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奏多ルート
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「ーー僕はまだ……正直、忘れられていないです…」
「それでもっ」
「でも!……もう、僕の中では終わっているんです…!」
「え…?」
僕は手を強く握りしめた。
この2ヶ月。何度も何度も彼方を思い出しては泣いていた。
消えることのない想いがきつくて、しんどくて。
だけどーー…。
「…この想いを終わらせる事が出来たのは……奏多さん。貴方のおかげなんです」
「お、れ…の…」
「あの日……泣いていた僕に優しく手を差し伸べてくれた。僕に、居場所をくれた……ずっと、側に寄り添ってくれていた」
いつも泣いていた僕の側にいてくれたのは、決まって奏多さんだった。
何か声をかけてくれた訳じゃないけど、僕が泣き止むまで隣にそっといてくれた。
泣き止んだ後、いつもごめんなさいと謝る僕に「お腹すいただろう?」と何でもないように美味しいご飯を作ってくれた。
そんな日々が僕を癒してくれて、いつしか彼方との思い出は奏多さんで一杯になっていた。
「まだ…奏多さんが好きなのか、よくわかりません。…だけど、それでも……僕は貴方の隣にいたいです。…だめ、ですか…?」
「そんなのっ…!!」
涙で滲む視界のまま奏多さんを見上げて言えば身体が軋む程強く抱きしめられた。
そっと僕も奏多さんの背中に手を回す。
「最初は、弱っている君をただ助けてやりたいという気持ちだった。小さな子供をお世話するような…そんな。……でも、いつからかな。君が不意に笑ってくれた時、俺が君を幸せにしたいと思ったんだ」
何かを思い出すかのように少し笑みを含んだ話し方で奏多さんは喋り出す。
…うん。僕も最初はお兄さんが出来たような気持ちだった。
「だけど君はいつも別の誰かを想って泣いていて…俺じゃ君を癒せないのかと心底悩んでいたよ。だから君が心から笑えるまで隣にずっといようと決めて、君の拠り所になれるようにと。……俺は、君の拠り所になれていたか?」
「っ…はいっ…!奏多さんがいなければ、僕は…僕は…!」
「大和、好きだ…!!愛している…!ずっと、俺の側で笑っていてほしいんだ!」
「ぼく、ぼくも……奏多さんの側なら笑っていられる気がします…!」
2人で見つめあいながら話す光景が面白くて吹き出すと、奏多さんもつられて笑った。
パチリと目が合ってお互い惹きつけられるように唇を合わせた。
…まだ好きなのかわからないって言ったけれど、僕の心はもう決まっていたのかも知れない。
奏多さんと付き合う事になった時、僕は彼方に会いに行った。
その時初めて彼方の気持ちを聞いてもし僕が逃げていなかったら、まだ…。
そう思ったけれど、きっとあのまま側にいても僕は罪悪感とかに押し潰されていたと思う。
何度も彼方に謝られて、僕もごめんなさいと頭を下げた。
そして、彼方に「俺が幸せにしてやりたかった。でも、大和はもう…。…幸せになってくれよ。…俺は、それが幸せだ」と言われた。
…僕はもう、彼方を振り返らない。
ずっと、好きな人がいた。叶わぬ恋だと諦めて、去った。
そんな僕を温かく、柔らかく包んでくれた大切な人。
僕はこの人となら何も諦めなくていいのかも知れない。
「やーまと!どうしたんだ、こんな所で。風邪を引くぞ」
「ん?…ふふ、ちょっと昔のこと思い出してた」
「昔のこと?…おいおい…恋人の前で昔の男の事思い出してたのかぁ?」
「え?ち、違うよ!…奏多さんが僕に告白してくれた日の事!…泣いてて可愛かったなぁって」
「そんな可愛い事いう口はこの口か?俺の口で塞いでやろう」
「わぁっ!…ん……っ、は……もう…」
「…ダメだ、大和が可愛すぎる。ベッドに連行しよう」
「え、ちょ…!まだ朝なのに…!」
「はいはい」
横抱きにされてまたベッドへと逆戻りをした僕は呆れたように息を吐いた後、腕を奏多さんの首に回して頬に口付けた。
「奏多さん、大好き」
「俺は愛してるよ」
****
当初の予定ではこのエンドはなかったんですが、いいキャラがうまれてしまい……こっちとくっつけたくて…。笑
何はともあれ、完結でございます!
後日談でも書こうかなと思いましたが、これで綺麗に終わった方がいいと思い直しましたのでこれにて終了です!
ネタが浮かんでから文章にするまで時間はかかりませんでしたが、終わり方に納得がいかず時間がかかってしまいました。
もしかしたら賛否両論あるかも知れませんが、読んでくださっただけで感謝です。
最後までお付き合いありがとうございました!
