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夕飯は5人で③
しおりを挟むこの日の夕飯は隣にタイタスが座っている。
嬉しそうに座っていたタイタスだったが、ナターシャの感想を他の3人に馬鹿にされ始めていた。
「タイタス、お前は教え方を勉強しなければいけないようだな。」
「女性は地理には詳しくない人が多いという事を知らなかったらしいな、本来貴族女性への教育は文学的な物が多い、世論には興味を示すが政に関係する地理等に興味を持つ女性は少ない。だが王族の一員になる女性なら話は別。近隣各国の王族とのお付き合いが必須になるから、お前に任したんだぞ?タイタス。」
トーマスとリュカが順にタイタスを諭す。
コリンはコリンで更に馬鹿にする。
「兄上、僕が代わってあげようか?地理と歴史。僕の方が教え方上手いかもだし。」
「いい!!俺がやる!!」
タイタスはムキになる。
弟に役割を取られるのは嫌なようだった。
助け船かどうかは分からないが、ナターシャはタイタスにお願いをする。
「タイタス殿下、近隣諸国の地図と、その国々の資料や本等、貸していただけますでしょうか?わたくしも多少なりとも予習したいので。」
出来るだけナターシャからの『お願い』の意味を込めてタイタスに告げる。
決して、タイタスの教え方が『下手』だと悟られないように気を使った。
恐らく、タイタスは人に教える事が苦手なのだろう、と思ったからだった。
長兄のリュカや、次兄のトーマスは兄という立場から、タイタスやコリンに色々な事を教えてきた経験があるから教え方が上手いのだろう。
タイタスはナターシャの気の遣い方に全く気が付かず、顔を明るくした。
「あぁ!勿論だ、食事が終わったら部屋に持って行くよ。」
コホン……。
リュカがそれを聞いて咳払いをする。
「タイタス、それは侍女に頼め。夜にレディの部屋に行くのは、ナターシャへの閨を共にすると勘違いされてしまう。」
「はぁ?いいじゃん!」
「俺も賛成はしないな、タイタス。」
リュカの意見に賛同するトーマス。
「夜は警備を強化している。兵達に見られてみろ、噂が流れたらナターシャが傷付く事になりかねない。」
「あ、あのそれなら、わたくし食事後も暫くここで待っておりますので、ここでお渡しして下さいませ。」
「………分かった……持ってくるよ。」
渋々、了承したタイタスは、食後に本を持ってダイニング迄来てくれた。
ここであれば食後の後片付けのメイド達の目もあり、本の貸し借りをしているのだ、と周知になるから噂にも上がらない。
「ありがとうございます、タイタス殿下。大事に読ませて頂きますね。」
「リュカ兄上やトーマス兄上の言った通りだよね、ナターシャが傷付く事になる事考えなかったよ、ごめん。」
「いいえ、わたくしが予習したい、と言ったばかりに………助かりますわ。知識は戦えない者には武器になりますもの。父は文官ですから、知識は覚えておいて損はない、と常日ごろから申しておりました。本当に感謝です。必要になりましたら、直ぐにお返し致しますので。」
ナターシャは本を受け取り部屋へ向かおうとした時、まだダイニングに居たリュカから声が掛かる。
「ナターシャ、君の知識を国の為に使える事を願うよ、俺の妃としてね。」
「兄上!!」
「何だよ、タイタス。………望みを言っただけだろ?兄弟4人の誰かの妃になったとしても、ナターシャの知識は戦えない者の武器になる、という言葉の重み、素晴らしいとは思わないか?」
「リュカ殿下………ありがとうございます。」
ナターシャは、リュカに深々と頭を下げた。
許婚の1人のリュカに褒められて嬉しそうだった。
「では、俺もまだ少し仕事がか残っているから行くよ。おやすみ、ナターシャ、タイタス。」
「おやすみなさいませ。」
席を立ち颯爽とリュカはダイニングを出て行くのを、タイタスも追った。
「おやすみ、ナターシャ!………兄上!!」
「おやすみなさいませ。」
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