異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。

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セダムの仕事場。

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「・・・ふぁっ!?」


起きなきゃいけないような気がして、私は目を覚ました。

視界に入ったのは私の家。

寝てたところは・・・布団の上だ。


「え・・・?あれ・・・?」


自分の状況が理解できず、記憶の糸を手繰り寄せる。

セダムとアスレチックで遊んで・・・

お昼ご飯を食べて・・・

セダムがどっか行った。

そのあと身体を動かした疲れと、お腹がいっぱいなことで眠気が襲ってきて・・・目を閉じてしまったんだった。


「・・・セダム!?」


そう叫ぶとシャガの声が聞こえてきた。


「起きたか?もう夜中だけど。」

「・・・とうさん・・?あれ・・セダムは・・?」


シャガは私に近づいてきて、布団の隣にどかっと座った。


「お前を背中に背負って帰ってきた。爆睡してて全然起きなかったぞ?」

「え!?」

「『え!?』じゃねーし。何してたんだ?」

「えーと・・・運動?なんか自警団の訓練してるとこで遊んでた。」

「あぁ、あそこか。」


シャガは私の説明でわかったようだった。


「知ってるの?」

「あぁ。山で知らないとこなんかないからな。」

「へ・・へぇー・・。ところで・・・セダム、何か言ってた・・・?」


デート中に寝てしまうとか『無い』ことだ。

怒らせても仕方がない。


「あぁ、謝ってた。」

「・・・へ?」

「『一人にさせてごめん』ってさ。」

「・・・私が悪いのに・・。」


明日にでも謝りに行こうと思いながら私は布団から起き上がった。

セダムが持って来てくれたであろう鞄が目に入り、それを取りに行った。


「・・・なんか入ってる。」


鞄を開けると自分の荷物のほかにきれいな花が入ってるのが見えた。

手に取って鞄から出してみる。


「これ・・・」

「『星の花』だな。」

「『星の花』?」

「崖の反ったとこに咲いてる花だ。取るの難しいしすぐ枯れる。」

「へぇー・・・。」


緑のしゅっと伸びた葉に、紫の小さい花がいくつかついてる。

五枚の花弁が中を守るようにきゅっと小さくなっていた。


「かわいい・・・。」

「その花は取るのが大変だから『命を懸けて想い人を守る』って意味がある。」

「え・・・。」

「山に入らないようなやつには取れないからな。」

「そ・・そうなんだ・・・。」


家まで連れてきてもらった上にそんな危険なとこに咲いてるお花までもらって・・・何かお礼をした方がいいんじゃないかと思い始めた。


(うーん・・・おにぎり気に入ってたし・・・持って行こうか。)


「ねぇ、とうさん?明日の仕事、山に行く?」

「行く。デカくなってる木があるらしいからそれの枝を落としに行く。」

「ならついでに私を自警団のとこまで連れて行ってくれない?セダムに謝りたいから・・・。」


そう言うとシャガはぼそっと何かを呟いた。


「・・・別に謝る必要はねーけど。」

「え?なんて言った?」

「なんも?連れてってやるよ。」

「ありがとっ。」



私はセダムがくれたであろう花を少し分けた。

シャガが『すぐに枯れる』と言ってたから『押し花』にしようと思ったからだ。


「ちょっとだけ取って、あとは花瓶かな。」


シャガの家に花瓶なんかあるはずもなく、私は自分が使ってるコップに水を入れた。

そこに花を生け、取り分けた花を紙の上に置いていく。


「花と茎を分けたほうがきれいかなー。」


ぷちっと花を摘み、紙の上に並べていく。

どうすればバランスがいいかを考えながら配置を考えてると、シャガが私の作業を覗き込んできた。


「何してんだ?」

「え?押し花だよ?」

「押し花?なんだそりゃ。」

「嘘・・・押し花もないの?」


私は仕上がりを楽しみにしててとだけ言い、作業を進めた。

家にあった本を紙の上に乗せていく。


「何日か経てば出来上がるよ。」

「ふーん?すぐ枯れるどな。」

「ふふっ、それはどうかなー?」


押し花は小さいころによくしてた記憶があった。

四つ葉のクローバーとか・・・見つけては本に挟んでたものだ。


(こんな可愛い花、枯れちゃうとかもったいないし・・・。)


