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ナターシャの悩み
しおりを挟む夕食を断ったナターシャは部屋で自分の気持ちに向き合っていた。
暫くすると、リュカが夕食をナターシャの部屋へ、との指示で運ばれてきた。
リュカの気遣いはいつも、ナターシャにとって嬉しいものだった。
スキンシップは多いが、楽しい時間を過ごせ、笑顔を引き出すリュカはナターシャを常に欲しいが為に愛を囁く。
だが、ナターシャには愛が何かは知らない。
幼い頃から許婚が居て、父や兄以外の男と言えば、家の侍従だけで、接点が無かったから……。
それも、父が許婚の皇子への忠誠心からなんだが、それがナターシャの鈍さに繋がった。
(リュカ殿下………何故わたくしにそこ迄して下さるんですか?)
その場に居ない彼に、居ない事で楽しかった分寂しさが募る。
それが恋だと、今日気が付いたのだ。
スキンシップで振り回されて困った顔をしても、優しく接して微笑んでくるリュカに、鼓動が激しくなり、顔を合わせられなくなったのだ。
「はぁ…………。」
「ナターシャ様、食が進みませんか?」
気付けば、メインの肉料理を小間切れにしただけで食べていない。
スープと僅かなパンだけを食しているだけ。
「セリナ、ライア………誰かに恋すると、食は進まないものかしら?」
セリナとライアは顔を見合わせ、頷き合うと、ライアが話始めた。
「ナターシャ様、人それぞれですが、食が細くなる事はありますよ。ですが、想いが通じ合えばそれは無くなります。」
「お好きになられました?殿下の何方かを。」
「………多分。恥ずかしくて、顔を合わせられなくなったの。」
「まぁ!」
「何方か伺っても?」
「……………言わなきゃ駄目?」
困って赤らめ、上目遣いをしたナターシャ。
「!!」
男でなくとも、キュンとする程の愛くるしさ。
それを、グッと堪え、セリナは聞く。
「内緒にしておきます。ナターシャ様ご自身が、ご本人様に伝えられる迄。」
「つ、伝えなきゃ駄目なの?ご本人に!」
「当然です!でなければ、ナターシャ様の恋が終わってしまうかもしれませんよ!」
「い、言えないわ……恥ずかしくて……。」
「ナターシャ様!いいんですか?その方が誰かと結婚しても!キスもハグもされなくても!その方のお子様の母がナターシャ様でなくても!」
「!!……………嫌………恥ずかしいけど、例え唇以外にキスされても、抱き締められても
嬉しかったもの!それに………。」
「それに?」
「…………笑わない?」
「笑える事なんですか?……痛っ!」
セリナが聞いた事に、ライアの肘鉄が入る。
「笑いません!断じて!」
ライアは真剣に聞く。
「その方にキスしても嬉しかったの……嫌じゃなかった。」
「ナターシャ様!!素敵な恋ですよ!大丈夫です!好きだと告白しても、受け入れてくれる筈です!殿下なら!」
「その殿下が何方か分かってるの?ライアは。」
「多分、リュカ殿下?」
ボッ!
名前が出ただけで、顔が真っ赤になり、顔を覆うナターシャ。
顔全体に火が出るような感覚だった。
「ナターシャ様、皇太子妃になられてもそのままで居てくださいね!」
「応援しますから、頑張って下さい!」
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