私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

リュカとタイタス

「兄上！！待って！！」
「何だ？タイタス。」

　廊下を早足で掛けてリュカを呼び止めたタイタス。

「何で仕事がまだ残っているのに、まだダイニングに居たのさ！ナターシャと話してたのか！？」
「お前がナターシャに本を渡すのを待っていただけだが？まぁ、その間ナターシャとは話はしていたが。」
「何で！」

　人の目がある場所で本を渡すなら何も問題は無い筈ではなかったか？とでも言うのだろう。

「信用してない訳ではないぞ？だが、人の目が俺だったら、侍女達もまた変な噂を立てないからな。ナターシャの教師を我々兄弟でしている事は知っているが、勉強以外の時間に個人的に会うのはどうしても噂が出る可能性もある。箝口令はしているが、念には念をだな。………それに……。」
「それに？」
「思わぬ所で妃に必要な器量が見れたのは嬉しい限りだ。」

　嬉しそうに、リュカは顎に手を当て微笑んでいる。
　考え事をする時によくするリュカの癖。
　そのリュカがナターシャの事を考えているのだ。

「知識は戦えない者の武器、てやつ？」
「そうだ。………今国は安泰で戦争がある訳ではない。だが、国を動かす王族が間違った道に行ってしまえば、戦争も簡単に起きるのだ。そんな時に無知な妃では皇帝の代理にはなれない。トーマス、タイタス、コリン、それぞれ皇帝の器質はあると思っているから、ナターシャは是が非でも王族に迎え入れたい、と更に強く思ったよ。ま、俺はナターシャを俺の妃にする事を諦めてないがね。」
「……………。」

　リュカは、執務室の前に着き、ドアを開けた。

「お前はもう少し、ナターシャへの教え方を工夫するんだな、気を遣わせてしまった事に、理由が分からんようじゃ、ナターシャは手に入れられないぞ？………おやすみ。」

　バタン。

「…………何が……皇帝の器質だよ………リュカ兄上がダントツじゃないかよ………そっか……ナターシャ、やっぱり気を遣わせてしまってたんだな……。」

　タイタスも分からなかった訳ではない。
　ナターシャが本を読んで予習したい、と意味が……。
　理解出来ず、予習して知識を少し入れて説明があって更に知識を深めるというもの。
　
「ナターシャ、俺の教え要らないんじゃないか？………やだやだ！遅れ取っちまう！！兄上達に負けるもんか！！」