私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
44 / 100

ナターシャの悩み

しおりを挟む

 夕食を断ったナターシャは部屋で自分の気持ちに向き合っていた。
 暫くすると、リュカが夕食をナターシャの部屋へ、との指示で運ばれてきた。
 リュカの気遣いはいつも、ナターシャにとって嬉しいものだった。
 スキンシップは多いが、楽しい時間を過ごせ、笑顔を引き出すリュカはナターシャを常に欲しいが為に愛を囁く。
 だが、ナターシャには愛が何かは知らない。
 幼い頃から許婚が居て、父や兄以外の男と言えば、家の侍従だけで、接点が無かったから……。
 それも、父が許婚の皇子への忠誠心からなんだが、それがナターシャの鈍さに繋がった。

(リュカ殿下………何故わたくしにそこ迄して下さるんですか?)

 その場に居ない彼に、居ない事で楽しかった分寂しさが募る。
 それが恋だと、今日気が付いたのだ。
 スキンシップで振り回されて困った顔をしても、優しく接して微笑んでくるリュカに、鼓動が激しくなり、顔を合わせられなくなったのだ。

「はぁ…………。」
「ナターシャ様、食が進みませんか?」

 気付けば、メインの肉料理を小間切れにしただけで食べていない。
 スープと僅かなパンだけを食しているだけ。

「セリナ、ライア………誰かに恋すると、食は進まないものかしら?」

 セリナとライアは顔を見合わせ、頷き合うと、ライアが話始めた。

「ナターシャ様、人それぞれですが、食が細くなる事はありますよ。ですが、想いが通じ合えばそれは無くなります。」
「お好きになられました?殿下の何方かを。」
「………多分。恥ずかしくて、顔を合わせられなくなったの。」
「まぁ!」
「何方か伺っても?」
「……………言わなきゃ駄目?」

 困って赤らめ、上目遣いをしたナターシャ。

「!!」

 男でなくとも、キュンとする程の愛くるしさ。
 それを、グッと堪え、セリナは聞く。

「内緒にしておきます。ナターシャ様ご自身が、ご本人様に伝えられる迄。」
「つ、伝えなきゃ駄目なの?ご本人に!」
「当然です!でなければ、ナターシャ様の恋が終わってしまうかもしれませんよ!」
「い、言えないわ……恥ずかしくて……。」
「ナターシャ様!いいんですか?その方が誰かと結婚しても!キスもハグもされなくても!その方のお子様の母がナターシャ様でなくても!」
「!!……………嫌………恥ずかしいけど、例え唇以外にキスされても、抱き締められても
嬉しかったもの!それに………。」
「それに?」
「…………笑わない?」
「笑える事なんですか?……痛っ!」

 セリナが聞いた事に、ライアの肘鉄が入る。

「笑いません!断じて!」

 ライアは真剣に聞く。

「その方にキスしても嬉しかったの……嫌じゃなかった。」
「ナターシャ様!!素敵な恋ですよ!大丈夫です!好きだと告白しても、受け入れてくれる筈です!殿下なら!」
「その殿下が何方か分かってるの?ライアは。」
「多分、リュカ殿下?」

 ボッ!

 名前が出ただけで、顔が真っ赤になり、顔を覆うナターシャ。
 顔全体に火が出るような感覚だった。

「ナターシャ様、皇太子妃になられてもそのままで居てくださいね!」
「応援しますから、頑張って下さい!」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、 王弟殿下と出会いました。 なんでわたしがこんな目に…… R18 性的描写あり。※マークつけてます。 38話完結 2/25日で終わる予定になっております。 たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。 この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。 バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。 読んでいただきありがとうございます! 番外編5話 掲載開始 2/28

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

龍の腕に咲く華

沙夜
恋愛
どうして私ばかり、いつも変な人に絡まれるんだろう。 そんな毎日から抜け出したくて貼った、たった一枚のタトゥーシール。それが、本物の獣を呼び寄せてしまった。 彼の名前は、檜山湊。極道の若頭。 恐怖から始まったのは、200万円の借金のカタとして課せられた「添い寝」という奇妙な契約。 支配的なのに、時折見せる不器用な優しさ。恐怖と安らぎの間で揺れ動く心。これはただの気まぐれか、それとも――。 一度は逃げ出したはずの豪華な鳥籠へ、なぜ私は再び戻ろうとするのか。 偽りの強さを捨てた少女が、自らの意志で愛に生きる覚悟を決めるまでの、危険で甘いラブストーリー。

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

処理中です...