうございます、トーマス殿下……いえ、殿下方。わたくしの誕生日をご存知だったとは………なんて綺麗な薔薇を………嬉しいです。」
「君の愛らしい容姿には、薔薇も負けてしまうよ、ナターシャ。僕がタイタスね。」
「タイタス殿下、そんな恐れ多いお言葉ですわ。」
「ナターシャ嬢、僕は年下だから、教えて貰う事もあるかもしれないけど、宜しくね。第4皇子コリンだ。」
「そんな、コリン殿下にお教えする立場ではわたくしありませんわ。寧ろ、王宮でのマナー等教えて下さいませ。」
ナターシャなりに、失礼のないよう、本心で4人の皇子達に仕える気でいた。
許嫁だからと、親に決められた立場ではあるが、臣下であるのは令嬢だろうが令息だろうが変わらないのだ。
そう、両親から教えられ、淑女になるよう育てられたナターシャ。
皇子達も、その姿はお茶会で振る舞うナターシャを垣間見ている。
だからこそ、ナターシャを望んだ。
国の為になる伴侶を、そして生涯愛せる女性を、と。
公爵も、皇子達が望むのなら、とナターシャにはマナーやモラル、教育を惜しまず育てた賜物だった。
「ナターシャ、今日はゆっくり過ごすといい。明日からは私達4人が交代で王宮内の事を教えよう。それ以外にも教師達は付けるが
、キツイなら改善するので、気軽に言っておくれ。私達は許嫁ではあるが、まだ婚姻関係ではないからね、君に無理させないように、と父上からも言われている。大事なお預かりした令嬢に早く慣れて欲しいしね。」
「リュカ殿下、お心遣いありがとうございます。あの、差し出がましい事をお聞きしたいのですが、わたくしは時折公爵家には帰る事は出来ますか?父や兄達にはこちらで会えると思いますが、母にも時折会いたいのです。」
「勿論だ。勉強の無い日も設けるつもりだから、その日は気兼ねなく過ごして貰っていいよ。」
「ありがとうございます、殿下。」
「そうそう、ここにもピアノがあるからね、時々私達に聞かせておくれ。好きだろう?ピアノ。」
「ピアノがあるのですか?わたくし、ピアノが好きなので嬉しいです!お聞き苦しいかもしれませんが、わたくしで宜しければ是非!」
嬉しそうな顔をしたナターシャ。
リュカ達にはご褒美のような笑顔だった。
「ナターシャ、我々は以前からナターシャのピアノやヴァイオリンはお茶会で聞かせて貰っているよ。ナターシャの音は可憐で明るく、君の性格を摸していて、私達は癒やして貰っていたよ。お茶会が楽しみだったんだ。君の姿が見えるからね。」
トーマスが言う。
「光栄です、トーマス殿下。わたくしをお心に置いて頂けるなんて、思ってもいませんでした。」
「分かってないね、ナターシャ。君が気に入っていたから王宮に呼んだんだよ?皆、ナターシャを口説くのに必死だからね、その点は覚悟が要るよ?」
「え……?」
リュカのこの言葉に、一抹の不安を覚えたナターシャだった。
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