偽物の僕は本物にはなれない。

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あの人との出会いは大学生の時で、サークルの飲み会で知り合った。
趣味が共通していた事もあって一気に仲良くなりそれからは毎日と言っていいほど一緒にいて、遊んでいた。

そんな時彼が言ったのだ。

「…男を好きになったって言ったら、引く?」

僕はゲイでもなんでもなかったけど、僕は彼の事を好きになっていてそれを聞いた時僅かばかり期待してしまった。
まあ、それはすぐに打ち砕かれたんだけど。

どうして?と聞いた僕に彼は照れ臭そうに笑いながら、大学で美人だなんだと噂されている人の名前を出した。
ーーー気づけば目で追いかけている。
…確かにあの人は美人だし、かといってそれを鼻にかけたりもしない優しい人だ。好きになってしまうのも、わかる気がする。

「…そっか」
「…やっぱ、きもい?」
「え?あっ…いや、そうは思わない。恋愛は自由だよ」
「だ、だよな!やっぱ持つべきものは親友だ」

……それを聞いて僕は、全てを諦めた。
彼の親友でいれるなら、それでいいと。もしあの人と付き合って僕との時間が減ったとしても、親友なんだ。
なんて贅沢なんだろう。親友は、きっと死ぬまで親友だ。

「…それに、この際だから言うけど…」
「ん?なんだ?」
「…僕の好きな人も、男の人なんだよね…」
「は?」
「あ、でも彼方の好きな人じゃないから!…全然、真逆の人」

ついでに言っておこう。こうすれば多分、安心して友達という距離を置いてくれるはず。
僕の好きな人は目の前にいるけど、一生想いが通じ合うことはない。
ふ、と自嘲気味に漏れた笑みを慌てて引っ込めて彼方を見れば、ぽかんと口を開けて僕を見ていた。

…こんな顔でさえかっこいいなんて思ってしまうのだから、結構重症かも。

「…なに、どうしたの?」
「あ…?…い、いや…大和の好きな奴って……誰だ」

首を傾げればハッとしたように意識を取り戻し、とても低い声で聞いてきた。
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