私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛

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お行儀見習い【コリン】③

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「ナターシャ!」
「!!」

 コリンに呼び出され、皇子宮の庭に出たナターシャは、コリンに後ろから抱き着かれ、びっくりしてしまった。

「コ、コリン殿下……びっくりしましたわ。」
「ナターシャ、馬に乗らない?」
「馬ですか?」

 貴族であれば馬に乗れる者も多い。
 レングストンの女性も乗る者も居るが、ナターシャは乗れない。
 ウィンストン公爵が危ないから、と乗せなかった、という事もあるのだが、ナターシャ自身、大きな動物が苦手だった。

「殿下……馬は乗れないのです。」
「じゃあ、教えてあげる!セリナ、ライア!馬に乗れるような軽装を用意して!」
「え!本当にわたくし、結構ですので!」
「大丈夫大丈夫!」

 断っても、半ば強制的に厩舎に連れてこられてしまったナターシャ。
 着替えはしたものの、押し切られそうで戸惑っていた。

「実はさ、今日兄上達も厩舎に居るんだ。」
「え?」
「リュカ兄上は、朝から軍の馬上戦の訓練をしてて、トーマス兄上は副官だから同行して、タイタス兄上も隊長の任に着いてるから、訓練の時は僕も参加してるんだよ、僕はまだ軍には入れないから練習も兼ねてね、さっき迄やっててもう終わる時間だから、見せてあげようかな、て。」
「見るだけなら……。」

 手を引っ張られ、躓きそうになりながら、何とかコリンに着いて行くと、軍服を着た皇子3人とナターシャの兄2人が談話をしている。
 
「兄上!」
「コリン、今日はもう外れたんじゃ…………。」

 コリンがリュカ達に声を掛けて近寄る。
 会話の途中で言葉を詰まらせるリュカは、コリンと手を繋ぎ、駆け寄るナターシャを見た。

「へへっ!ナターシャと馬に乗ろうと思って。」

 コリンが屈託無き笑顔で嬉しそうに話す。

「コリン殿下、妹は馬が苦手なんですが……。」

 申し訳無さそうにセシルが伝えると、コリンは……。

「大丈夫だよ、教えるから。」
「いえ、そうではなく……大きい動物自体が怖いようで、近寄りも出来ないのですよ。」
「え!?そうなの!?」
「…………ですから、わたくしは結構ですので、と………着替えはしましたが、見るだけで………。」
「コリン……しっかり聞かなきゃな。」

 トーマスも呆れ顔で言う。

「でも、ナターシャの馬術着可愛い!」

 タイタスが舐め回すようにナターシャを見ている。

「うっ………確かにそうだが……。」
「ナターシャ、苦手になるような事があったのか?」

 リュカは服よりその方が気になるようだった。

「リュカ殿下、私達兄弟の不注意だったんです。我が家の馬の世話をしていた時、ナターシャがその馬に後ろの方に近付き過ぎて、蹴られそうになって……それから近寄れなくなりまして……。」
「…………接し方を知らなかったからの恐怖心か。」
「はい、俺達兄弟が馬の前に居て、ナターシャに気付かず。」
「で、怖いか………。」

 リュカの癖を見せている。

「ナターシャ、おいで。俺の馬を見せてあげる。」
「え?」

 ナターシャは首を横に振る。

「申し訳ありません。」
「そっか…………じゃあ、ちょっとごめん。」
「きゃっ!!」
「兄上!!」
「殿下?」

 ナターシャを横抱きして、リュカは歩いてい厩舎の中に。

「下ろして下さいませ!」
「ナターシャ、軽いなぁ。」
「軽くないです!」

 リュカは一頭の馬の前に立つ。
 ナターシャはリュカにしがみついていたから、馬に近寄っているのも気が付かなかった。

「フェデラー、という俺の馬だよ。」
「え?」
「ここ迄来たけど、怖い?」

 抱き上げられていた恐怖心のまま、馬を見るが、リュカに包まれているので、別の安心感があった。
 リュカに下ろされても、リュカがナターシャを後ろから包み込むようにしていた。

「ブルルル……。」
「蹴られそうになったのはナターシャが馬の後ろに居たからで、真正面や、視界に入る場所に居たら馬は悪さをしない。馬は後ろに気配があると怖いから驚いて蹴り上げるんだよ。」

 フェデラーが、頭をリュカに出したので、リュカは撫でてやると、気持ちよさそうに擦り寄る。

「ほら、怖くない。」
「…………触れますか?わたくしでも……。」
「俺が近くに居るから大丈夫。」
「………………触らせてね?」
「ブルルル……。」
「触れた………。」

 恐る恐る触れようとしたのに、触れる事を許してくれたフェデラー。

「目が可愛い………。」
「だろ?乗ってみる?手綱は俺が持ってるし、一人で乗らせる事はしないよ?」
「…………乗れるでしょうか……。」
「運動神経が悪くなければ?」
「!!………わ、悪くないと思います……。」

 リュカが意地悪く揶揄うと、子供の頃のナターシャを思い出させるような、お転婆な時の顔を見せた。

「じゃ、乗ろうか………乗れるよね?乗れないなんて言わないよね?」
「!!………乗りますわ!!」
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