再婚相手は溺愛消防士!?二度と結婚しないと決めてたのに、どうしてこんなことに!

すずなり。

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真那と長谷川。

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ーーーーー



「すみません、助かりました・・・。」

無事に家についた私は鍵を開けた。

「おうちっ!」

扉を開けると同時に家の中に駆け入った真那の靴を揃え、私は長谷川さんに向き直った。

「ありがとうございました。」

持っていただいてた荷物を受け取ろうと手を伸ばした時、家の奥でゴンっ・・!と、真那が何かにぶつかる音が聞こえてきた。

「ふぇぇーん・・・」
「真那!?ちょ・・ちょっと待っててください・・・!」

何が起こったのかと思って家の中に入ると、真那がおでこを押さえて座り込んでいた。
すぐ側にはテーブルがあり、涙目でこちらを見てることからたぶん角でぶつけたのだろう。
目より高い位置にある物にはぶつかってしまうのが子供なのだ。

「あーあー・・・ほらおいで?たんこぶになってない?」
「ママぁ・・・いたぃ・・・」
「よしよし。」

今にも大声を出して泣きそうな雰囲気の真那。
でもそれを耐えるようにしてぐすぐすと小声で涙を流していた。

「ちょっと真那待ってて?長谷川さんに荷物持ってもらってるままだから。」
「いやぁ・・・。」
「えー・・・。なら抱っこで行こう?あとでいっぱいよしよししてあげるから・・。」

そう言って真那を抱っこしようとしたとき、玄関の方から長谷川さんの声が聞こえてきた。

「三井さん、入ってもいいならキッチンまでこれ、運んでおきますけどー?」
「え・・・っ?あー・・・」

泣いてる真那を抱っこしていっても荷物を受け取ることはできない。
ならいっそのこと運んでもらった方が・・・と思った。
頂いたものが玉ねぎやじゃがいもということもあって『重たい』というワードが頭を過ぎる。

「すみません、お願いしてもいいですかー?」
「わかりました、失礼します。」

真那の人見知りが発動しないように、背中を擦りながら膝の上に乗せる。
できるだけ長谷川さんが目に入らないようにしてると、長谷川さんが入って来た。
すぐにキッチンを見つけ、シンクの下に段ボールを置いてくれたようだ。

「ぶつけたところ、大丈夫ですか?」

そう言って長谷川さんは段ボールを置いたあと、真那に近づいてきてそっと頭を撫でた。

「?」

頭を撫でられた真那は顔を上げ、長谷川さんを見た。

(あ・・泣くかも・・・。)

男の人が苦手な真那は、『不快』を泣いて表現する。
まだ言葉が未発達な部分が多く、泣くことで伝えようとするのだ。
頭をぶつけたこともあって、大声で泣くかと思った私だったけど、真那は長谷川さんを見たあと自分のおでこを手で押さえたのだ。

「ここ・・いたぃ・・・」
「ここ?・・・あー・・腫れてるな。冷たいタオルで冷やしたほうがいいんですけど・・・タオルってありますか?」
「へっ・・?あ、タオル・・・」

私は真那を一旦下ろしてタオルを取りに行った。
真那の小さなおでこには大きなタオルは無理だ。
小さめのタオルにしようと棚の中を漁ってると、長谷川さんが真那を抱き上げたのが見えた。

「へ!?」
「よしよし、泣かずに偉いな。」

背中を擦りながらたんこぶの様子を見てる長谷川さん。
真那が泣かずに抱かれてることに驚きながらも、私はタオルを濡らして戻った。

「あの・・タオル・・・・」
「あぁ、ありがとうございます。・・・ちょっと冷たいからな?」

長谷川さんは床に座り、真那を片膝に乗せておでこにタオルをあてた。
それが冷たかったのか、真那は一瞬目をぎゅっと閉じたけど、すぐに目を開いて長谷川さんをじっと見てる。

「ま・・真那?泣いたりとか・・しないの?」

にこにこと笑って優しそうに見えた深田さんでさえ嫌がった真那。
長谷川さんは深田さんと違ってあまり笑顔を漏らさないように見えた。

「え?泣く?」

私の言葉を聞いた長谷川さんが、タオルを表返しながら聞き返してきた。

「あ・・真那は人見知り・・というか、男の人が苦手でいつも泣いちゃうんです。でも今は泣いてないのが不思議で・・・」

何が真那を泣かせないようにしてるのかわからずにいると、長谷川さんが視線を上げた。
そしてぐるっと家の中を見回すように首を回したのだ。

「何が原因かはわからないですけど・・・部屋の中はすごいですね。」
「え?」

つられるようにして家の中を見回すと、まだ片付けてない『マネキン』たちがずらっと並んでいたのだ。

「あー・・・。」

全身マネキンが五体に、頭部だけが三体、胴体部分しかないトルソーが三体と、二人暮らしなのに十一体の体が存在してる。
これらは全て私の仕事道具であり、大切なものだ。

「これが原因とか?」
「いやー・・・それはないかと・・。真那はいつもこれを見てますし・・・。」
「いつも?服関係の仕事されてるんですか?」
「そうです。少しずつ二階に持って行こうとしてるんですけど・・・まだしばらくはここですかね。重たいですし。」

