幼馴染がヤクザに嫁入り!?~忘れてなかった『約束』~

すずなり。

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運命の再開は引っ越しのご挨拶。

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ーーーーー



(これは何かの試練だろうか・・・。)


よく晴れた春の朝、珍しく表玄関のインターホンが鳴った。

偶然近くにいた俺が出てみると、そこに・・幼馴染の『三橋みつはし あや』が立っていたのだ。


「・・・は!?・・彩!?」

「?・・・あれ?ゆうちゃん?」


ぼけっとした表情で立っていた彩は、手に菓子折りを持っていた。

彩に会うのは時間にしておよそ8年程ぶり。

何も変わってない姿に、見た瞬間『彩』だと理解わかった。


「あ、お引越ししてきたのでご挨拶に来ましたー。どうぞよろしくお願いします。」


丁寧に頭を下げて手に持ってる菓子折りを差し出す彩。

俺は呆気にとられながらその菓子折りを片手で受け取った。


「は!?引っ越し!?」

「お隣ですー。」

「え!?」


驚きながら門扉まで行って隣を見ると、更地だったところにいつの間にか家が建っていた。

普段こっちの玄関は使うことがないから全然気がつかなかったのだ。


「ゆうちゃんも引っ越してきたの?大きいお家ー・・・。」


不思議そうに首を傾ける彩。

俺は後ろ手に頭を掻きながら事情を説明した。


「え?あー・・俺の実家はここなんだよ。前住んでたところは叔父の家。」


事情があって高校を卒業するまで叔父の家で暮らしていた俺は、卒業と同時に実家に戻ってきた。

叔父の家の隣に住んでいた彩とも、その時にお別れしたはずなんだが・・・


「またお隣さんだね?・・・ふふっ、よろしくね?」

「---っ。」


無邪気な笑顔を見せる彩は、8年前と変わってなかった。

強いて言えば少し大人っぽくなったくらいで、のんびりした性格も変わってなさそうだ。


「彩・・・お前、いくつになった?」

「18歳だよ?」

「18歳・・・。」


俺の今の歳は26歳。

彩とは八つ、歳が離れてるのだ。


「ゆうちゃん、すごく大きいお家だねぇ。中、覗いてもいい?お邪魔しまーす。」

「え・・!?は!?ちょっ・・・!」

「わー、広い玄関ー。」


彩は俺が止める間もなく玄関に入って靴を脱いだ。


(そうだった、昔から人の話を聞かない奴だった・・・。)


彩は人の話をあまり聞かない。

聞かないというより、自分がしたいことを最優先でしてしまうのだ。

いいことも、悪いことも最優先でしてしまう。


(腹が減ったらメシの前でも腹いっぱい食べるし、学校に行く途中に気になるものを見つけたらずっと眺める子だったな・・・。)


