何故、私は愛人と住まわねばならないのでしょうか【おまけ】

Lynx🐈‍⬛

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 レイラは船の航海士とフェイで、アジト迄の航路を確認している。

「南東の島を迂回ですね」
「潮の流れに逆らうから仕方ないわ」
【真っ直ぐ行かないのか?】

 空の雲の流れや風の向きを確認し、出て来た航路にフェイは不満そうだ。

【真っ直ぐ行ったら、船は進まず、渦に巻き込まれるから】
【……………渦?そんなもの無いぞ?】
【これから出るの】

 フェイ達は無謀な航路を辿っていた様に見える。
 経験豊富な航海士程ではないが、レイラも領地の海はよく知っているので、危険な事をしていたからこそ、なかなか彼等のアジトが見つからず、見失っていたのだろう。

「流石です、お嬢様………あ、いや、もう領主様ですね…………まだ慣れませんわ」
「ふふふ………私を小さい時から知っている人は皆そう言います。爺やでさえ言うんだもの」

 アーロンはというと、騎士達と打合せ中だった。
 交渉が決裂しようものなら、フェイを連れて来た意味が無い。

「アーロン様」
「……………レイラ……あとどれぐらいで到着するんだ?」
「10分もあれば………」

 フェイからは離れたので、レイラはアーロンから名を呼ばれて微笑むと、アーロンはレイラを抱き締めた。

「……………アーロン様?」
「補充」
「私は備蓄食か何かですか!」
「俺の最愛の妻だが?」
「……………では、私もアーロン様を補充します」

 普段と言語が違う言葉の会話は頭を使うもので、癒やしが欲しくなる。
 甲板の上で抱き合う姿を見られるのは気恥ずかしくて堪らないが、周囲の目よ、許して欲しい、という雰囲気をアーロンから出されていて、それぞれの仕事を皆は熟す様に、と視線を返されて気まずそうだ。

【……………ちっ……】

 略奪しようと、侵攻したフェイは、レイラとアーロンを見に来た訳でもないのに、本来の目的が変わる事を期待していた。
 フェイは仲間の中で文字の読み書き出来る唯一の男だった事を、レイラには話してはいない。
 産まれ育った街の中でも、裕福な家で育ったフェイは、文字の読み書きは出来、街を栄えさせようと頑張っていたが、領地戦が国で起き、街の女達は奪われて、子供や老人は殺されて、若い男達は街を追い出された。
 港から船を出し、潮の流れで行き着いた場所が、大陸の諸島の一つの無人島だったのは、何処からも襲われる心配も無い、と安心しても、飲水も無く、獣も居ない、作物も無いでは、生きてはいけず、島から見える船を襲い、略奪するしかなかった。
 それを5年以上続けたが、それにも限界がやってきていた。
 医者も居ない無人島で、病気になり死ぬ者、食中りになり死ぬ者も出ると、体力があっても心が疲弊していく。
 大きな船も無い小さな漁港の漁師を生業にしている男達でも、隣国の海迄は来れず、航海術も学んだ者は居なかった。
 だから、略奪した物で食料と水を中心に手に入れて、むさ苦しい男ばかりの環境にも嫌気がさす中、やはり女が欲しいと思うのは至極当然だと言える。
 国に帰れないなら、迷い入った隣国で女を奪えば良い、と初めて上陸したのだ。
 久し振りに見た生身の女に、仲間達は群がっていると思われ、フェイはレイラに見せたくはない、と思っていても、夫との幸せそうな顔を見たら、女達を略奪した事を後悔しかしなかった。

【おい…………着いたぞ、彼処だ…………船もある】
「領主様!閣下!見えました!彼処です!」
「……………船があるな………騎士達は計画通りに頼む。先ずは攫われた女、子供を救出だ………レイラは顔を隠すんだ」
「……………分かりました」

 レイラも攫われてはならない、とばかりにアーロンが離さないのと、顔を隠して下船準備をする。
 船から見える風景では、船に見張りを付けている様に見えても、持っている武器は大した物でも無い様で、銛の装備しか見られない。

「あんな軽装備でお父様は逃げ腰だったのかしら」
「……………軍船で来た甲斐がないな……ひとたまりもないぞ、あれ」
「お父様は、武器装備に力入れませんでしたから」
「だから、防衛しなかったんだろうさ」
「閣下!向こうが攻撃しようとしてます!」
「こっちは威嚇だけだ!攫われた者が船に乗っていたら如何する!人命救助が先だ!」

 大砲を使えばひとたまりもないぐらいの老朽した漁船ばかりで、商船を襲っていたのだと思ったら、前ロヴァニエ子爵は情けない男だ。

「フェイを船首に連れて来い!」
「はっ!」

 アーロンが向こうから、フェイを見つけられる様に、と立たせると、向こうもフェイを見つけてくれた様だ。

【フェイだ!無事だったみたいだぞ!】
【フェイ!捕まってるぞ!】
【フェイ、お願い攻撃を止めさせて】

 レイラは向こうの攻撃範囲内に入る前に、フェイに止めて貰う様に話た。

【攻撃は止めろ!俺はお前達と話する為に戻ってきたんだ!攫った女達と子供達を集めるんだ!】

 海岸でざわざわとする海賊達。
 敵と見なしている相手と一緒の仲間を見て、動揺を隠せない様だった。
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