さよならの合図は、

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もういいよ、

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「な…にが、ですか」

「…今までのことも………お前の、兄貴のことも」

その言葉に俺はなんだか泣きたくなってしまって、はくはくと口だけが動くけど言葉は出なかった。

「あ…せん、せい…」

「秋良でいい」

やっとの思いで声を出せば優しい声色でそう言われた。
けれど、俺は頭を横に振って否定する。
もう、秋良さんなんて、呼ばない。

「先生、俺、気にしてないです」

「…だけど」

「もう、いいんです。俺、先生のこと気にしないので。だから、先生も俺の事忘れてください」

多分、先生は俺が先生を恨んでると思ってるんだろう。
でもね、俺はもう何も気にしてないから。幸せに、なって。

「…しゅ、う…」

「…あはは、久しぶりに聞いたかも。話って、それですか?」

「え?」

「…俺、もう行かなきゃ。…今度こそ、さよなら、先生」

そんな俺に腕を伸ばしてきたけどそれを避ける。だめだよ、先生。

「先生、幸せになって」

それが、俺の、俺たちの、願い。

その幸せに俺がいないのがとても悲しいんだけど、多分気のせいだ。
気のせいに、しなくちゃいけない。

俺の名前を呼ぶ声が聞こえるけど、振り返る事なく走って友人の元へと戻る。
…最初とは反対の立場になっちゃったな。

ばいばい、先生。


**
これにて、終わりです。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

ciiiii0821
2025.01.15 ciiiii0821

せ、切ない…(ó﹏ò。)

続編が欲しいくらい…切ない( ꒦ິ꒳꒦ີ)

2025.01.17 15

こんにちは。
コメントありがとうございます!

切ない話のまま終わるのが好きで全く続き書いてなくてすみません…。
もしいつか書いたら読んでくださると嬉しいです( ֊ ̫ ֊)

解除

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