警察に保護されたり近所の人に家まで届けられてた彩。

彩の親がよくいろんな人に頭を下げていたのが記憶にあった。


「あ、初めまして。『三橋 彩』です。お隣に引っ越してきました。よろしくお願いします。」


彩は玄関を上がってすぐに出会った家の者・・・うちの組員に頭を下げて挨拶をしていた。


「お・・・おぉ?若?この女の子は一体・・・」


挨拶をしたあと、またスタスタと歩いていく彩。

その後ろを追いかけながら、俺は組員に軽く説明した。


「俺の昔馴染だ。ちょっとぶっ飛んでるから相手にするな。」

「へ?・・・へい・・。」

「ゆうちゃんのお家すごいねぇ。和風っていうの?お庭が家の中にもあるー。」

「彩っ・・・!ちょっと待て・・・!」


これ以上奥に入られるとマズいと思った俺は、彩の腹に手を回した。

がしっと抱え上げ、玄関に向かって足を進める。


「むー・・・。」

「『むー』じゃない。おじさんはどうした?仕事か?」


彩が一人で引っ越しの挨拶に来るとは思えなかった俺が尋ねたとき、家の奥から厄介な奴が現れた。


「あらー?ゆうちゃん、お客さま?」


白いレースのエプロンを身に纏い、長い髪の毛を一つに束ねてサングラスをしたおっさんがお玉を持って現れたのだ。


「トオル・・・。」

「あら!かわいいお嬢さんじゃないの!ゆうちゃんのお友達?」

「俺に友達なんて呼べる奴いないだろ・・・」


『ヤクザ』と呼ばれるうちの若頭をしてる俺にそんな人はいない。

俺のことを知ったとたんに離れていくか、いいように利用しようとするやつしか残らないのだ。


「ならこの抱えてるお嬢さんは?」

「俺の昔馴染みだ。ちょっとぶっ飛んでるから相手にするな。すぐに帰す。」

「そうなの?」


トオルは俺が抱えてる彩を下から覗くように見た。

じろじろと見られてる彩は、トオルを見てにこにこ笑ってる。


「初めまして、『三橋 彩』です。」

「あら、アタシを見ても驚かないの?」

「?・・・驚く?」


意味を分かってない彩の体を床に下ろし、俺はトオルのことを説明した。


「彩、トオルはオネエだ。わかるか?」

「?・・・おねえ?」

「見た目、男だろ?でも中身は女なんだよ。」


そう、トオルはうちの組で唯一のオネエだ。

暴力じみたことは好まず、白いエプロンをつけてみんなに料理をふるまうのが好きで組内の家事一切をこなしてる。

新しく入ってくる部下たちはトオルの存在に引くけど、トオルはそいつらを胃袋で掴む。

そして部下たちはトオルを慕うようになっていくのだ。


「?・・・なにか違うの?」

「!・・あー・・いい。お前に言った俺がバカだった。」


そんな話をしたとき、玄関から知った声が聞こえてきた。


「彩っ・・!すみません!うちの子がお邪魔してしまって・・・!」


少し低めの優しい声の持ち主は彩の父親。

どうやら彩が先行してうちに来てしまったようだった。


「・・・雄介くん!すまないね、うちの彩がお邪魔してしまって・・・」

「いえ。・・・お久しぶりです、おじさん。」


8年前とあまり変わってない彩の父親。

何か違和感を感じながらも俺は彩の身柄を父親に返した。

そして小声で耳打ちするようにして話す。


「おじさん、俺の仕事・・・知らないわけじゃないですよね?ここがどこだかわかってます?」


そう聞くと彩の父親は表情一つ変えずに穏やかな顔で言った。


「・・・もちろん。この国最大の勢力を持つ『九条組』若頭の家ってことはちゃんと知ってるよ?」

「!!・・・自分の立場ってわかってますか?おじさん・・警察官ですよね?」


そう、彩の父親は警察官だ。


「もちろん?」

「~~~~っ。」

「うちじゃあ彩を守れない時があるんだよ。国のしがらみってやつ。」

「!!」


その言葉を聞いて、俺は彩の体を床に下ろし、彩にに聞こえないように聞いた。


「まだ誘拐されかけてるんですか?」


彩は昔からよく攫われかけていた。

それは見た目のかわいさもあるけど、一番の目的は彩の芸術作品だ。

彩は絵を描くセンスがずば抜けて高く、高額の値がつくことも多々ある。

その『金の卵』とも呼べる作品を生み出す彩を攫おうとするやつは後を絶たなかったのだ。


「だいぶ家もバレてるからね。ここだったらあまりウロウロできないだろう?」

「!!・・・うちを隠れ蓑にしようってことですか?いい度胸してますね。」


そう言うとおじさんはにこっと笑った。


「それはお互い様じゃないかい?」

「それはどういう・・・・」


俺がおじさんの真意を訪ねようとしたとき、ふと彩が側にいないことに気がついた。

辺りを見回しても姿がない。


「・・・彩!?」

「あー・・・そこの中庭に・・・」


おじさんが指をさした先に彩の姿があった。

中庭に入り、何かを拾い集めてる。


「彩・・!何してる・・・!?」


