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エピローグ
しおりを挟むタイタスやラメイラ、ロレイラの事は何も進展も無いまま何日が過ぎ、ラメイラが骨折した足を引き摺り皇太子邸に遊びに来てくれた。
ナターシャがこの数日、食欲低下でリュカが押し込めているからだった。
「ナターシャ、大丈夫か?食事も取れなくなった、て聞いたが……。」
「殿下が大袈裟なんですわ!わたくし動けない訳でもないのに!」
ナターシャは拗ねている。
3人の事が気にし過ぎて、食べれなくなるのは違う気もするナターシャだが、経過をリュカは教えてくれるので、渋々皇太子邸に居るだけなのだ。
「それよりラメイラ様、足は大丈夫なのですか?」
「皆、足を心配してくれてるが、私は何度か落馬して骨折にも慣れているよ………ははは。」
「それでも、痛い事には変わりありませんわ!」
「ありがとうナターシャ、心配してくれて。それより、ナターシャ……さ……私を様付けで呼ぶのはやめてくれないか?友達だと思ってる人から様付けされると、くすぐったくて……。」
少し恥ずかしそうにラメイラはナターシャにお願いをする姿が可愛かったが、ラメイラに可愛い、と言うと怒りそうなので、ナターシャはそのお願いを素直に受け取る。
「分かりましたわ、ラメイラ。わたくしもお友達だと思ってましたから、そう呼ばせて頂きますね。」
ライアがお茶を用意してくれていたので、目の前にある茶菓子のチョコをナターシャは手に取る。
「このチョコレート美味しいんですよ、王都でも評判いいショコラティエの店から取り寄せてるんです。わたくし、ずっとここのチョコが大好きで。」
「私もチョコ好きだから頂くよ。……うん、美味し…………ナターシャ!?如何したんだ!!…………誰か!!」
「如何されまし……ナターシャ様!!」
ナターシャは口に含んだ途端、嘔吐し青ざめていた。
食欲低下中のナターシャだが、食べたい物だけでも胃に入れなければ、と口に入れただけなのに。
「私も同じチョコを食べたが何ともなかったのに!!」
「直ぐにお医者様お呼びしますので!早く殿下にお知らせして!」
「気、気持ち悪くなっただけよ………大事にしないで…………うっ………。」
「ナターシャ!!早く横に!!」
ライアに背中を擦られて、やっと落ち着くと、ナターシャは口にハンカチを押さえ、ライアにお願いする。
「ライア………ごめんなさい、そこのチョコをラメイラの為に包んで差し上げて………今、チョコを見たくないわ……。チョコに何か入ってる訳じゃない筈だから………。」
「畏まりました。」
バンッ!!
「ナターシャ!!嘔吐した、て!大丈夫か!!今医者が来るから!!」
リュカが知らせを聞き、慌てて皇太子邸に帰って来る。
「大事にしないで、て言ったのに………騒がしく帰って来ないで下さい……。気持ち悪くなって吐いただけなのに……。」
「吐いたなら何か原因がある筈だろ!早く医者に見せれば良かった!」
「だって、離宮で熱が出た時に大事にされたから………。」
「ナターシャ………心配なんだから当たり前じゃないか。」
ガヤガヤざわざわと皇太子邸の外から聞こえ、医者が汗だくになってやって来た。
「失礼致します………ぜぃぜぃ………。」
走ってきたのだろう、医者は助手1人を引き連れ、肩で息をしている。
「妃を見てくれ。」
「殿下、せめてお医者様の息が整うのを待ってあげて下さい。」
「し、しかし………。」
「大事にしたのは許しますから、ね。」
既に尻に敷かれるリュカ。
「妃殿下、お身体に触れますが宜しいですか?」
「はい、お願いします。………殿下、お医者様ですから、ヤキモチ焼かないで下さいね?」
「ぐっ………。」
身体に聴診器をあて、脈や熱を測る。
「妃殿下、微熱続いてらっしゃいましたね?」
「ナターシャ!何で言わない!」
事ある毎に、リュカは煩かった。
「リュカ!落ち着きなよ!」
「熱っぽいな、とは思いますが………。」
「月のモノは……?」
「………あ、そういえばまだ今月は来てない………。」
「ご懐妊かもしれませんなぁ……食欲不振、食欲低下、食べても嘔吐となると、悪阻も始まって暫く気持ち悪さは続くでしょうけど、激しい運動をされなければ……来月に月のモノが無いなら間違いないでしょう。」
リュカは驚きを隠せない。
「……………子供……出来るのか………。」
「…………殿下……。」
「月のモノの周期にもよりますからな、まだ糠喜びしないで下さいよ、妃殿下。」
「…………でも、気を付けなければならないのですよね?」
「えぇ、次の予定周期迄無理なさらぬように。」
「分かりましたわ。」
そうして、懐妊だと分かったナターシャとリュカ。
結婚して直ぐに世継ぎに恵まれ、また国中に歓声が上がったのだったのだが、それはまた後日………。
今はロレイラとレーチェの事を気にしたリュカは、公表を控える事になったのだが、それはナターシャも納得する。
その夜、リュカはナターシャを祝うかのように、庭師に用意させたのだろう、大量の薔薇の花束をナターシャに贈った。
「………リ、リュカ……こ、こんなに如何したのです?」
「う、嬉しくて………言葉だけじゃなく、どうしていいか分からなくて………。」
「…………喜んでくれるのですね?」
「勿論だ!………愛し過ぎて、行き場が無いこの気持ちを薔薇にしてしまった………暫く、悪阻があるから、閨は控えなきゃならないらしいし………。」
「…………プッ………可愛い、リュカ……クスクス…………。」
「かっ……可愛いって………揶揄わないでくれ!」
その後、大量に贈られた薔薇の香りにむせ返ったのは言うまでもない。
各部屋に薔薇を飾っても余る程の量に、侍女達がその行き場に困らせのだった。
End
※別編、『私の欲しいのはこの皇子!』
も公開中です。
ラメイラ編もよろしく(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
※番外編も1話あります。
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