「それでもっ」
「でも!……もう、僕の中では終わっているんです…!」
「え…?」
僕は手を強く握りしめた。
この2ヶ月。何度も何度も彼方を思い出しては泣いていた。
消えることのない想いがきつくて、しんどくて。
だけどーー…。
「…この想いを終わらせる事が出来たのは……奏多さん。貴方のおかげなんです」
「お、れ…の…」
「あの日……泣いていた僕に優しく手を差し伸べてくれた。僕に、居場所をくれた……ずっと、側に寄り添ってくれていた」
いつも泣いていた僕の側にいてくれたのは、決まって奏多さんだった。
何か声をかけてくれた訳じゃないけど、僕が泣き止むまで隣にそっといてくれた。
泣き止んだ後、いつもごめんなさいと謝る僕に「お腹すいただろう?」と何でもないように美味しいご飯を作ってくれた。
そんな日々が僕を癒してくれて、いつしか彼方との思い出は奏多さんで一杯になっていた。
「まだ…奏多さんが好きなのか、よくわかりません。…だけど、それでも……僕は貴方の隣にいたいです。…だめ、ですか…?」
「そんなのっ…!!」
涙で滲む視界のまま奏多さんを見上げて言えば身体が軋む程強く抱きしめられた。
そっと僕も奏多さんの背中に手を回す。
「最初は、弱っている君をただ助けてやりたいという気持ちだった。小さな子供をお世話するような…そんな。……でも、いつからかな。君が不意に笑ってくれた時、俺が君を幸せにしたいと思ったんだ」
何かを思い出すかのように少し笑みを含んだ話し方で奏多さんは喋り出す。
…うん。僕も最初はお兄さんが出来たような気持ちだった。
「だけど君はいつも別の誰かを想って泣いていて…俺じゃ君を癒せないのかと心底悩んでいたよ。だから君が心から笑えるまで隣にずっといようと決めて、君の拠り所になれるようにと。……俺は、君の拠り所になれていたか?」
「っ…はいっ…!奏多さんがいなければ、僕は…僕は…!」
「大和、好きだ…!!愛している…!ずっと、俺の側で笑っていてほしいんだ!」
「ぼく、ぼくも……奏多さんの側なら笑っていられる気がします…!」
2人で見つめあいながら話す光景が面白くて吹き出すと、奏多さんもつられて笑った。
パチリと目が合ってお互い惹きつけられるように唇を合わせた。
…まだ好きなのかわからないって言ったけれど、僕の心はもう決まっていたのかも知れない。
奏多さんと付き合う事になった時、僕は彼方に会いに行った。
その時初めて彼方の気持ちを聞いてもし僕が逃げていなかったら、まだ…。
そう思ったけれど、きっとあのまま側にいても僕は罪悪感とかに押し潰されていたと思う。
何度も彼方に謝られて、僕もごめんなさいと頭を下げた。
そして、彼方に「俺が幸せにしてやりたかった。でも、大和はもう…。…幸せになってくれよ。…俺は、それが幸せだ」と言われた。
…僕はもう、彼方を振り返らない。
ずっと、好きな人がいた。叶わぬ恋だと諦めて、去った。
そんな僕を温かく、柔らかく包んでくれた大切な人。
僕はこの人となら何も諦めなくていいのかも知れない。
「やーまと!どうしたんだ、こんな所で。風邪を引くぞ」
「ん?…ふふ、ちょっと昔のこと思い出してた」
「昔のこと?…おいおい…恋人の前で昔の男の事思い出してたのかぁ?」
「え?ち、違うよ!…奏多さんが僕に告白してくれた日の事!…泣いてて可愛かったなぁって」
「そんな可愛い事いう口はこの口か?俺の口で塞いでやろう」
「わぁっ!…ん……っ、は……もう…」
「…ダメだ、大和が可愛すぎる。ベッドに連行しよう」
「え、ちょ…!まだ朝なのに…!」
「はいはい」
横抱きにされてまたベッドへと逆戻りをした僕は呆れたように息を吐いた後、腕を奏多さんの首に回して頬に口付けた。
「奏多さん、大好き」
「俺は愛してるよ」
****
当初の予定ではこのエンドはなかったんですが、いいキャラがうまれてしまい……こっちとくっつけたくて…。笑
何はともあれ、完結でございます!
後日談でも書こうかなと思いましたが、これで綺麗に終わった方がいいと思い直しましたのでこれにて終了です!
ネタが浮かんでから文章にするまで時間はかかりませんでしたが、終わり方に納得がいかず時間がかかってしまいました。
もしかしたら賛否両論あるかも知れませんが、読んでくださっただけで感謝です。
最後までお付き合いありがとうございました!
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yumeサマ
コメントありがとうございます!
水無月くんですね!彼のルートは全く考えてなかったんですが、検討してみます(´∀`)
その際は読んで下さると嬉しいです😊
ありがとうございました!
☆完結おめでとうございます☆
エンディング、両方とも好きです(*^ω^*)♡
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主人公が羨ましいぜ!!!w
ちゃまサマ
コメントありがとうございます!
両方とも好きと言って下さり嬉しい限りです( ; ; )
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読んで下さってありがとうございました☺️
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ちゃまサマ
コメントありがとうございます!
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