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鳥籠の中の鳥
しおりを挟む皇子達への挨拶後、部屋に案内されてナターシャは驚く。
広々とした部屋の角部屋で、ベランダもあり、ベランダからは王宮の庭を一望出来た。
ベッドも家具も豪華な物ばかり、ナターシャが使っていた物とは質が上過ぎて、ナターシャは恐縮してしまった。
「セリナ、ライア………こんな素敵なお部屋で良いのかしら?わたくしには勿体無いお部屋では………。」
「リュカ殿下が、ナターシャ様にこちらのお部屋をご用意されたのです。もし、ご結婚が決まったら、お部屋は変わるとは思いますが、お行儀見習いの間はこちらで、と。」
「王城とは違う建物ですよね、こちらは。」
ナターシャは気になっていた。
高くそびえ立つ王城とは違い、渡り廊下で繋がる棟は、ナターシャが居る部屋は5階の高さで、ナターシャは5階の角部屋。
王城からは遠く離れていて、言うなれば人の目には触れにくいのだ。
この建物で、顔を合わせたのは、皇子4人と侍女の2人のみ。
「世間では、殿下方に許嫁が居られる事は公表しておりません。王城で過ごされると、他の貴族方から批難を浴びますから、秘密裏にしたいんだそうです。数多くのご令嬢が居られますもの、殿下方に嫁がせたい、嫁ぎたい方は少なくありません。ナターシャ様が批難されてしまわない為に、ご婚約が決まる迄は隠されたいんですわ。」
「………本当に極秘で進んでいたお話なのね。」
「はい、全てはお行儀見習いのご令嬢の名誉の為に。お名を汚さぬよう細心の注意を、と。」
「ですから、ナターシャ様も皇子宮から王城に行かれる場合も、お行儀見習いの事はご内密に為さって下さい。殿下方に王城でお会いになったとしても、お行儀見習いの事はお話せぬ様に、と。」
「分かりましたわ。」
ナターシャはなるべく大人しくした方がいい、と思った。
(…………私が何方か選ばなければ、公爵家に帰れるし、選べば皇子妃……。何か逆ハーレムと言うか、鳥籠に入った不自由な鳥になったと言うか…………何方かと結婚したら、少しは自由になるのかしら……。)
ナターシャは、期待と不安、どちらも味わっているような感覚になる。
「ベランダに出てみてもいいかしら?」
気分を変えたくて、景色を眺めたくなったナターシャ。
「はい、手摺から乗り出さないで下されば………手摺は低いので、危ないですからお気をつけて。」
「分かりました。…………ホント、落ちないようにしないと……。」
ナターシャの腰辺りまでしかない手摺。
構造上危ないであろう手摺は、部屋から見る景色を損ねない為だけに作られたようだった。
実際に、人一人か二人が出れるぐらいの小さなベランダでしかない。
だが、景色は素晴らしく王宮の庭を独り占めした気分になれた。
噴水や、手入れされている花々。
皇子達からの薔薇のプレゼントもこの庭の物だろう。
見覚えがある庭だと、ナターシャは思った。
王宮主催のお茶会がある庭がこの庭だったのだ。
ナターシャは、この庭でのお茶会がお気に入りだったから、それを知っていて一望出来る部屋にされたのだろうと、皇子達の心遣いだと知ったのだった。
(私には本当に勿体無いお部屋ね。嬉しいけど。)
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