私は出来上がりを楽しみに待つことにした。




ーーーーー



翌日・・・


朝からおにぎりを大量に作った私は木でできた大きめのお弁当箱のようなものに入れていった。

全部で5つのお弁当箱に収まったおにぎりたちを鞄に入れていく。


「それで荷物は全部か?」


シャガは私の鞄を覗き込んできた。


「うん。」

「なら貸せ。俺が持ってく。」

「お願いしまーす。」


シャガに荷物を預け、私たちは家を出た。

セダムと一緒に歩いた道を今度はシャガと歩いて行く。



「はぁっ・・はぁっ・・・きっつ・・!」


シャガはセダムと歩いた昨日より険しい道を進んだ。

こっちのほうが近いらしいのだ。


「お前・・・随分体力が落ちたな。」

「そ・・そう・・?」

「学校行ってた頃はこれくらいなんともなかっただろ?」

「あー・・・そういえばそうかも。」


学校を卒業してもう4年近い。

動くことと言えば家事と仕事くらいだ。


「別にいいけど・・・またセダムのとこ行くんならもうちょっと体力つけろよ?」

「考えとく・・・。」


シャガは見かねて私の手を引きながら歩き始めた。

これが結構楽で・・・私は体力の消耗を押さえながら自警団の訓練場所につくことができた。

昨日遊んだアスレチックのところで、20人ほどの人が走り回ってるのが見える。


「わー・・・ほんとに練習してる。」


驚きながら見てると、シャガは私に鞄を手渡してきた。


「ほらよ。仕事終わったら迎えに来るからここにいろよ?」

「うん。どれくらい?」

「そうだな・・・1・2時間ってとこか。」

「わかった。・・あ、これ持っていって?お腹空いたら食べたらいいし。」


そう言って鞄から小さめのお弁当箱を取り出した。


「・・・俺にも作ったのか?」

「うん。とうさんの好きな甘い卵入ってるよ。」


シャガは私が作ったのが嬉しかったのか、はたまた甘い卵焼きが嬉しかったのか笑った。


「ありがとな。行ってくる。」

「行ってらっしゃーい。」


シャガを見送ったあと、私は自警団の人たちに足を向けた。

両腕を組んでみんなを見てる人の元に向かう。


(あの人が多分偉い人だよね。)


どこの世界にも『指揮官』はいる。

私はその人に声をかけた。


「あの、すみません。」

「・・・なんだ?どうした?」

「セダムって・・・いますか?」


そう聞くとその人は辺りを見回した。

そして大きな声で呼んだ。


「おーい!セダムーっ!!」


呼ばれたセダムは私に気がついたようで、アスレチックの場から駆けてくる。


「・・・アイビー!」

「お前の知り合いか?」


セダムは指揮官さんに向かって私を紹介し始めた。


「『アイビー』です。シャガさんとこの娘さんですよ。」


その言葉に指揮官さんは驚いたような顔を見せた。


「シャガの娘か!!」

「?・・・とうさんを知ってるんですか?」

「あぁ。シャガがここを作ったんだよ。山で死なないようにって。」

「・・・えぇ!?」

「知らなかったのか?」


『作った』なんてことは一言も聞いてなかった。

驚きを隠せないまま口をぽかんと開けてると、セダムが口を開いた。


「ところでアイビー、どうしたんだ?こんなとこまで・・・。」

「・・・あ、昨日はごめんね?寝ちゃったみたいで・・・。」

「なんだそんなことか。大丈夫だから。それより一人にさせてごめんな。」

「ううんっ・・・。で、ちょっとお詫びとお礼を兼ねて・・・みなさんでどうぞ。」


私は鞄から大きめのお弁当箱を取り出した。

蓋にしてある板を持ち上げて中身を見せる。


「!・・・昨日のやつか!?」

「うん。数が足りるかどうかはわからないけど・・・よかったら休憩の時にでも食べて?」


私の言葉に指揮官さんみたいな人が全員を呼んだ。


「おーい!みんな集まってくれー!!」


ぞろぞろと集まってくる自警団の人たち。

みんなが私を取り囲んだ。


「シャガの娘の『アイビー』だ。おにぎりを持って来てくれたからもらう奴はありがたく頂け。」


私が持ってるお弁当箱めがけて手があちこちから伸びてきた。

その手はおにぎりを掴んで引いていく。


「いただきます!」

「もらいます!」


一瞬でお弁当箱は空になり、私は鞄からもう一つ取り出した。

蓋にしてる板を外すとまた手が伸びてきて一瞬でおにぎりが消えていく。

持って来たおにぎりが全部無くなるまで時間はかからなかった。


「美味いっ!!」

「なんか入ってる!!」

「やば・・・いくらでも食える・・・。」


口々に感想が言われてる中、私はセダムの側に行った。


「あのね、セダム。」

「なんだ?」

「お花、ありがとう。」


笑顔で言うと、セダムは後ろ手に頭を掻いた。


「・・・アイビーが喜んだなら・・・よかったよ。」

「うんっ。」


みんながおにぎりを食べ終わったあと、私は東屋のところでその練習風景を見せてもらうことになった。

シャガが迎えに来るまでの間だけ、見せてもらう。


「みんなすごいなー・・・。」


昨日見たセダム以上に機敏に走り回ってるのが見える。

それも背中に大きな荷物を持ったままで。


「セダムも昨日より機敏に動いてる・・・やっぱ仕事だから動きが違うのかな。」


普段見ることのない仕事の風景に私は見入った。

シャガが迎えに来るまでの時間、ずっと。








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