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お行儀見習い【タイタス】②
しおりを挟むラメイラは意気込んで、サロンにやってきた。
予め、ナターシャには遅れて来て欲しい、と言っていたラメイラ。
「え?タイタス殿下に告白するのですか?先週では躊躇っていたのに……。」
「うん、でもウジウジ悩むのは、私の性に合わないんだ。」
「分かりますけど………今日お勉強出来ます?タイタス殿下は感情で教え方変わる方だから……。」
「…………でも、トーマスにも申し訳ないから、気持ちをスッキリしたいんだ。」
「分かりましたわ、わたくしは遅れてサロンに入りますわね。」
「うん、ありがとう。」
サロンに来る前に皇太子邸に寄り、皇子宮に入る。
ドアの前で深呼吸するラメイラ。
「何してんだ?入らないのか?」
「!!……タイタス!!」
「どうした?」
「あ、いや………何でも無い!」
「なぁ、今日馬乗らね?」
「へ?」
ドアを開けようとしたラメイラの後ろから、タイタスが声を掛けた。
「いや、さっきナターシャが行けない、て言ってきたから、馬にしようかな、て。お前骨折完治してから乗ってないだろ?」
「う、うん!ダンスより絶対に馬がいい!!」
「じゃ、行こうぜ。ナターシャが厩舎には伝えてくれてる筈だから。」
「え?ナターシャが?」
「そう、行けないからその代わりに馬はどうか、て提案したのはナターシャ。今、ナターシャ付の侍女が言いに来たんだよ。」
(…………ダンス……する気力も無くなるかも、て心遣い…………有り難いなぁ……。)
「その代わり、ナターシャがラメイラに『頑張って』て言ってたけど、何だ?頑張れって。」
「…………さ、さぁ?久しぶりだからじゃないかな……。」
ラメイラは厩舎に急ぐ。
タイタスに告白するタイミングはここではい。
「あ、おい…………せっかちだなぁ……。」
タイタスもラメイラの後ろを追い、タイタスの足はラメイラの足に追い付くと横を歩く。
「!!」
「何びっくりしてんだよ。」
「あ、いや急に隣で歩くから……。」
「変な奴、昔はよく並んで歩いたじゃないか。」
「そ、そうだね……。」
(………やっぱり……ドキドキする……タイタス……私を見てくれる………かな……。)
厩舎から馬を出し、馬を出し乗り回すラメイラとタイタス。
「相変わらず乗り手がガサツだと走り方もじゃじゃ馬だな!」
「久しぶりなんだからいいじゃないか。乗れなかったんだから!」
しかし、そのラメイラが乗る馬が、木の枝から飛び出した鳥に驚き、ラメイラは振り落とされた。
「きゃっ!!」
「ラメイラ!!」
「うわぁ、びっくりした………。」
「大丈夫か!!また怪我してないか?」
タイタスも馬から飛び降り、ラメイラの傍に駆け寄る。
「うん、大丈夫。落ち葉がクッションになったから………。」
タイタスはラメイラの肘を持ち、引っ張り立たせた。
それがまたタイタスに抱き締められるような密着度。
「意外に華奢なんだな、ラメイラ。」
「…………胸、無いからな……。」
「誰と比べてんだ?」
「ナターシャ?」
「ナターシャと比べるなよ。ラメイラに胸無かったとしても、いい所あるんだから。」
「………例えば?」
「………う~ん、明るい、前向きな所、打たれ強さ………。」
性格的な褒め言葉はでるが、外見の褒め言葉は一向に出て来ない。
「なぁ、顔は?」
「顔?ラメイラの顔?………美人ではあるかな、とは思うけど?」
「………タイタスは………私を女として、見てくれてるのだろうか?」
ラメイラは次第に顔を赤らめていく。
「…………女じゃないか。」
しかし、タイタスにはこの赤らめていく表情の意味を感じ取らない。
「性別の事じゃない!………私をは、は、は………。」
「?」
「…………伴侶として見れるかどうか、て!」
「………………え…………ラ、ラメイラを……?」
「私…………タイタスに会いに来たんだ……。皇子達の妃候補として………。」
「…………トーマス兄上じゃ………。」
「………トーマス……じゃない……ずっとタイタスが好きだった………。」
「………………。」
無言のタイタス。
照れている感じにも見えず、ラメイラはこれ以上気持ちを打ち明ける言葉は言えなくなった。
「……………ごめん……私の気持ち……迷惑だったかな……でも、知ってて欲しかったから……どっちになっても、前に進みたかったんだ……。」
「……………すまん、気付きもしてなかった……でも俺は………まだ……。」
「うん………知ってる。」
ラメイラはタイタスから離れる。
「………ごめん……。」
「何度も謝らないでくれる?前に進みたかった、て言ったでしょ?………トーマスとの事考えてみる。」
「…………え?トーマス兄上だって、ナターシャを………。」
「………昨日も私を『本気で口説く』て言ってた。兄みたいで好きは好きだけど、伴侶として好きになるかは分からない。トーマスが私にどれだけ本気か見る事にする。」
「な、何でそんな手短に済ますんだよ!トリスタンでもラメイラを好きな男いる筈だろ?」
「トリスタンの一夫多妻制が嫌なんだ。」
「中には一夫一妻で、て男も………。」
「ヤダよ、そう言って結婚しても多妻が認められている法があるのは……。私は公女だ。父は一夫一妻だったが、そういう人は珍しい。結局子供が産まれなかったら、次から次へ子供欲しさに妻を娶る国だから。」
「…………そうか……。」
「レングストンは違うからな。私にはトリスタンに留まらなければいけないという確約はない。兄がトリスタン公国を担うし、弟も居るから……。」
「…………。」
「タイタス、そろそろ戻らないか?………そんな顔しないでくれ。私は気にしてないんだから。」
タイタスは悲観的な顔をしていた。
ラメイラは離れて草を食べている馬の手綱を引いて、自分が乗っていた馬とタイタスの馬を連れ戻してきた。
「ほら、手綱。」
「あ、あぁ。」
「だから、そんな暗い顔しないでくれ、タイタスに振られて、私の方が泣きたいのに泣けないじゃないか!」
「…………ごめん。」
「謝らない!!ほら、行くよ。」
馬に跨ぎ、颯爽と走り去るラメイラを見送る事しかタイタスは出来なかった。
『泣けないじゃないか』と言われ、一緒には戻れなかったタイタス。
遅れて厩舎に戻ったタイタスに、ラメイラはあっけらかんと笑い待っていた。
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