4 / 100
レングストン
しおりを挟むラメイラが、レングストンに以前来たのは10歳の時の4年前。
華やかな街並み、朗らかな人柄、国民を想い皇帝を敬う豊かな国。
ラメイラにとって初めて来た外国で、何もかも新鮮で楽しかった。
今回はどんな事を経験するのだろう、と胸をときめかせ、王都に入ると街中は皇太子の結婚式の準備に忙しく賑やかだった。
「もうすぐだねぇ、皇太子殿下の結婚式は。」
「どんな方だろうね、お相手の令嬢は。」
「そりゃ、綺麗な皇太子だ、綺麗な令嬢じゃなきゃ国中の女達の嫉妬を買うさ!」
そんな声が馬車の中迄聞こえる。
「リュカの妃………ねぇ、あのすました上辺だけの仮面男が、愛を囁くとは思えないや。」
ラメイラの記憶の中のリュカリオンは、冷たい笑顔しか作らず、何処か女に対して嫌悪感を滲ませていた。
裏表が無いラメイラには、リュカリオンの嘘の顔はよく分かっていて、弟達の前だけは、満面の笑みを見せて、それがリュカリオンの本当の顔だと知った。
そのギャップにラメイラは入れる訳にはいかなかった。
それだけ、闇を持つリュカリオンが怖かった。
皇太子として、忙しくしていたリュカリオンとはそんなに会える訳ではなく、弟のトーマス、タイタス、コリンと直ぐに仲良くなり、そこにリュカリオンが加わって、ラメイラがリュカリオンの嫌いな女のタイプでないと分かると、同じように接してくるようになったのだ。
リュカリオンにとって、ラメイラは弟のような感覚でしかないが、妃がラメイラの事をどう思うのか、が心配だった。
ラメイラは自分を押し殺すのだけはしない、そう決めてレングストンに来たのだから………。
王宮に付き、レングストン皇帝と皇妃に挨拶に来たラメイラ。
「お久しぶりぶりでございます、レングストン皇帝、皇妃様。トリスタン公国、ラメイラでございます。この度は皇太子殿下リュカリオン様のご結婚、誠におめでとうございます。」
「ラメイラ公女、久しぶりですな。皇太子の結婚祝いの贈物も頂き、嬉しく思います。長旅疲れたでしょう、王城では寛ぐには息苦しさを感じるかと思い、皇女宮の一角を用意しました。そちらでゆっくり過ごされよ。」
「お心遣いありがとうございます。」
謁見の間には、皇帝、皇妃、側近の一人が控え目に待機していた。
「ところで、ラメイラ公女。あなたは我が息子達の妃候補として、留学を希望した事は間違いはないのかな?」
「はい!私はタイタスを口説きに来ました。」
「……………。」
「……………。」
「……………。」
ラメイラの目の前の3人は目を見開く。
そして、側近の男が………。
「プッ…………し、失礼しました、あまりにも率直で……。」
「公女は、以前から率直な意見を述べていたからな……変わらぬようで安心した。」
「本当に………クスクス。」
「え?…………あ、あの……。」
怒られるかと思った沈黙が笑いで良かった、と思ったラメイラ。
「タイタスを口説けるか、楽しみにしている。私は息子達を幸せにしてくれそうな令嬢しか迎え入れん。トリスタン公国へ書状を送り、返事が来た事に安堵した。子供の頃の公女を見て、息子達の誰か、と思った。皇太子の妃がやっと決まり、次は其方をとな。」
「リュカ………いえ、皇太子が望んだ結婚なのですか、相手の令嬢は……。」
「どういう意味でかな?」
ラメイラが思ったのは、リュカリオンの結婚は政略結婚的なものだと思っていた。
あの闇持ちの皇太子は壊れ掛かっていたのに………。
「皇太子には、闇がありましたから……。」
「…………もう皇太子には闇は無い。公女も会えば分かる筈。子供の時に気が付いていた者が居たとはな、宰相。」
「そうですな………皇太子殿下は大人達の前では隠されてましたから……。」
(………宰相、というと、国の最高幹部……。)
ラメイラは宰相の顔をよく見ていた。
「如何されましたか?私の顔が何か?」
「あ、いえ、宰相には今後お世話になる事が多いだろうな、と思っただけです。」
「そうだろうな、宰相のウィンストン公爵の娘が、皇太子の婚約者だからな。公女であれば、ナターシャ妃と仲良くなるだろう。」
「そう思います、娘は裏表が無い人間は好きになりますから。」
(…………ナターシャ妃、というのか……。)
皇女宮に案内されると、トリスタンの侍女達がほぼ片付けを終えていた。
「疲れたぁ……。」
ベッドにそのまま寝転ぶと、余程疲れたのか直ぐに眠ってしまったラメイラだった。
1
あなたにおすすめの小説
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
ズボラ上司の甘い罠
松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる