暗闇の麗しき世界へ【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 晄に連れられた場所は一等地のタワマンの最上階だった。しかも、目と鼻の先には、晄が働くホテルが見えている。

「す、凄い………」
「俺を誰だと思ってる」

 晄が誰であろうとも、タワマンの最上階に住む事自体凄いのだ。

「や、やっぱり…………私を帰らせて下さい………」
「駄目だ…………腹も減ってんじゃないのか?ケータリングを呼んで作らせた………フレンチは好きか?」
「……………食欲……無いです……気後れしちゃって………それに……今日色々あり過ぎて……」
「だからこそ、美味いもんを食うんだろうが………来い、冷める」

 僅かな時間で作らせる権力がある事も凄い。恐らく、自身のホテルからシェフを呼び、作らせたに違いない。実際にキッチンに立つのは、シェフ姿の男だ。

「では、支配人…………私はこれで失礼致します」
「あぁ、ありがとう………すまないな、急に頼んで………ボーナスは弾む」
「あはは…………それでこそ、貴方に付いて行くんですよ………こちらこそ報酬は嬉しいですからね」
「ホテル迄、送らせる………下の運転手に伝えてあるから乗ると良い」
「ありがとうございます」

 テーブルに並べられたフルコースはどの皿も食欲が唆られるが、この後の事を思えば食べる気にはならなかった。

「食べないのか?」
「……………食欲……湧かなくて……」
「飯、食っとかないと後がキツいぞ…………体力が持たん」
「っ!」

 まるで肉食獣を見ている様な勢いで、ステーキを口にする晄に、恐怖しかない。ミディアムレアに焼かれたステーキは、フォアグラだろうか一緒に口に運ばれていて、普段の麗禾ならフォアグラとステーキと一緒に食べるロッシーニ風ステーキは喜んで食べただろう。トリュフの香りもまた絶品に違いないが、とても口にする気分でもなかった。

「わ………私………嫌です………から……あ、貴方と………その………」
「はっきり言えば良い………セックスってよ」
「っ!…………わ、分かってるなら………女に手を上げるのと一緒なんですよ!」
「は?…………セックスは快楽だろうが………暴力は痛み…………セックスで痛みを伴うのは処女膜破る時や濡れてない時…………あとはSMプレイぐらいだ…………お前がSMに興味あるなら、付き合ってやるが?」
「っ!…………し、処女なんですから、SMに興味なんて無いですよ!よく知りませんし!」
「知らないなら教えてやる。セックス中にお前がSなのかMなのか………体感すりゃ分かるがな………因みに俺はSだ………ノーマルもアブノーマルも付き合ってやれる………だが、俺はSなんで、攻め専門だと思え…………弑逆性を唆りそうなら、加減出来るか分からねぇな」
「ひ、卑猥過ぎます!き、聞かれても平気なんですか!」

 部下達をドアに固めさせ、麗禾を逃がす気も無さそうな晄に、何故か榊は給餌するという中で、性事情の話を平気で口にする晄が信じられない。
 ナーバスになっても良い事なのに、口に出来る事に、マナーもモラルも求められないだろう。

「全然…………あいつ等だって、セックスぐらい経験してる。卑猥だと思わねぇ……そうだろ?榊」
「特には思いません。学生の保健体育で、セックスの話を聞くのは、お嬢もあった筈です」
「そうそう………ち◯ぽをま◯こに突っ込んで、胎ん中に精液ぶち込み、それが女の排卵日だったら、ガキを孕む、てのは、今じゃ小学生でも知ってる」
「っ!」

 それが怖いから、覚悟が女に要るし、妊娠も望まないから嫌なのに、連れて来られた時点で、達成する気満々なのは麗禾は嫌だった。
 好きになった人となら、喜んで足を開こう、と思っていたのに、晄にその感情が育たない。それどころか、好意より嫌悪が増している。
 選択肢を与えられて、麗禾はこの場に来ているが、後悔ばかりだ。
 卑猥な言葉も平気で言える度胸は麗禾にはなく、性器の名称を聞いただけでも、顔を赤らめてしまう純情さだ。セックスのセの字も言えない。

「本当に食わないなら、始めるぞ」
「え…………なっ!」

 晄はほぼ料理をたいらげて、ナフキンを丸めてテーブルに置いて立ち上がった。その瞬間、麗禾も身構えて、椅子から立ち上がると、一目散に玄関へと逃げようとする。

「逃げられねぇよ!」
「っ!」
「お嬢、お戻りを」
「っ!…………嫌っ!………ま、窓………あ、開かない!」
「最上階だぞ?簡単に開く様に出来てねぇ……しかも、防弾強化ガラスで叩いた所でひびも付かねぇよ」

 広いリビングダイニングで走り回っていても、晄は歩いて追い掛けてくる始末。しかも、榊もまた麗禾を追って来ると、直ぐに捕まった。

「い、嫌っ!放して!」
「お嬢、失礼」
「っ!や、ヤダ!外して!」
「榊、良いもん持って来たじゃねぇか」
「えぇ、必要になるかと」

 榊が麗禾を捕まえて、腕を取ると手首に手錠が掛けられたのだ。そして、晄に引き渡されてしまう。

「放して!」
「もう、お前は俺のもんなんだよ!」

 部屋の出入り口は、男の部下達に固められ、麗禾は手首に手錠を掛けられて、ダイニングテーブルに並べられた料理の上に、上半身を乗せられてしまった。
 そして、動けない様にカラトリーのナイフを手錠の鎖の隙間に刺し、テーブルに突き刺した。
 一口も食べなかったが麗禾の前に料理と並べられた気分になる。幸いにも晄の方は食べきっていて、衝撃で皿が浮き上がり、ステーキのソースだろうか、そのソースが麗禾の頬を汚した。
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