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ナターシャの出産
しおりを挟む数日後、朝から王城や皇太子邸が慌ただしくなっていた。
ラメイラは自室から見える皇太子邸の屋根を眺めている。
「ナターシャ、やっとかなぁ?」
「皇太子邸は慌ただしいですしね。先程皇太子邸の近くを通りましたら、ヴァン子爵が皇太子邸に入っていかれましたよ。」
「じゃあ産まれるのかな!」
「おめでたい事ですね!」
「見に行っちゃ駄目か?」
「それはおやめになった方が良いかと。」
ラメイラは待ち遠しくて堪らない。
一度や二度ではなく、行こうとしては侍女達に止められるのだ。
「やっぱり、皇太子邸の前で待ってる!!」
「ラメイラ様!!」
侍女の静止も聞かず、走ってラメイラは皇太子邸に向かってしまった。
「はぁはぁ………。」
「ラメイラ公女様、いかがされました?今日は皇太子邸に入れませんよ?」
「入れないの?」
「はい、妃殿下が出産の為に慌ただしく、皇太子殿下、ヴァン子爵と助手数人、侍女だけしか入れません。」
「やっぱり入れないのかぁ…。」
「当たり前じゃないか。」
ラメイラにリュカリオンが声を掛けた。
何故皇太子邸の外にリュカリオンが居るんだろう。
「何でリュカは外に居るんだ?」
「俺は父上と母上、宰相に知らせに行ってたんだが?」
「侍女や衛兵に任せればいいじゃないか。」
「………動いてないと不安でな。」
「そうなんだ……。」
「ラメイラは何しに来たんだ?」
「いや、心配で。」
「ここに居ても今日明日は入れないぞ?」
「見たいのに!」
ラメイラが楽しみにしているのは分かっているが、出産に体力を奪われるナターシャに気を使わせる訳にはいかないのだ。
ぐいっ。
「!!」
「ラメイラ、ちょっと話ある。」
「え?ちょっと!!…………トーマス?」
「ほっ………上手くやれよ、トーマス。」
トーマスに腕を捕まれ、皇太子邸の近くの邸に連れて来られたラメイラ。
「なっ!何すんの!!」
「お前ね……出産疲れでナターシャに気を使わせてどうするんだ?」
「そうなの?」
「………お前、直ぐ産まれると思ってたりしないよな?」
「え?直ぐ産まれるんじゃないの?」
余りにも無知過ぎて、トーマスは唖然とする。
「閨の知識はあるのに、子供を産む知識は無いとはなぁ……。」
「え?だって……兄上の子達は直ぐに産まれたけど?」
「人によるだろ………。」
「そうなんだ………で、ここ何処?」
「俺の邸。」
「は?皇子宮出るの?」
見回すとまだ改装中のようで、壁紙も剥がされ、家具も無い。
「俺の邸、と言うより、婚姻後の皇子の邸の一つ。」
「へぇ~。」
「で、さっきの話の続き。」
「へ?」
ラメイラが邸内を見回していると、トーマスが後ろから抱き締めてくる。
「トーマス!!な、何?」
抜け出したくて足掻こうとしても、抜け出せない力。
「ラメイラは子種が何処から入るか知ってるよな?」
「し、知ってるよ!放してっ!」
「じゃあ母のお腹で育った子が出てくるのは何処から?」
「え?お腹切って……。」
「………え?」
「母上がそうだったんだ。母上と弟の命が危ない、て言われて、お腹切って出したんだけど、その後別の病になって亡くなった。」
「じゃあ兄上の妻達の子供は?」
「お腹切ってじゃないのか?」
「違う……腹を切っての出産は本当に命が危ない時だけだ。基本的には、子種が入った所から出るの!」
トーマスの腕の中で足掻くのを止めたラメイラ。
「え!あの大きなお腹の子が!」
「そう、この中に育てる袋みたいな物があって、ココからその袋に子種を入れるんだ。」
「あっ!……何触っ……!!」
トーマスはラメイラの服の上からラメイラの足の付け根を触る。
ラメイラの服装は前開きで、今日は腰迄開けていた為、ズボンの間も触りやすい。
「そして、ココから出るんだ。人によっては長い時間苦しむ場合もある。長ければそれだけ体力が奪われ、母胎には辛いんだ。」
「やだぁ……触ら………んっ!」
「ナターシャがどうかは分からないが、今日明日に産まれた場合暫くはそっとしておいた方がいいんだよ。身体は直ぐに回復しない。」
「わ、分かったから放して……あぁっ!」
トーマスの腕の力が緩み、ラメイラはトーマスから抜け出す。
「な、何すんの!」
「本気だと言ったろ?」
トーマスはラメイラに触れていた指を舐める。
ゾクッ……。
「濡れてたな。」
「!!」
「………その顔で煽るなよ………直に触りたくなる。」
「トーマスは………私を妃にしたい……のか?」
「本気に妃にしたいと思ってるけど?」
「私の事…………好きなのか?」
「…………あれ?言ってなかったか?」
「聞いてない……。」
「言ったと思ってたけど……。」
トーマスはラメイラとのやり取りを思い出す。
そう、『本気で口説く』としか言っていない。
その瞬間、顔を赤らめたトーマス。
何故言わなかったのか、言ってなかったのか、全ては照れ隠し。
『本気で口説く』=『好き』と気付くと思っていたのだ。
一度は話の流れで言ったぐらいだ。
しかし、ラメイラに裏の言葉は通用しないのだ。
「ごめん……ラメイラ……俺は君が好きだよ。タイタスが好きなのは知ってるが、タイタスを忘れさせるぐらい、俺に夢中になって欲しくて、好きだと言ってなかった。」
「…………もう、タイタスにフラれてる。」
「え!?いつ!」
「アリシアが来て暫く経った頃。」
「ラメイラ………俺との未来を考えてくれないか?」
「…………私でいいのか?ガサツで女らしくないぞ?」
モジモジ両手の指を絡め、うつむくラメイラの顔も赤い。
「充分女の顔したラメイラに女を感じるけど?」
「そ、それ!?」
「大事な事だ……だがそれだけじゃないけどな。」
「何?他は。」
「それは少しずつ、な。」
バタバタバタバタ………。
「妃殿下ご出産!!皇女様お産まれになりました!!」
「!!」
「産まれたぁ!!」
ラメイラの表情が一気に変わり、外に出ようとする。
「待て!!まだ会えないって言ってるだろ!!」
「だって会いたい!!」
「…………とにもう………。」
ぐいっ。
「!!」
トーマスに引っ張られ、唇を重ねられた。
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