何故、私は愛人と住まわねばならないのでしょうか【おまけ】

Lynx🐈‍⬛

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 レイラ達が島に上陸すると、健康体の人数の少なさに驚いた。
 何かしらの病気を持っている男達が多かったのだ。
 健康体の男達は、攫った女を組み敷いていたが、寝込んでいる者も多い。

「船医に見せろ!病原菌持ちが居ないかを早く確認させるんだ!」

 攻撃して来る者も居て、そういう男達には拘束したのだが、それでも彼等はウジやシラミが湧き出ていたり、と衛生面もとても悪かった。

【フェイ!お前何で敵と一緒に居るんだよ!】
【……………俺達は犯罪を犯したんだ……吊るし首で処刑されるより、この島で病気で死ぬより、俺は生きたい…………人間として……】
【フェイ、何故貴方………病人も居ると話さなかったの?】
【助けてくれるとは限らねぇだろ………看病させる為にも女攫ったんだ………女が居りゃ、最後女抱けて死ねるじゃん………】
【馬鹿なの!】
【っ!】
【こんな不衛生の場所で、何の病気を持ったか分からない所で、それが貴方の………貴方達の幸せなの?素直に助けを求めたって、良いじゃないの!言葉が通じなかったから考えなかったかもしれないけど、今通じてるでしょ!女性や子供達を攫って、解決しようなんて馬鹿でしかないわ!】

 レイラの怒鳴り声で、アーロンも駆け寄って来ると、直ぐにフェイから離された。

「如何したんだ!何があった!」
「……………悔しくて……女性攫って、彼等を看病させて、慰めに使われて………病気移される事も、移す事も考えつかないこんな人達に、私達の領地が悩ませられてたなんて情けない………」

 レイラが知らなかったのは仕方がないにしても、父の前ロヴァニエ子爵が海賊対策に力を入れていたら、こんな無駄な死を迎える人は少なかった筈だ。
 点在する墓標もあり、それだけの人が母国に帰れず海賊をしながら、悔しくて死んだに違いないのだ。

「…………アーロン様……墓標に眠る人達も、あのままにはしたくありません………」
「…………墓標なのか?あの印は」
「…………多分、そうです………病人が多いですし、フェイは女性達を慰めだけに攫ってない、と言ってましたから………病人の看病をさせるのを考えて………」
【お、おい…………泣いてるのか?】
【触るな…………反吐が出る………だが、助けてやるからこれを機に海賊は辞めるんだな………】

 フェイは泣くレイラを心配して、近くに来ようとしたが、アーロンはフェイを拒んだ。
 フェイが泣かした訳でも無いのに怒るのは、レイラから聞いた話を信じたからで、フェイ達の生き方への嫌悪感だ。

【…………助けてくれるなら辞める………皆にも辞めさせる】
「そうしてくれ………お前だけでなく、皆医者に診せろ………異臭も漂ってるんだ、何かしら体調不良は皆ある筈だ…………頼む、訳してくれ」
「は、はい…………」

 アーロンも分からない単語は、言葉に出来ず、レイラを頼った会話になったが、フェイも意図は分かった様だ。

【有難く、医者に診て貰うよ………】

 それからフェイにより、仲間達に説明されると、無人島生活から解放された安心した顔がちらほらと見えた。

「君の親父さん、また罪を重ねたな」
「……………知らなかったじゃ、済ませたくないですが………悪意があったから、では無いと思います。臆病風に吹かれた結果でしかないですよ」

 対策をしなかったから、領主の地位を剥奪されて、罪として処理されているのだ。
 もう、前ロヴァニエ子爵にその責任は問えないかもしれない。
 もしそうなれば、娘であるレイラが、これから変えていけばいい。
 彼等以外に、また海賊騒ぎが起きないとも限らない。
 フェイ達の事はその中で留めれば良いのだ。
 移民となるだろう彼等の処遇は、これから考えなければならなくなるが、アーロンが証人になるので、任せるしかない。

「……………言葉も違う彼等が、住み続けたいと言ってきたら、陛下はどう思われると思いますか?アーロン様は助けようとしてますが」
「レイラは助けたいと思ったんだろ?だから俺はその思いを叶えるだけだ………まぁ、前ロヴァニエ子爵の無能振りをまた露見しないとならなくなるとは思うが」
「……………これでは、私がロヴァニエ子爵を継承した意味無くしません?」
「レイラは解決しただろ…………親父さんは放置だ。意味は違う…………そんなに曰くが気になるなら、子爵地位を返上し、もうオーヴェンス公爵領にするか?」

 ロヴァニエ子爵領をアーロンのオーヴェンス公爵領にする案もあったのは覚えているが、アーロンが簡単に軽く言うので、レイラは驚いた。

「え!……………アーロン様は国政に携わるのに、それには首都と此処は離れ過ぎます。今迄以上に多忙になりますよ?」
「レイラの傍に居られるなら、領地に引き篭もっても良いぞ?」
「エルリック殿下が怒ると思います。それにお義母様だって」
「母上は、此処を気に入ってるから、喜んで来ると思うぞ」
「……………とりあえずは、先ず陛下に報告してからですよ………」
「まぁ、そうだろうな」

 無人島の墓標の供養も含め、処理には時間も掛かり、再びアーロンがロヴァニエ子爵領と首都の往来が頻繁になってしまった。
 元々、数日毎での往来だったのもあるが、日によっては1日も居ない日が多くなったのは、分かりきった事だった。

「一瞬で場所を移動出来るアーティファクトがあれば、絶対に欲しい…………」
「魔法具は貴重品ですよ………私達は魔法を使える国からアーティファクトを買ってるんですから」
「誰か、本当に作ってくれないかな………そうしたら、レイラに会いに来る時間を短縮出来て、レイラと愛し合えるのに………」

 移民制度の法案も検討を始めた国政。
 その忙しい中に、ロヴァニエ子爵領に帰ってきたアーロンは、レイラを抱いてからそんなボヤキを残した。

「…………実は………言いそびれましたけど、今日私、お医者様に確認してもらったんです」
「医者?…………何処か悪かったのか?」
「……………いえ…………悪いというか………なし崩しで、アーロン様とシてしまいましたけど………もう直ぐアーロン様はお父様になりますので、これからも頑張って下さいね」
「……………え!」
「第一子ですよ、アーロン様」
「レイラ!」

 抱き合ってから、アーロンは後悔の念に苛まれたが、その後レイラの胎の中の子には異常はなく、上機嫌でロヴァニエ子爵領から、首都に住む母のケリー夫人やエルリックに報告書の様な分厚い手紙を送り、暫く首都に帰らない旨を書いたのだった。



        ❦ℯͷᏧ❧
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