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人形のような王女アリシア
しおりを挟むアードラのアリシア王女の話から2週間程経った頃、レングストンの軍服とは違う軍服の兵士達が疲れきった表情で到着した。
怪我人も数人居り、レングストンの衛兵達を驚かされた。
「我等、アードラ国アリシア王女の護衛兵である………レングストン国皇帝にお取次願いたい……。」
疲れた表情の兵士達を見た、軍の隊長であったタイタスがアードラの一行を迎え入れた。
「さぞ、お疲れの事でしょう。レングストン第三皇子タイタスです。軍の宿舎に部屋を用意してあります。ゆっくり身体をお休め下さい。王女アリシア様、侍女の方々は王宮内に部屋をご用意しております。先導致しますので、馬車毎お越し下さい。」
「馬車毎、ですか?」
「はい、ここは王城、奥に宮が数件あり、そちらの宮に馬車が横付け出来ますから。」
「それは有り難い。」
「では、こちらに……。」
タイタスは馬に乗り、王宮の奥に案内する。
その光景を馬車の中からアリシアは見ていた。
(お兄様のご友人のコリン殿下のお兄様かしら……。雄々しい方……。)
暫くすると、皇女宮に着いた馬車。
「こちらが皇女宮です。只今トリスタン公国公女、ラメイラ様が留学中ですが、彼女はアリシア様が来られるのを楽しみにしておりました。」
「他の公女様と?」
「はい、皇太子リュカリオンが交流も兼ねて同じ宮のが良いのでは、と。」
「…………タイタス殿下……他の姫と寵を争わせる、と言われるのか?」
「え?いえ、そういうつもりでは決して。」
「アードラは正妃以外、側室を設ける国……寵を競わせるように、後宮の中に何人も居ります。まだアリシア様は未婚の王女、それを後宮の様な宮に部屋等!!」
「いえ、後宮としての扱いではなくて……。」
従者の見解はアードラ内の知識からの尺度でものを言っている。
「従者様、アードラの国内の様な扱いと感じ取られた事、申し訳ありません。」
タイタスが返答に困っていると、侍女や衛兵に守られながら近付くナターシャの声に、タイタスや従者達が振り向く。
「ナターシャ、どうしてここに?」
「アリシア様が来られると伺っていたのと、ラメイラとの勉強の時間なので、皇女宮に来たのです。」
タイタスに微笑んだ後、アリシアの従者に向き、ナターシャは続ける。
「申し遅れました。わたくし皇太子妃ナターシャでございます。誤解のないように申し上げますが、この宮は皇帝の子が住む宮でございます。レングストンは一夫一妻制、後宮もございません。もし、それでも不快であるなら、別邸を用意してもらえるように、わたくしから陛下にお願い致します。」
「ロバート、他国に来て迄アードラの生活を強要する事もないでしょう。」
「アリシア様!馬車を勝手に降りる等!」
馬車から幼い王女が恐る恐るドアの陰から顔を出して、立派な言葉を言う。
言葉と行動が伴っていない。
「は、初めてお目にかかります。アードラ国王女、アリシアでございます。皇太子妃様、タイタス殿下。」
「アリシア様、ナターシャと申します。気軽に名前でお呼び下さい。」
「宜しくお願い致します、ナターシャ様。………ご懐妊、ですか?」
「はい。この子共々仲良くして下さいね。コリン殿下もその内お顔を見に来られると思いますよ。アリシア様のお兄様のアルフレッド様のご友人ですから。アルフレッド様とのお話をしたいのではないかしら。」
「…………わたくしもお兄様のお話したいです。」
「長旅で皆様お疲れでしょう?とりあえず、こちらの宮に部屋を用意しておりますので、今日はこちらでお休み下さい。」
「…………ロバート、わたくしこちらで大丈夫よ。アードラとは違う環境にもなれなければ。」
「………分かりました。アリシア様、もし無理なら仰って下さいね!」
「分かってます。」
ロバートという従者は過保護ではないか、と思う程心配をしている。
「セリナ、お部屋にご案内お願いね。」
「はい、こちらでございます。」
次々と荷物が運ばれていく。
「ナターシャ、さっきは代弁ありがとう。」
「いいえ………あ、ラメイラの部屋に行かなければ!失礼します、タイタス殿下。」
「あぁ……。」
ナターシャが皇女宮に入って行く後ろ姿を見送り、タイタスは呟いた。
「家族として愛せ………か。居るのかねぇ……俺だけの女……。」
タイタスは知らない………。
巡り巡って、タイタスだけを愛する者が居る事を……。
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