私が欲しいのはこの皇子!【完結】

Lynx🐈‍⬛

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ラメイラ帰郷

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 レングストンを旅立って約2週間、トリスタンの宮殿に午前中に着く為に、前日に街もあったが、街に泊まるとトリスタンの宮殿に着くのが夜になるからだった。

「ラメイラ、疲れてないか?」
「うん、大丈夫。」

 早朝、宮殿のある街に着き、朝食の為に街の屋台をブラついて、食べ歩きをしていたラメイラとトーマス。
 馬車近くで、侍女達が朝食を準備していたが、街の屋台に行きたい、とラメイラが言ったのもあり、トーマスが付き合っていたのだ。
 ラメイラは、トリスタンの土産をナターシャとアリシアに買っていきたかった。

「あ!コレ!ナターシャに似合いそうな髪飾り!………あ!こっちはアリシアに!………店主!この2つの髪飾りをそれぞれ贈り物として包んでくれ!」
「はいよ!高い品だが大丈夫かい?」
「気にしないよ、持ってるから。」

 ラメイラはお金を払い、とても満足そうにトーマスに話掛けた。

「この街の朝市好きなんだ。漁船が引き上げて来て、魚のニオイが街に充満して、賑わうから楽しくて、よく来ていた。その活気で、たまに装飾品の露天が並ぶんだよ。」
「そうか、活気があるし、皆明るいし……いい街だ。」
「あれ?公女様じゃないか?」
「ラメイラ様は留学中だろ?ラメイラ様があんなひょろひょろの男連れてる訳ないじゃないか!」
「………………行こうか……トーマス。」
「あぁ、そろそろ馬車に戻ろう。」

 郊外にひっそりと潜む馬車に戻ると、ラメイラはテントの中で準備を整える。

「トーマス、どうだ?」

 ウェールズ公爵家で着たドレスを再び纏うラメイラ。
 どうやら、そのドレスが気に入ったようで、時々着たいと言って袖を通していた。

「うん、綺麗だよ、ラメイラ。」
「へへへ………。」

 2週間の旅の間に、大分距離を縮めた2人。
 毎夜、肌を触れ合い、抱き締めて寝て、馬車で夜を過ごす時は寄添って眠る、そんな2週間。
 ラメイラはトーマスの腕に自分から絡め、身を委ねる。
 そんな2人の変化を侍従達は微笑ましく見ていた。

「さぁ、宮殿に行こうか。」
「うん。」

 再び馬車に乗り込み、宮殿に向かう。
 海沿いの高台にあるトリスタン公国の宮殿。
 海から入る風が木々を揺らし、ラメイラの髪を靡かせた。

「ラメイラは何でその長さなんだ?」
「髪?………長いと面倒だから、てだけで切ってただけだよ、濡れると乾かすのも時間が掛かるし。」
「子供の頃は長かったよな……。」
「うん、あの頃は伸ばさせられたんだよね……。」
「伸ばす気はないのか?」
「う~ん……この長さに慣れたからなぁ……伸ばして欲しい?」
「………風に靡く髪が綺麗だな、と思って。」
「か、考えとく。」
「うん、考えといて。」

 そんな会話をしながら、宮殿に着くと、エドワードが迎えていた。

「あ、兄上だ!!」
「ラメイラ!!」

 ラメイラは馬車から手を大きく振る。
 ガタイのいいエドワードを見たトーマス。

「これは、一筋縄で行かないかもな………。」
「ん?何か言ったか?」
「…………いいや、何でもない。」

 馬車が止まり、トーマスが先に出てラメイラをエスコートしようとするが、ラメイラが飛び出す。

「兄上!!久しぶり!!」
「ラメイラ!!元気だったか?」
(………おいおい……ラメイラ……。)

 エスコートされるのを忘れ、侍従が開ける前に自分で開けて降りたのだ。
 ラメイラも兄のエドワードも気にしない様子な為、トーマスも仕方なくスルーをする。

「はじめまして、エドワード公子。この度はこちらの都合に合わせて頂きありがとうございます。レングストン国、第二皇子トーマスでございます。」
「……………ラメイラ、父上も待っている会いに行こう。」
「うん。」
「皆も疲れたろう、今日からはゆっくり休め。」
(…………無視か、この男……。)
「トーマス、行こう。」

 ラメイラもエドワードがトーマスの挨拶を無視したのが気に入らないのか、トーマスの腕にしがみつくように組んだ。

「ラメイラ!!」
「兄上………トーマスの挨拶を無視するとはいい度胸だな。私がレングストンに行った結果が違う事に腹立つのだろう?兄上がそうなら父上も同じだろうが、私はこの結果に満足している。」
「そういう事です、エドワード公子。私には彼女しか居ませんし、ラメイラにも私しか居ません。」
「!!………は、恥ずかしい事、兄上の前で言うな!トーマス!」
「何で?ラメイラはそうじゃなかったか?」
「…………わ、私も同じだ………。」

 顔を赤らめ、トーマスの腕に更にしがみつき、エドワードから見えないように顔を隠すラメイラ。

「!!ラ、ラメイラが女らしくなってる!!何だ!!気持ち悪っ…………ぐっ!!」

 その瞬間、エドワードの鳩尾を1発殴りに行ったラメイラ。

「ラメイラ…………やめろ…。」
「だって!!」
「エドワード公子、後程こうなった過程はお話させて頂きます。それを聞きたいのは、ラメイラの父上も同じ筈、苛立ちもあるかと思いますが、どうか会わせて頂きたい。」
「痛…………いい1発だった、ラメイラ。トーマス皇子、すまない少し試させてもらった。腹立つ事には変わってないが、理由も知らずに無視した事許して欲しい。ラメイラが『女』を見せた事による兄からの嫉妬だ。」
「嫉妬?兄上でも嫉妬するんだな。」
「トーマス皇子、本当にこんな鈍い奴でいいのか?」
「鈍いのは今に始まった訳でもないので。」
「違いない!!はははははは!」

 応接室に案内されると、エドワードはラメイラを引き離す。

「ラメイラは部屋に戻ってろ。」
「何で?私も父上に会いたいのに。」
「お前には後で時間を作る。トーマス皇子と3人で話がしたい。」
「…………トーマス……。」
「殺される訳じゃないだろうから心配するな。」
「ははははは!!なかなか賢いな、皇子。」

 別れてもう会えなかったら、父と兄の仕業だ、とも取れるのだ。

「当たり前だ、トーマスは兄上みたいに筋肉馬鹿じゃない!」
「ラメイラ、変わったなぁ……。」

 エドワードはラメイラの頭をくしゃくしゃする。
 変わったとしても、妹は可愛いのだろう。
 なかなか終わらないので、トーマスは苛々し、エドワードの腕を掴む。

「その辺で終わりに………義兄上。」
「むっ!まだ貴様の兄じゃない!!」
「失礼しました。」

 トーマスは眼鏡を直す。
 ラメイラは、兄より一枚も二枚も上だと知った。

「部屋に行ってるから。」
「また後で。」
「うん。」

 ラメイラはトーマスと微笑み合う。
 それがまたエドワードの嫉妬心が沸くのだが、それは次の話。
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