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しおりを挟む麗禾の部屋はぐちゃぐちゃだった。
新旧入れ替えられる筈だった、服や箱に入っている靴やバックが寝室の床やベットに散乱している。
「な、何この荒れよう………」
「お嬢、氷嚢ありますか?」
「え?氷嚢はありませんが、保冷剤なら……」
「頬の腫れ、手遅れですが冷やしましょう………冷凍庫開けますよ」
榊が麗禾の部屋に入って早々、麗禾の頬を冷やすのに、手当てしてくれようとしてくれたのは嬉しい。
「あ、ありがとうございます、気遣って下さって………」
「麗禾…………ほら」
「あ…………出してくれたんですか………ありがとうございます、黒龍さん………禿げちゃったな………」
「気に入ってたんだな、それ………」
思わず、大事そうに抱き締めてしまったが、このぬいぐるみは晄が取った物で、金も晄の金で遊んだクレーンゲームだ。いわば、プレゼントの様な物。
「…………初めての自分のぬいぐるみなので……母はぬいぐるみや人形が嫌いなので、実家にも置いてはいないんです………だから、家に居る時はいつもリビングに居るから、いつでも見られる様に、飾ってたんだけど………母が連絡無しで部屋に居たから、ちょっとひと悶着あって………庇って頂いて、ありがとうございます………」
「…………そうか………その事なんだが、お前を俺が預かる事になったんで、大学で必要になる物を今直ぐに纏めろ」
「…………え?な、何故……話が見えないんですが…………」
「話は車でしてやる。手伝うから持って行く物を言え」
何故、急に晄に麗禾が預けられる事になったのかが分からない。いくら結婚話があるとはいえ、麗禾は了承した覚えも無いのだ。
「今、して下さい!」
「お嬢、保冷剤を………今は若頭の言う通りにした方が賢明ですよ」
「っ!…………納得する事がそんなに駄目なんですか?車に乗ったら、帰してとお願いしても帰してくれる保障なんて、黒龍さんに無いでしょう!」
「お、知恵付いたじゃねぇか」
「揶揄わないで下さい!」
「…………詳しくは言うのは移動してから話してやる…………簡単に言えば、俺がお前を毒親から離してやった方が良い、と判断した………納得したろ?」
「…………出来ませんよ、それだけじゃ」
簡単過ぎて、納得出来る訳がなかった。
両親の目が届き難い場所に行くのは構わないが、その匿われ場所が晄の用意する場所なのが解せないのだ。
晄のテリトリーで匿われたら、直ぐに結婚させられそうなのも嫌だった。
「早く済ませたい理由は2つだ。1つは今言った事…………1つはトランクにあの朔也ってガキを入れたままだからだ」
「…………え!朔也が!」
「お前の問題を優先したから、1時間以上縛ったままトランクに入れちまってるんでな…………暴れるから縛ってるんだが、お前も話ししたいだろうし、先ずは此方を片付けてやらにゃ、アイツもしんどいだろ?」
「朔也に会わせ…………邪魔しないで下さい!通して!」
車に戻ろうと、保冷剤を放り出して、外に出ようとした麗禾は、榊に通せんぼされてしまった。
「お嬢、先ずは荷造りを………あのガキは部下達が見てます。ちょっと気絶させただけなんで、生命取ろうとはしてませんよ」
「ほら、さっさと荷造りしやがれ」
何だか言いくるめられた気がしないでもなかったが、晄と榊の連携プレーで、大学の勉強に必要な物は何とか荷造り出来た。
「何日ぐらいで帰って来れますか?」
「は?大学関係以外要らねぇだろ」
「え、だって着替えとかありますし………」
「着たくないもんは着なくて良い………俺が用意してやる」
「い、いや………自分で買いますから……あ、通帳持って行かなきゃ」
結局持って行く物はそれぐらいで、麗禾はぬいぐるみを持たされ、榊に荷物を運ばれてしまった。
「す、すいません……榊さんに持たせてしまって」
「いえ、構わないのでお嬢も、俺を使って下さい」
「使うだなんて………」
「俺が傍に居ない時は、榊を頼れば良い………空手や剣道の有段者で、国体にも出てる実力のある男だ。頭も良いしな」
「若頭と比べたら俺は足元にも及びませんよ。共に武道を極めてきましたので」
「頼もしいんですね」
車に戻ると、トランク内で汗だくになっている朔也が唸っていた。
「もう暫くこのままに居てもらうからな………此処で聞く話じゃない………組事務所に着いたら話をさせてやる」
「約束して下さいね、黒龍さん」
「俺もコイツに聞きたい事があるからな」
唸る朔也は、猿轡で何を言っているか分からなかったが、麗禾に助けを求めている様だった。
「車に乗れ」
「ごめんね、朔也………もう少し我慢して」
麗禾は直ぐに解いてあげたいが、捕まえられた朔也は黒龍組に良い印象等は無いだろうし、暴れる可能性もある。生命を取られる可能性のある状態では、麗禾も庇いきれなかった。
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