私が欲しいのはこの皇子!【完結】

Lynx🐈‍⬛

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お行儀見習い【ナターシャ】

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 数日後、ナターシャが勉強の教師として、皇女宮にやって来た。

「今日は刺繍をしましょう。」
「し、刺繍………。」
「あら、嫌そうなお顔………クスクス。」
「避けてたものだから、これからも避けたいな……。」
「練習あるのみですわ!」

 針と糸、布を出し、ラメイラに渡すナターシャ。

「先ずは、針に糸を通して下さいませ。」
「………………くっ…………………あ、あれ?如何して通らない?」

 ラメイラが必死で針に糸を通す姿が滑稽で、侍女達は笑いを堪えていた。
 しかし、ナターシャは一生懸命のラメイラに笑わない。
 ナターシャは侍女達に目を配らせ、笑いを止めさせる。
 あぐらをかき、お行儀は悪いが必死なのだ。

「やった!通った!」
「素晴らしいですわ。」

 ナターシャは拍手をラメイラに贈る。

「は、恥ずかしいよ!ナターシャ!止めてくれ!」
「如何してですの?初めて針に糸を通せたんですよ?初めてなら、四苦八苦するのは当たり前ですわ、慣れれば早く通せると思いますが、刺繍で針に糸を通す事に早さなど関係ないですから。」
「それは、そうなんだろうが………。拍手されると……。」

 刺繍は嫌いだが、ラメイラはナターシャと話をする楽しみがレングストンで増えた。
 妃になれなくてもナターシャとの交流は続けたいと思ったラメイラ。
 そして、話をしていると気が付く、ナターシャの首にうっ血痕。

(………結婚するんだ、そりゃあ付くよな。)

 ラメイラも閨には興味はある。

「ねぇ、リュカ、て上手い?」
「何がですか?」
「え?閨。」
「!!………な、な、何て事聞くんですか!!」
「だって気になるし……ほら、ソコ。」

 ラメイラは自分の首筋にチョンチョン、と突付く。

「!!…………見ないで下さい!!」
「仕方ないじゃない、見えるもの。」
「………お化粧で隠しきれてなかったんですね……まだ結婚式前なのに……。」
「あと1ヶ月ぐらい先だっけ?」
「あと3週間ですわね。」
「我慢出来なかったんだね、リュカ。」
「…………わたくしが、リュカ殿下に怒ってたのが…………むにゃむにゃ……。」

 ナターシャが珍しく歯切れの悪い発言をする。

「喧嘩でもしたのか?」
「………喧嘩はしてないですわ、ただ殿下がわたくしの言葉を信じず、同じ事を話た兄の言葉を信じたもので……。」
「あぁ、カイル?」
「いいえ、カイルお兄様ではなく、長兄のセシルお兄様ですわ。」
「まだ兄上が居るのか?」
「はい、3人兄妹ですわ。」
「カイルと少し話たが美男子だな、彼は。セシルも美男子か?」
「どうですかね………女性には人気あるようではありますね。」

 ラメイラの興味は尽きる事がなく、ナターシャに質問ばかりし始めた。
 その分、手元には針も布も放置しているラメイラ。

「ラメイラ様、手が休んでますわよ?やりたくないのが丸わかりです。」
「…………気が付いたか……はぁ……仕方ないやるか。」
「頑張って下さい、ラメイラ様。」

 ラメイラはナターシャから簡単なスティッチを教えてもらうが、なかなか上手く出来ない。

「難しいなぁ……。」
「初手のは仕方ありません。練習して上手くなるものなので……乗馬もそうですよね?」
「そうだな。もう少しやってみるよ、ナターシャが教えてくれるし。」
「では、宿題ですね。来週のわたくしの時間の時迄、進めておいて下さいね。」
「う………分かった。」

 ナターシャは結婚式の準備もあるが、皇太子妃として、公務もあるとかでラメイラとの時間を終わらせた。

「ナターシャが居なくなると、暇になっちゃうんだよなぁ……。もう少し話したい。」

 ナターシャが置いていった裁縫道具が、ラメイラの心のように、寂しさを物語っていた。


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