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多忙の一日
しおりを挟むラメイラは婚約式翌日、皇太子邸にアリシアと刺繍の勉強に来ていた。
アリシアは終始ご機嫌斜めな様子でブツブツボヤく。
「わたくしも夜会出たかったぁ……。」
「レングストンでは14歳未満の女性は出れませんから……。」
「アードラでは出れたのに………。」
「アリシアは何で夜会に出たいんだ?あんなの晒者みたいなものじゃないか。」
布に針を刺しながら、会話が出来ないラメイラは、布と針を持ち、手際よく刺繍をするアリシアに聞く。
明らかに、アリシアの刺繍の腕は良く、ナターシャも教え甲斐があるのか、アリシアへ課した刺繍の出来栄えを見ては、チェックをしていた。
「アリシア様は夜会の何が好きなのです?」
「貴族達の似合ってないドレスに嫌味言えるから。」
「い、嫌味ですか?」
「だって、あからさまに似合ってないドレス来てる年増や若作りの女達が、男に媚び売る姿、て面白くありません?ナターシャお姉様。そんな貴族令嬢達が狙う令息達に、告げ口言うのが楽しみなんですよ、わたくし。」
ラメイラとナターシャの考えにも及ばない、毒持ち少女アリシアに唖然としてしまう。
アードラの名産茶葉の紅茶を飲み、澄ました顔のアリシアは、言いたい事を言う時は意気揚々と話、一区切り付いたら、直ぐに人形の様な愛らしさだった。
そんな会話をしながら、刺繍の時間を終えると、ラメイラはトーマスと城門迄来る。
兄のエドワードと弟のレックスが帰国するからだった。
「元気でな、ラメイラ。」
「うん、兄上もレックスも身体に気を付けて。」
「トーマス殿下、妹を宜しく頼む。」
「勿論です。世代交代で皇太子の兄上が皇帝になったら、私はウェールズ領の知事に就く予定です。そうなればラメイラもトリスタンとの行き来がしやすくなるでしょう。その時はまたビールを飲み交わしましょう、義兄上。」
「そうだな、飲めない振りして逃げないようにさせてやるよ。」
「バレてましたか……。」
「今度は負けないからな、また剣も交えよう。」
トーマスとエドワードは握手をし、馬車に乗り込んだ。
去っていく馬車を見送ると、ラメイラはまた感傷に浸る。
「ほら、行くぞラメイラ。これからウエディングドレスの仮縫いだったんだろ?」
「………はっ!そうだった!皇女宮に皇妃様も来るんだ!」
「俺は結婚式迄見れないから、好きな様に仕立ててもらえよ。………ウエディングドレスらしいデザインでな。」
「…………それって、私がドレス嫌いで突拍子無いデザインにするな、て意味?」
「他に何がある?俺好みのドレスにするか、ナターシャや母上に全て任せたいぐらいなんだから。……普段の服装には文句は言わない。だが盛装や公務時に切るドレスはラメイラ好みは流石になぁ……。」
「………わ、分かってるよ………ナターシャに意見聞きながら、ドレスのラインは決めてあるから、トーマスの心配は無用だよ!」
トーマスはラメイラの服装のセンスは信用をしていない様子で、ラメイラはムキになる。
その少し怒った顔のラメイラの頭をポンポンと叩いたトーマス。
「俺が驚くような姿を期待してる。」
突如、触れられた大きな手に、ラメイラは嬉しそうにトーマスに微笑んだ。
その笑顔は、王城内でラメイラを見た貴族の男達さえも魅了する。
ラメイラは着飾らなくても美しい顔立ちの公女。
ざわざわと、する貴族達から隠すように歩くトーマス。
「どうした?トーマス。」
「いや……気にするな。」
トーマスは、牽制でざわつく男達を睨むと、慌てて男達は去って行った。
(………今頃、ラメイラの魅力に気付いた所で遅い。結婚後もラメイラが見る男は俺だけでいいんだ。)
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