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監禁される新婦
しおりを挟む「んんんっ!!」
「暴れんで下さい!!」
暴れるな、なんて言われても無理な話だ。バス停から歩き駅に向う繁華街で黒塗りの外車が横付けされ、その後取り囲まれるように、路上を歩いていた男達に押し込まれた。しかも自然に、櫻子が隠れる様に取り囲まれたのだ。そして乗るのを確認すると高級外車は何食わぬ顔で発進する。
今、櫻子は後に手を拘束され、猿ぐつわをされた。何が何だか分からず、一番偉そうにしている若い男によって、櫻子の手荷物を物色されている。
「『松本』………か……どうりで、見つからなかった訳だ………あっちは見つけていたというのに……」
免許証だろう、櫻子の顔写真と本人を見比べ、顎を持ち上げられている櫻子。涙目になり、訴えたいのも出来ず、車の中で暴れようとしても男に捕まられていた。
「手荒な事はしたくないんですよ………失礼だが、髪の毛を数本戴きます」
「んっ!」
「坂本、コレを鑑定に出しておけ……親父とお嬢のと一緒にな」
数本を抜いた髪の毛をパウチに入れた男は、目の前の男に渡す。
「さて、お嬢さん………結婚なんてさせられないんで、我々が阻止させて頂きますよ」
「…………」
「不思議ですか?貴女には我々にとっても、価値ある存在なので、結婚に関しては口出しさせて頂きます」
それからは、その男も髪の毛を渡された男も一言も発せず、ある高層マンションの地下駐車場に入っていく。すると別の高級外車から数人の男達が降りて来て、出迎える様に並んだ。
「「「「お疲れ様です!!」」」
「お疲れさん………親父は?車か?」
「はい」
「警護頼む…………降りますよ」
「……………んんんっ!!」
「悪い様にはしません………貴女のお祖父様に会うだけですから」
「…………ん?」
「貴女は『龍崎』櫻子………これが本名です………そして、祖父の龍崎高徳………龍虎会会長です」
櫻子の姿が見えた直後、70歳ぐらいの老人が出てくる。頬に切り傷が目立つ、厳つい白髪の男だ。
「高嶺…………この娘か………雪の娘は……」
「はい、恐らく………『松本』と名乗ってますが、今坂本にDNA鑑定を命じた所です」
「『松本』………全く身に覚えがないな……」
「調べましたら、お嬢は産まれて直ぐに孤児院に預けられてまして、ただ名前は『櫻子』としか書かれたぬいぐるみが片隅に置いてあったから『櫻子』と………」
「…………分かった……検査結果を見てから、次の事を知らせる………猿ぐつわを外せ、顔が見たい」
「悲鳴あげられたら……」
「構わん………これだけの男達の中で悲鳴あげられる度胸があるならやってみろ………雪の娘かどうかも分かるかもしれん。あやつの遺伝子があるならな」
櫻子は震えていた。如何見ても極道の人間で、普段からそういう類いの人間を避けて来た人間ならば、震えて当然だった。高嶺、と言われた男は櫻子の腕を掴んでいる部下に合図する。猿ぐつわを取られた櫻子は、肩で息を整えた。一言も発せず、ただ真正面の祖父だという老人と高嶺を見つめる。悲鳴等あげたら、直ぐに殺されるかもしれない、と思ったからだった。
「…………雪……似ている……」
「………えぇ、私の父と並んで撮った写真の、雪お嬢に似ています」
「……………あ、あの……私を如何しようと……」
声を震わせ、立っているのもやっとの櫻子に、高徳と高嶺は笑った。
「殺されると思ったか?」
「貴女が龍崎雪の娘でこの方の孫であれば殺しませんよ」
「も、もし違っていたら?」
「解放します。検査結果が出る迄は、病気で入院をする様に、勤務先には伝える予定です。勿論、結婚して頂いても構いません」
「……………ほっ……」
「…………お前が安心する身であるならいいのだがな…………高嶺、あっちの動向は?」
ホッとする櫻子だったが、高徳からまた意味深な言葉を聞いた。あっちの事は分からないが。
「連絡ツールの電源は切っているので、電話が入ってたらバレてるでしょう。今こちらで事を起こしてやったので、その処理に時間掛かっていたら、暇は無いでしょうが」
「…………此処はバレてないのか?」
「今の所は」
「ならいい………検査結果迄頼む」
「分かりました」
高嶺は、高徳に一礼すると、部下達に合図をする。高徳は再び車に乗り込み、何処かへ行ってしまった。
「さぁ、櫻子さん部屋に案内します。暫くはそこで過ごして下さい。」
「ど、どれぐらいですか?………せめて彼に連絡したいんですけど」
「…………貴女のスマホは検査結果が出る迄預かります」
「彼にだけでいいですから!………………っ!!」
高嶺から冷たい目で睨まれる。その目で殺される、と思ってしまう程、殺気を感じる櫻子。初めて人を怖いと思った瞬間だった。
睨まれてから何も話せず、そのままマンションの一室に押し込まれた櫻子。
「此処の物は好きに使って下さい。因みに部下は配置します。玄関、窓際に待機していますから、逃げようとしないように………そうしなければ命は保障します」
「…………監禁迄して、本当に違っていたら自由にさせてくれるんですか?」
「えぇ、約束しますよ………電話コードは抜いておきますが……」
「…………彼に心配させたくないんですけど……メールも駄目ですか?」
「…………何度言えば分かります?誰にも連絡はさせん!!」
「!!」
高嶺の導火線に火を着けたようだ。荷物も奪われ逃げれる隙も無かった。
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