二階にある二部屋のうち、一部屋は仕事部屋にしようとしていた。
広い部屋だからこのマネキンたちを全員置いてもまだ余裕はある。
裁断用の机に、ミシン用の机を置き、チャット用のスペースを取ってちょうどいいくらいなのだ。

「二階に?俺、運びましょうか?」
「へ・・・?あ、いや、大丈夫です。そのうちにと思ってるんで・・・」
「真那も大丈夫そうですし、運んじゃいますよ?」

そう言われて真那を見ると、きょとんとした顔で私と長谷川さんを見ていたのだ。

「えぇ・・・・」
「男手が必要なときはいつでも呼んでください。この町の人たちはみんなお互いを助け合ってますから。」

都会にはないシステムに驚きながらも、私はさっき長谷川さんがキッチンに置いてくれた段ボールを見た。
あの段ボールに詰まってる野菜たちは、全部この町の住人さんたちが『私に』とくれたものだ。
お互いを助け合うことがこの町で生きて行く上での必須事項なら、私はこの手を頼らないといけない。

「・・・お願いしてもいいですか?」

恐る恐る聞くと、長谷川さんは真那を床に座らせた。

「真那を見ててくださいね、吐き気とか出たら病院にいったほうがいいんで。」
「は・・はい・・・!」
「あのマネキンは全部二階に?」
「はい!階段を上がってすぐの部屋にいれたくて・・・」
「オーケー。」

長谷川さんはマネキンを一つ抱え、階段をひょいひょいと上がっていった。
そしてすぐに降りてきて別のマネキンを抱えて上がっていく。
それを何度も繰り返してリビングに置いてあったマネキンたちはあっという間に二階の住人になっていった。

「すごい・・・」
「しゅごいねー!」

俊敏な動きに見入ってしまう私と真那。
前に住んでたところでは頼る人なんていなく、孤独と戦うか一人で何もかもするしかなかったのだ。

「他は?重たいものとか運ぶけど?」

汗を拭うようにして腕でおでこを拭く長谷川さん。
これ以上は申し訳なく、私は両手をぶんぶんと横に振った。

「やっ・・・もうないですよ・・・!」
「ほんとに?・・・まぁ、週一くらいで御用聞きに回ってくるからその時にでも必要なことは言って?」
「『御用聞き』・・・?」

聞きなれない言葉に首を傾げると、長谷川さんは家の外を指さした。

「畑とか結構あっただろ?」
「あ・・はい、広大な畑がたくさん・・・」
「収穫とか結構手伝いに行ってるんだよ。この町、平和すぎて出動無いから。だから週一くらいで安否確認も兼ねて一軒ずつ訪ねてる。もちろんこの家も例外ではない。」

『平和すぎる』という言葉があることにも驚きながらも、砕けた話し方になってる長谷川さんに妙に親近感を覚えた私。
思わずクスッと笑ってしまった。

「ふふっ・・。」

「?・・・笑うとこ?」
「いえ、いいところに引っ越して来たなーと思いまして。」
「まぁ、自然が豊かではあるな。」

私の仕事は全国どこにいてもできる仕事だ。
広い部屋が必要なだけで、どこででも仕事ができる。
それならこの自然豊かな町で真那と一緒に暮らしていくのがいいと、改めて思ったのだ。

(真那の体のためでもあるし、都会の喧騒は・・・もういいし。)

真那を生むことになるきっかけを少し思い出してると、長谷川さんが真那の体を抱き上げた。
さっきぶつけたたんこぶの様子を見るようにしておでこをガン見してる。

「腫れただけみたいだから大丈夫そうだな。念のため今日一日は吐き気と頭痛に気を付けて。何かあったらすぐ署に連絡しろよ?・・・那智?」
「!!」

久しぶりに呼ばれた私の名前。
どこに行くにしても苗字である『三井』か、『真那ちゃんのお母さん』のどちらかだったからなんだかくすぐったい気がした。

「嫌か?俺たちみんな名前で呼んでるから・・・」
「・・・いえ、大丈夫ですよ。名前でも、苗字でも・・・。」

そう答えると長谷川さんはにこっと笑顔を見せた。

「よろしくな、那智。」
「~~~~っ。・・・よろしくお願いします。えぇと・・・?」

長谷川さんの名前を知らない私はどうしたらいいのか悩んだ。

「あ、俺は圭吾。長谷川 圭吾。」
「圭吾・・・さん?」
「ははっ、なんでもいーよ。みんなは圭吾って呼んでる。」

困りながらもこうして話ができる人ができたことに安堵してると、長谷川さん・・・いや、圭吾さんに抱かれた真那が圭吾さんをじっと見ていた。

「けーたん?」
「お?真那も俺の名前覚えたか?」
「けーたん!」

嬉しそうに圭吾さんの名前を呼ぶ真那に驚くものの、環境の変化が真那をそうさせたのかもしれないと思い、私は安堵を重ねたのだった。











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