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園田さんと連絡を取ってから1カ月の時間が流れ、町はいつも通り平和だった。
あれから那智の前の旦那がやってくることはなく、那智は真那の入園に向けての準備に追われていた。
「えっと、銀行引き落としの手続きは終わったでしょ?グッズは前に圭吾さんと買いに行って揃えてあるし、幼稚園に提出するいろんな紙も全部記入した。制服は来月引き渡しだからその時にお支払いして・・・」
「署にも一通り着替えとかいるから、そのぶんは大きなバッグにまとめておいてくれるか?」
「うんうん!ボストンバッグに入れて持っていく!雪華さんがそうしてるって教えてくれたんだー。」
「さすがセンパイ。」
「尊敬しますっ。」
いつも通りの日常に安心しつつも、頭の隅にはあの男の存在がある。
那智に確認したいところだけど、聞けない自分が情けない。
(いや、聞けるけどこれで那智の気分が落ち込むと申し訳ないんだよなぁ・・。気持ちが揺らぐなんてことはないと思うんだけど・・。)
そんなことを考えていると、俺のスマホが鳴り始めた。
表示画面に出てる番号は・・・園田さんだ。
「え・・どうしたんだろ。」
俺は那智に断りを入れ、少し距離を取ってから電話に出た。
「もしもし?どうしました?」
『お久しぶりです。あの男の件、片付きましたので連絡しました。』
「え・・?どういう意味ですか?」
『伝手を使うことができたので、あの男と会うことはもうないと思います。』
「はい?」
園田さんの話では、那智の前の旦那はどこか遠いところに転勤?になったらしい。
アルバイトの身分で転勤があること自体疑問だけど、とにかく遠いところで勤務となったからもう那智の前に姿を現さないだろうとのことだった。
(それでも『絶対』とは言い切れないんじゃ・・・。)
この広い世界は、時間と金さえかければどこにだっていける。
その交通手段だって、ネットで検索すれば一発だ。
「・・・ありがとうございます、助かりました。」
ここまでしてくれたことには感謝しかない。
野崎さんと那智が深く関わっているとはいえ、俺と園田さんは一回しか会っていない。
それなのに、俺の相談から伝手を使ってまでしてくれるなんて、感謝しかないだろう。
(あいつがまた来たら俺が対処できるようにしておかないと。)
もらった情報を無駄にしないようにしようと決め、俺は電話を切った。
でも、このことを那智に言うかどうかに今度は悩んでしまう。
(伝えたら安心するかもしれないけど、伝えると俺が園田さんと連絡を取ったことがバレる。いや、バレるって表現がそもそもおかしいんだけど・・・。)
別に悪いことはしていないはずだ。
那智も嫌がっていたし、あんな男はもう来ないほうがいい。
「どうしたの?何かよくない電話?」
心配した那智が少し距離を開けてそう聞いてきた。
「いや・・・。いい電話って言ったほうが正解なんだと思うけど・・・。」
「?」
「あー・・・。」
『隠し事はよくない』。
そう思った俺はさっきの電話の内容を那智に話すことにした。
もちろん、1カ月前のことも全部だ。
那智は俺の話を頷きながら聞いてくれ、ときどき驚いたような顔をしていた。
「・・・という感じで、もうあの男は来ない・・みたいな?」
「えーと・・・それは圭吾さんも思った通り『絶対』じゃないよね?」
「だと思うんだよ。でも調べるのがめっちゃ早かったし、伝手っていうのもなんだか浮世離れしてるような気がして・・。」
「うーん・・・。あ、柚香さんに聞いてみよっか!」
那智の案で、スマホをスピーカー状態にして野崎さんに電話をかけることに。
彼女は、昼間はデザインの仕事をしてることが多いらしく、繋がりやすいとのことだった。
『もしもし?那智さん?』
数コールで電話にでた野崎さんに、那智は順を追って話し始めた。
で、園田さんの話の信ぴょう性を聞くと・・・
『あー・・・、圭一さんが言うならもう会うことはないと思います。おそらく二度と。』
「その信ぴょう性はどこからなの?」
『うーん・・・、あまり大きな声で言えるようなものじゃないんで言えないんですけど・・・圭一さんの話では遠くに行ったんですよね?那智さんの前の旦那さん。』
「うん、そう聞いてる。」
『たぶん、遠くっていうのは国内とか海外とかのレベルじゃないと思うんですよ。』
「?・・・国内と海外以外に場所はないと思うんだけど?」
『そう思いますよねぇ・・・。』
なんだか煮え切らないような言い方をする野崎さん。
ハッキリ言えない事情でもあるのかと思っていると、彼女は思いついたかのように声を上げた。
『あっ・・!空!空に行ったと思います!』
「・・・空?」
『だれしもが寿命を迎えると行く場所・・・的な?』
「それって・・・・」
そこまで話したとき、スマホの向こう側で園田さんの声が聞こえてきた。
『柚香ー?仕事がひと段落したらご飯でも食べに行かないかー?今日、家にだれもいないと思うからさー。』
『あっ・・!ごめんなさい・・!圭一さんが来ちゃったからまた!』
そう言って電話は切れてしまったのだ。
俺と那智はお互い目を合わせ、さっきの言葉の意味を整理する。
「え・・空って・・・。」
「寿命って・・・・」
行きつく答えは一つしかない。
その答えがわかったとき、俺と那智は血の気が引く思いをした。
「園田さんの話が信ぴょう性に欠けるって思ってたけど・・・」
「野崎さんの話も信ぴょう性に欠けるな・・。」
こうなったらもう一人の人物に聞くしかないと思い、俺たちは雪華さんのカフェに向かったのだった。
