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新たな花嫁候補
しおりを挟む衛兵の葬儀が終わり、リュカリオンはナターシャの懐妊を国内に発表した。
懐妊というおめでたい発表に、王城で起きた不幸な出来事から一層し、明るい雰囲気に戻った王宮。
そんなめでたい中、リュカリオンとナターシャは皇太子と皇太子妃として、皇帝から呼び出された。
「父上、お呼びでしょうか。」
「皇帝陛下、皇妃殿下、ご機嫌麗しゅうございます。」
ナターシャが一礼してリュカリオンの一歩後ろに立つ。
「ナターシャ妃、お腹の子は順調か?」
「はい。安定期に入ったようで、すくすくと育ってくれているように感じます。」
「先日の件で、心も辛かったでしょう、お子にもナターシャ妃にも何も無くて安心しました。本当に辛い……。」
皇妃も話を聞いて、心を痛めたようだった。
「亡くなった衛兵には感謝しています。妃と子を守ってくれたので。」
「うむ、その感謝の気持ちを忘れるでないぞ?」
「勿論です。」
「………ところで、今日呼び出したのはその事ではないのだ。来月また新たな妃候補の令嬢を迎え入れようと思う。その令嬢はまだ幼いので、滞在期間は短く、定期的に来られる王女だ。」
「何方の王女ですか?」
「アードラだ。」
「アードラ………コリンの相手に、ですか?」
「歳からして、コリンに、と思っている。」
レングストンの隣国の一つアードラ。
リュカリオンとナターシャが結婚した頃から、内戦が起きるのでは、と思われる小競り合いが始まったという。
コリンと同じ歳の王子が居て、現国王が病いに倒れ、王位継承の争いが始まった。
王子の妹、アリシア王女を王位継承の争いから守る為に、一時避難場所として名目上レングストンへ留学するという。
王子が成人していなかったからの、王位継承権争い。
正妃の父の身分が低く、側室の父の身分が高い為、側室の父が後押しする、国王の弟との政権争いだった。
「よく、この時期に留学しようとしますね、アリシア王女も心細いのでは?情勢も良くないのに。」
「アードラの国王の希望だ。側室の父が推す王弟は、実権を握ったらアリシア王女を側室に入れるか殺害するだろう、とな。国王はアリシア王女を他の王女よりも殊の外可愛がっている。第一王子のアルフレッド王子は第一王位継承者でこちらには来れん。男子はアルフレッド王子と王弟が推す側室の産んだ第二王子との権力争いもあるのでな。」
「13歳でしたよね、アードラは確か18歳で成人………あと5年もありますよ?」
「留学は定期的に、と言われたが恐らく戻らない方がいいだろうな。」
「情勢を見て、という感じですね?」
レングストンと内戦が起きるのではと不安定なアードラ。
聞いているナターシャには、ピンと来ない話。
「アードラのご正妃は中継ぎの女王にはなれないのですか?レングストンでは、皇帝の代理で皇妃が中継ぎになれる法がありますでしょう?」
「その法はアードラには無い。あったとしても、正妃にその力があるかどうか……。」
「アードラの側室に権力がある、て事ですね?」
「そのようだ………。」
皇妃の疑問に答える皇帝は、今のアードラを心配しているようだった。
国交もある国でもあるが、政権交代に問題があると、国交も覆される事もあるのだ。
「だから、我々の結婚式にアードラの使者が来なかったのか……。」
「その頃からアードラ内は不穏な情勢だったからな。」
「なるほど……。」
「ナターシャ妃。」
「はい。」
「アリシア王女はまだ幼い。こちらに居る間、気を配ってやって欲しい。」
「はい。わたくしでアリシア様が心休まれてるなら……。」
「頼む。」
謁見の間を出て、そのまま執務室に行くつもりだったナターシャ。
「ナターシャ、今日は休んでいいよ。」
「え?」
「ラメイラにも今の事話ておいて欲しい。多分、皇女宮に入るだろうし。」
「わたくしは皇子宮だったのに、ラメイラとアリシア様は皇女宮、て…………。」
「……ごめん、ソレ俺の我儘だったんだよ。お茶会の花だったナターシャに皇子宮から王庭を見てもらいたかった……。ナターシャと初めて会った庭をいつも窓から見てたから。」
「…………。」
照れた顔で、暴露したリュカリオン。
「許しませんわ。」
「え!!」
「……………くす。」
ナターシャがリュカリオンの服の裾を掴む。
「…………………。」
「!!」
「では、ラメイラの居る皇女宮に行きますわね。」
『愛して頂きありがとうございます。』と耳元で囁いて微笑むナターシャ。
衛兵が傍に居たからか、その頬は赤らめて去って行った。
(…………今のは反則っ!)
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