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結婚式迄あと1週間③
しおりを挟む「リュカ殿下!申し訳ありません、お手伝い出来なくて。」
ナターシャはリュカに抱き着く。
それがとても自然でナターシャがどれだけリュカが好きなのか分かる。
「こっちは大丈夫だが、ラメイラは大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ、兄上。たまたま慌てたセリナを見かけ、俺が先に駆けつけましたから。ラメイラの事は俺に任せて下さい。兄上はナターシャとの結婚式を無事に挙げる事だけに専念を。」
(やっぱり、一緒に居るのを見るのは辛いな……。)
トーマスは直ぐに皇女宮から離れて行った。
「ナターシャ……何があったか聞いていいか?」
「ここでは話せませんから、皇太子邸へ……。」
「………いや、執務室で聞く。」
リュカは癖の顎に手を添える。
(皇太子邸では駄目なのですか?リュカ……。)
執務室にはセシルも居たが、セシルに聞かせてもいい内容なのかは分からないナターシャ。
「それで?ラメイラが泣いた理由は?」
「え……と……。」
チラチラとセシルを見るナターシャが人払いをリュカに頼んでいるのが分かる。
「ラメイラ公女が泣く理由なんて、タイタス殿下以外ないでしょ。」
「お、お兄様!!」
「タイタスに何か言われたのか?ラメイラ。」
「……………もっと酷いです。」
「酷い?」
「タイタス殿下が、とある公爵令嬢を抱き締めていた所を見てしまって。」
溜息が漏れるナターシャ。
「また絶妙なタイミングで見たんだな。」
「えぇ、それをトーマス殿下がラメイラ様の為に何とかするから、と仰って。」
「ナターシャ、そのタイタスが抱き締めた令嬢は何か問題がある、と?」
「そう思いますわ。皇女宮から出てこちらに来るつもりだったんですが、その令嬢から話掛けられ、話をしていた所にラメイラ様とタイタス殿下が……。」
「ん?それでタイタスがラメイラの前でその令嬢を抱き締めたのか?」
「わたくしとラメイラ様が離れた時ですわ。」
「…………。」
リュカはまた顎に手を当て考えている。
「おかしいじゃないか。」
「何がです?」
「タイタスがナターシャの前で他の女を抱き締めるとは思えん、いくら離れたからと言って。」
「確かにそうですね。」
黙って聞いていたセシルが言う。
「タイタス殿下はまだナターシャを好きな筈。」
「トーマス殿下が仰るには、わたくしとその令嬢が喋り口調が似ているから、と……確かにそう思いましたし。」
「ナターシャ………何故、その令嬢の名前を言わない?」
(トーマス殿下に言うな、と言われたとは言えない……。)
ナターシャが考えていると、リュカが追い打ちを掛ける。
「ナターシャが令嬢の名前を知らない訳ないじゃないか。」
「!!」
「ナターシャ?何を隠してる?」
「……………ロレイラ様ですわ……殿下の元許婚の…………。」
「!!」
言いにくそうに、絞り出したナターシャ。
「ロ、ロレイラ…………。」
リュカの顔が歪む。
それだけで、リュカの中で憎悪が湧くのが見えたナターシャとセシル。
「ナターシャ!!何故その名前を殿下に言った!!トーマス殿下に口止めされたんじゃないのか!!」
「セシル?」
「す、すいません………トーマス殿下からどうしても、と殿下の過去を………。」
「セシル!!」
「もう隠さなくていいですわ!!殿下!!わたくしは殿下の妃です!!過去も現在も、未来もわたくしには知る権利がありますわ!!…………殿下……過去の事、詳しく話して欲しいと思いません、ロレイラ様が殿下にした事も今わたくし嫉妬しています………でも、わたくしは殿下のお気持ちを信じ、殿下と共に未来を見たいのです………それでは駄目ですか?」
まくし立てた後、ナターシャは涙を零す。
セシルを庇った訳ではない、リュカの心を守る為に。
「ナターシャ………。」
「殿下、申し訳ありません。」
「いや、俺こそ悪かった、怒鳴って。」
1週間後、結婚式。
リュカは、自分の我儘を通し、皇太子邸に入る事にした。
ロレイラがナターシャやタイタスに近付いた事を説明する事にはなったが、その話しを聞いた皇帝やウィンストン公爵は快諾した。
リュカが皇帝と宰相であるウィンストン公爵を説得をしたのである。
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