私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

【番外編】皇帝

　
「僕の妃？」
「そうだ、皇太子なのだから早めに、とな。」

　皇帝の私室で、幼い皇太子リュカがまだ8歳の頃の話。
　
「妃、て母上のような人なのですか？」
「この国の皇妃になれるよう、教育された令嬢を選ぶつもりだ。」
「どんな人ですか？」
「今年11歳になる、前皇帝の弟の孫娘、ロレイラ嬢なんだが。」

　リュカにはまだピン、とこない結婚と許嫁。
　よく分からないまま、内密にロレイラを許嫁としてしまったリュカ。
　皇帝もまだロレイラの本性を知らなかった事が、最大の汚点だった。
　
「殿下！殿下！」
「ロレイラ、どうしたの？こんな茂みに呼び出して。」
「わたくし、殿下とシたい事があるんです。」
「何？」

　無垢で何も分からなかったリュカに危機管理がなかった。
　ロレイラはリュカの唇を奪い、育ちきっていない未熟なリュカのモノを触る。

「！！」
「触られると気持ちいい、て聞きまして殿下を癒やして差し上げようと。」
「ね、ねぇ………ロレイラ、それは結婚してから、じゃっ…………んっ！」

　性に興味しかないロレイラは、リュカの口を塞ぐと、舌迄ロレイラは侵入し、直接リュカのモノを弄る。
　いくらリュカが男でもまだ子供で、ロレイラに力が及ばない。
　これが、リュカの心を傷付けた。
　それからも、リュカはロレイラにその行為をされ続け、精通したのが知られると、ロレイラは自らリュカのモノを挿入させたのだ。
　この事から、リュカはロレイラの事を皇帝に話す。

「父上……耐えられません！！ロレイラとはこれ以上会いたくないし、彼女との結婚も、勿論弟達との関わりも一切断ち切って下さい！」
「…………よかろう、リュカ………よく話してくれた……辛い思いをしたな、リュカ………すまなかった……。」

　皇帝は、ロレイラの父、レングストン公爵に内々の婚姻の約束を一方的に破棄をした。
　勿論、レングストン公爵からは抗議が上がり、それ以降は敬遠の中の皇帝。
　そして、次の許嫁選びには慎重になった皇帝だった。
　そんな時、リュカは久しぶりの笑顔を皇帝に見せる。
　ロレイラの許嫁になり、解消する迄約2年、全く笑顔が無かった息子が、いつもは嫌々に参加し、皇帝や皇妃の側を離れなかったのに、その日王宮で行われたお茶会で終始笑顔を見せた。
　気になって、リュカの目線の先を見てみると、皇帝の側近、ウィンストン公爵である宰相の娘、ナターシャを見ていた。

(どういう事だ？………あれ程、女を毛嫌いしていたリュカが………。)

　頬を染め、目を光らせる息子が、あの小さな可愛らしい我儘を父に言う娘に恋をした、とこの瞬間に気が付いた。
　そして案の定、リュカは皇帝に、『ナターシャと結婚したい』と願い出る。
　ナターシャがロレイラの様になってはならない。
　それだけは避けなければならなかった為、皇帝はウィンストン公爵に、リュカにあった事を全て打ち明け、ウィンストン公爵はナターシャを皇太子妃とさせる為に、努力もリュカに協力する事も惜しまなかった。

「うむ、今日も仲睦まじくしておるな。」

　結婚式が終わり、日が経ち落ち着きを戻った頃、リュカに嫁いだ娘が子を宿した。
　仲睦まじい息子夫婦を見ると嬉しく思う。
　ナターシャのお腹を擦り慈しむ優しい笑顔を妃に向けるリュカは幸せそうだ。
　しかし、結婚式前からロレイラがまた何かやりそうな懸念は拭えていない皇帝。
　リュカとナターシャの仲睦まじく見られるだけで、安堵してはいけないと分かってはいるが、つい忘れてしまいそうになる。
　あと数カ月経てば、皇帝も祖父となる。
　楽しみで仕方なかった。