中庭から彩を連れ出そうと思ったとき、俺の足が止まった。

彩は中庭に落ちてあった葉を取り、地面に並べて絵を描いていたのだ。

それは自然の色味を生かしてグラデーションになるように作られていて、どこか田舎の・・・山々が連なる見事な風景画だった。


「・・・相変わらずすごいな。」


そう呟くと彩は嬉しそうに俺を見た。


「ゆうちゃん、これ、好き?」

「あぁ、彩の描く風景画はどれも好きだ。・・・・ってか、帰れ帰れ、ここはお前がいていいような場所じゃないんだ。」


彩の体をひょいと抱え、玄関にいるおじさんにもう一度引き渡した。


「もう来るなよ?」


そう言うと彩は俺に向かって笑顔を見せた。


「またね!ゆうちゃん!」

「あー・・これ、絶対わかってないやつ・・・。」


純粋無垢な彩に俺の家を見せるわけにいかずに言った言葉だったのに、彩はちゃんと受け取ってくれなかったようだった。

一気に昔に戻ったようで、調子が狂う。


「また改めてご挨拶に来させていただくね、ごめんね?雄介くん。」

「あ、はい・・・。」


彩の父親は苦笑いしながら彩を連れて帰っていった。

閉められた玄関の引き戸を見つめながら、俺は盛大にため息をつく。


「はぁー・・・・・。」

「若、仕事の時間ですぜ。」

「わかってる。すぐ準備する。」


腕時計で時間を確認し、俺は家の一番奥にある自分の部屋に向かった。

ホルスターをつけて黒いスーツに身を包み、濃い青のネクタイを締める。

ボタンはかけずに、愛用してる銃をホルスターに入れた。


「さて、回収に行くか。」


俺は裏の玄関に足を向けた。

さっき彩が入ってきたのは『表』の玄関で、カタギ(一般人)用。

どんなに汚れて帰ってきても掃除しやすいように作ってある裏の玄関が、俺たちの通用口だ。


「今日は『山川』が期日か?」


俺の後ろをついてきた部下に聞くと、スマホで調べ始めた。


「へい。先月分が回収できてません。『今月は必ず払う』と言ってましたが、昨日の期日までに事務所に来ませんでした。」

「ほー・・・。いい度胸じゃねーか。・・・いくらだ?」

「貸し付けが100万ですけど、まだ一度も返済が無いんで230万になってますね。今、駅裏のパチ屋で遊んでるって翔太から連絡ありました。」

「わかった。」


俺は部下を数人連れ、山川がいる場所に向かった。




ーーーーー




「ひぃぃぃっ・・・!!たっ・・助けっ・・・!!」


駅裏のパチンコ屋にいた山川を見張ってると、俺たちの視線に気がついたのか山川は逃げるようにしてパチ屋を出た。

回り込んで路地裏に行くように誘い込み、今、行き止まりのところで地面を張ってる山川を見下ろしてる。


「山川・・・期日がいつか知ってるか?」

「きっ・・昨日ですっ・・・!」

「わかってて返しに来ず、お前は遊んでるのか・・・へぇー?」

「---っ!!」


部下の人に手を出すと、部下は書類を一枚、俺の手に置いた。

その書類を丁寧に読み上げていく。


「・・・お前がうちからの借金を返す方法は二つだ。一つ、船で働く。二つ、臓器を売る。どっちにする?」

「は・・・?」

「聞こえなかったのか?お前、真っ当に働いてねーだろ?それでどうやってうちの借金230万を返すんだ?」

「!?・・・まっ・・待ってくれ・・!借金は100万のはず・・!!」

「お前は利息の計算ができねーのか?うちはトイチだって言ったろ?」

「とっ・・トイチだったらなおのこと計算が合わねぇじゃねーか!!3か月だから190万のはずだ!!」


そう言われ、俺は地面を張ってる山川の髪の毛を手で掴んで引きずりあげた。


「バカか?10日後に返済に来てないだろ?その返済利息分、うちがんだよ。10日ごとに利息が乗せられてそれからトイチだ。」

「そっ・・そんな・・・!いくらなんでも暴利すぎる・・!!」

「つべこべ言ってんじゃねぇよ。うちから借りたときに説明してある。さぁ、船か臓器か選べ。」


山川は諦めたのか、かくんっと力が抜けていた。

臓器を売るのは多少のリスクがあるから、山川は船で決定だ。

「連れていけ。3年は降ろすなよ?」

「へい!」


部下である組員たちは、まるで山川が酔っぱらってしまって一人で歩けない風を装って連れて行った。


「おいおい大丈夫かー?」

「ちょっと家で休んでいきなよ、兄ちゃん。」


白々しい演技を耳で聞きながら、俺はタバコに火をつけた。


(さて・・この回収で利益が大体3000万。保険かけるからその分ともろもろ引いて・・・)


頭の中で計算をしながら立ってると部下の一人が俺を呼んだ。


「若、車のご用意できました。」

「あぁ、じゃあ次行くか。」

「へい。」


俺は車に乗り込み、次の仕事に向かっていったのだった。



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