園田さんと連絡を取ってから1カ月の時間が流れ、町はいつも通り平和だった。
あれから那智の前の旦那がやってくることはなく、那智は真那の入園に向けての準備に追われていた。
「えっと、銀行引き落としの手続きは終わったでしょ?グッズは前に圭吾さんと買いに行って揃えてあるし、幼稚園に提出するいろんな紙も全部記入した。制服は来月引き渡しだからその時にお支払いして・・・」
「署にも一通り着替えとかいるから、そのぶんは大きなバッグにまとめておいてくれるか?」
「うんうん!ボストンバッグに入れて持っていく!雪華さんがそうしてるって教えてくれたんだー。」
「さすがセンパイ。」
「尊敬しますっ。」
いつも通りの日常に安心しつつも、頭の隅にはあの男の存在がある。
那智に確認したいところだけど、聞けない自分が情けない。
(いや、聞けるけどこれで那智の気分が落ち込むと申し訳ないんだよなぁ・・。気持ちが揺らぐなんてことはないと思うんだけど・・。)
そんなことを考えていると、俺のスマホが鳴り始めた。
表示画面に出てる番号は・・・園田さんだ。
「え・・どうしたんだろ。」
俺は那智に断りを入れ、少し距離を取ってから電話に出た。
「もしもし?どうしました?」
『お久しぶりです。あの男の件、片付きましたので連絡しました。』
「え・・?どういう意味ですか?」
『伝手を使うことができたので、あの男と会うことはもうないと思います。』
「はい?」
園田さんの話では、那智の前の旦那はどこか遠いところに転勤?になったらしい。
アルバイトの身分で転勤があること自体疑問だけど、とにかく遠いところで勤務となったからもう那智の前に姿を現さないだろうとのことだった。
(それでも『絶対』とは言い切れないんじゃ・・・。)
この広い世界は、時間と金さえかければどこにだっていける。
その交通手段だって、ネットで検索すれば一発だ。
「・・・ありがとうございます、助かりました。」
ここまでしてくれたことには感謝しかない。
野崎さんと那智が深く関わっているとはいえ、俺と園田さんは一回しか会っていない。
それなのに、俺の相談から伝手を使ってまでしてくれるなんて、感謝しかないだろう。
(あいつがまた来たら俺が対処できるようにしておかないと。)
もらった情報を無駄にしないようにしようと決め、俺は電話を切った。
でも、このことを那智に言うかどうかに今度は悩んでしまう。
(伝えたら安心するかもしれないけど、伝えると俺が園田さんと連絡を取ったことがバレる。いや、バレるって表現がそもそもおかしいんだけど・・・。)
別に悪いことはしていないはずだ。
那智も嫌がっていたし、あんな男はもう来ないほうがいい。
「どうしたの?何かよくない電話?」
心配した那智が少し距離を開けてそう聞いてきた。
「いや・・・。いい電話って言ったほうが正解なんだと思うけど・・・。」
「?」
「あー・・・。」
『隠し事はよくない』。
そう思った俺はさっきの電話の内容を那智に話すことにした。
もちろん、1カ月前のことも全部だ。
那智は俺の話を頷きながら聞いてくれ、ときどき驚いたような顔をしていた。
「・・・という感じで、もうあの男は来ない・・みたいな?」
「えーと・・・それは圭吾さんも思った通り『絶対』じゃないよね?」
「だと思うんだよ。でも調べるのがめっちゃ早かったし、伝手っていうのもなんだか浮世離れしてるような気がして・・。」
「うーん・・・。あ、柚香さんに聞いてみよっか!」
那智の案で、スマホをスピーカー状態にして野崎さんに電話をかけることに。
彼女は、昼間はデザインの仕事をしてることが多いらしく、繋がりやすいとのことだった。
『もしもし?那智さん?』
数コールで電話にでた野崎さんに、那智は順を追って話し始めた。
で、園田さんの話の信ぴょう性を聞くと・・・
『あー・・・、圭一さんが言うならもう会うことはないと思います。おそらく二度と。』
「その信ぴょう性はどこからなの?」
『うーん・・・、あまり大きな声で言えるようなものじゃないんで言えないんですけど・・・圭一さんの話では遠くに行ったんですよね?那智さんの前の旦那さん。』
「うん、そう聞いてる。」
『たぶん、遠くっていうのは国内とか海外とかのレベルじゃないと思うんですよ。』
「?・・・国内と海外以外に場所はないと思うんだけど?」
『そう思いますよねぇ・・・。』
なんだか煮え切らないような言い方をする野崎さん。
ハッキリ言えない事情でもあるのかと思っていると、彼女は思いついたかのように声を上げた。
『あっ・・!空!空に行ったと思います!』
「・・・空?」
『だれしもが寿命を迎えると行く場所・・・的な?』
「それって・・・・」
そこまで話したとき、スマホの向こう側で園田さんの声が聞こえてきた。
『柚香ー?仕事がひと段落したらご飯でも食べに行かないかー?今日、家にだれもいないと思うからさー。』
『あっ・・!ごめんなさい・・!圭一さんが来ちゃったからまた!』
そう言って電話は切れてしまったのだ。
俺と那智はお互い目を合わせ、さっきの言葉の意味を整理する。
「え・・空って・・・。」
「寿命って・・・・」
行きつく答えは一つしかない。
その答えがわかったとき、俺と那智は血の気が引く思いをした。
「園田さんの話が信ぴょう性に欠けるって思ってたけど・・・」
「野崎さんの話も信ぴょう性に欠けるな・・。」
こうなったらもう一人の人物に聞くしかないと思い、俺たちは雪華さんのカフェに向かったのだった。
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