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宿屋は同室で
しおりを挟む王都からかなり進み、こじんまりとした街に着いたラメイラとトーマス。
「宿屋はバラけるが、何部屋か取れたらしい。今日は男は野宿でいいが、女性はそれではかわいそうだから、ラメイラの侍女達は宿屋に、ラメイラは俺に着いてきて。」
「私も宿屋に泊まれるのか?」
「当然だろ?侍女が宿屋に泊まれるのに、主人のラメイラを野宿には出来ない。」
「トーマスは?」
「……………。」
「………トーマスは?」
ラメイラは普通に心配して聞いたのだろうが、トーマスはラメイラの問に答えない。
「この宿だな。」
「はい。殿下とラメイラ様、数人の侍女はこちらに。」
「行こうか、ラメイラ。」
トーマスはラメイラの肩を抱き、宿屋に入る。
「警護は頼んだぞ?」
「はっ!」
ラメイラは不安が募る。
侍女達が、トーマスに荷物を渡すと、侍女達に告げる。
「夜明けには出発出来るよう頼む。」
「畏まりました。」
「この部屋と、あちらの奥の部屋をお使い下さい。奥の部屋が殿下方の部屋でございます。」
「!!」
「分かった。」
「わ、私………侍女達と一緒でも………。」
「ラメイラ様、おやすみなさいませ。」
「!!」
侍女達はササッと部屋に入ってしまった。
『売られた!』とラメイラが思った瞬間だった。
カチャ。
「ラメイラ、入るよ。………うん、悪くない。風呂に入っておいで。ここに着替え入ってる筈だから。」
「……え……?」
「何?閨する?抱いていいならそのままベッドに押し倒そうか?」
「お、お風呂入る!!」
ラメイラが慌ててバスルームに入って行くが、ドア越しにクスクスとトーマスが笑っていた。
(………緊張してるの分かってんだな……。仕方ないじゃないか……初めてなんだから……。でも………今夜……するのか?)
暫くして、ラメイラがバスルームから出ると、トーマスは軽装になっていた。
「俺も風呂入るかな。ラメイラ、髪しっかり乾かせよ、風邪ひく。」
「う、うん。」
「寝てていいからな。」
「え!!」
「…………何、シたい?」
「…………。」
ラメイラは首を横に振る。
「馬車の中で今日は触れるな、てお前が言ったんだぞ?」
「………あ……。」
「だから、寝てろ………俺が我慢出来てる内に。」
「う、うん。」
トーマスはラメイラと入替えでバスルームに入って行った。
(………ホッとしたというか、残念………というか……………あ、いやいや、何を思ってるんだ、私は……。)
髪を拭き乾かして、ベッドに入るラメイラ。
郊外にある宿屋のベッドだからか、普段使う皇女宮の高級ベッドと違い、硬く少し狭いベッド。
疲れた1日だったのに、ベッドに慣れないのもあり、なかなか眠れないラメイラ。
カチャ。
「!!」
「ふぅ………流石に寝たかな、疲れさせたし。」
トーマスは部屋の灯りを落とし、ラメイラの寝る横に潜り込むと、ベッドの中央を背にして眠るラメイラを後ろから抱き締めた。
「おやすみ、ラメイラ。」
耳元で囁くトーマスの声でラメイラはピクッと動く。
「起きてるな、ラメイラ。」
「………寝れないんだもん。トーマスが居るのに緊張して。」
「今日は何もしないから、抱き締めあって寝よう、ラメイラ。」
「何もしない?本当に?」
「約束は守る。」
「………ん。」
ラメイラはトーマスの方に向き直し、腕の中に入った。
「あったかい………トーマス。」
「………おやすみのキスさせて、ラメイラ。」
「………う、うん。」
ちゅっ。
「………軽くな。………深いキスすると、また俺勃ちそうだから……。」
「………勃……!!」
「もう、寝ろ!」
トーマスはラメイラの頭を抱え、顔を見せないように抱き締めた。
それが、ラメイラにはちょっとおかしくて、クスクスと笑うと、眠気が襲ってきて、ゆっくり眠れたのだった。
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