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変わるアイビー4。
しおりを挟むシャガは魚を持って走った。
アイビーとジニアの側まで駆け寄り、二人を交互に見てる。
「とうさんっ、お魚買えた?」
そうアイビーに聞かれ、手に持っていた魚を見せた。
「あぁ、ほら。」
「うわぁー・・・おっきいねっ。」
「煮付けにするのが好きだろ?飯も炊いて食おうな。」
「うんっ。」
喜んで魚を見てるアイビーに、俺は小銭を少し手渡した。
「アイビー、これで果物屋に行ってきてくれないか?好きなの3つな。」
「いいよ?じゃあジニア、またねーっ。」
「あ・・うん・・。」
アイビーはジニアに手を振って、果物屋に向かって歩いて行った。
声が聞こえないくらいのところにまでアイビーが行くのを待ってから・・・ジニアに言う。
「お前、アイビーに何を言う気だった?」
ジニアはさっきアイビーに見せてた表情とは違う表情になった。
うろたえてたのが・・・一瞬で冷静な顔になった。
「・・あの日のことを謝る気でした。」
「それは言うなって言ったろ?アイビーにはあの日の記憶がない。無理に思い出させることもしたくないんだ。」
アイビーの記憶がなくなってることに気がついてから、ニゲラを始めとしてジニアたちに伝えて回った。
前世の記憶持ちの話はしたけれども、本人が忘れてしまったこと。
山での記憶がなくなってることを。
そしてそれはアイビーには言わないことを約束させたのだ。
「町で転んで頭をぶつけたことにしてる。なのにジニアがアイビーに言うと混乱するだろ?」
「それでも俺は謝りたいんです。もう間違えないために。」
「アイビーはなんとも思って無かったろ?忘れてるんだ。だからお前も忘れろ。じゃないともうアイビーに近づけさせない。」
「・・・。」
「俺はお前にはアイビーをやりたくない。アイビーが決めることだから黙ってるけど・・・俺はお前を許さない。」
大事な娘を傷つけられて黙ってる親なんかどこにもいない。
ジニアは山からアイビーを落とすような事態に持って行き、尚且つ十分に探しもしなかった。
そのせいでアイビーは視力と聴力を失い、一カ月もの眠りについてしまった。
視力と聴力は回復したけど今度は記憶まで失って・・・どう考えても許せるものじゃなかった。
「・・・シャガさんに許してもらわなくても・・・アイビーに許してもらえたらそれでいいです。」
「・・・・。」
「じゃあ、失礼します。」
頭を下げて、ジニアは去って行った。
ーーーーー
同時刻、アイビーは果物屋さんで買い物を済ませてシャガのもとへ戻ろうと足を進めた。
でも少し歩いたときにニゲラの姿を見つけて思わず隠れていた。
(ニゲラだ・・・!)
ニゲラの姿を2か月ぶりに見たからか、胸がきゅぅー・・・っと締め付けられるのがわかった。
どきどきしてしまってまともに見ることすら出来ない。
(もうほんと重症・・・嫌になっちゃう・・・。)
気になり始めたら想いは止まらない。
ましてや相手も私を想ってくれてる。
溶けるようなキスをしたことが頭の中に蘇ってきて、目に涙が溜まって行く。
(ニゲラにはできるだけ会わないようにしなくちゃ・・・。)
ジニアやセダムたちには記憶をなくしたという『嘘』をつき続けられる自信があった。
私に求婚してくれてる3人の想いを考えたら、応えれると思った。
でもニゲラは・・・ニゲラだけには無理な気がしてならなかった。
きっと・・・嘘がつけない。
(会うと絶対ばれる。だから・・・できるだけ会わない。)
私はニゲラに背を向けるようにして歩き始めた。
ーーーー
「とうさーんっ、果物買ったよーっ。」
手を振りながらシャガのもとに戻ると、ジニアの姿がもう無かった。
話が終わって、きっとジニアは帰っていったんだろう。
「おかえり。・・・じゃあ帰ろう。」
「うんっ。」
私の荷物をシャガが取ってくれ、二人で家に向かって歩き始めた。
ーーーーー
ーーーーー
私が病院を退院してからまた1週間の時間が流れた。
あまり外に出ることを良しとしないシャガの言いつけを守って、家にこもってる。
家事は『身体が覚えてる』ということにして、ほぼ前の通りに私がしていた。
その方が体力の回復も早い。
「ねぇ、とうさん。お昼食べ終わったら畑の根菜抜いてきていい?晩御飯に使うから。」
シャガが用意してくれたご飯を口に放り込みながら聞いた。
朝と昼はシャガが作ってくれるけど、夜は私が作ることになってるのだ。
「いいぞ?一番デカいの引いてきてくれ。他のも成長するから。」
「わかってるよー。」
この世界は気温が一定の割に、いろんな作物が畑で生る。
春の気候なのに、大根やピーマン、トマトに白菜・・・
季節がバラバラの作物が同じ畑で実るのだ。
加えてシャガの畑は小さな小川付きだ。
家の裏に川が流れていて、その川で土を落として帰ってくる。
溺れるほどの深さでもないし、一跨ぎで越えれるくらいの幅。
シャガの家は・・・実にいい物件だ。
(今日は大根炊いて・・・魚焼こうかな。)
メニューを考えながらご飯を食べ、私は食器をキッチンに下げに行った。
ざざっと洗ってから畑に向かった。
家を出て隣にある畑で元気な大根を探していく。
「葉っぱがぴんぴんで・・・おっきいやつ・・・うーん・・」
しゃがみながら一つずつ見ていく。
種を蒔くときに日にちをずらせばちょうどいい感じに成長がずれてくれて食べごろな野菜がたくさんできるから、間違えて成長途中の野菜を抜かないように気をつける。
「まだ途中のやつ抜いたら他のが大きくなりすぎて食べ切れなくなっちゃうもんねー。」
畑で一番大きい大根を2本引き抜き、家の裏にある川に持っていく。
その水に大根をつけて、ばしゃばしゃと洗いながら土を落としていった。
「ふー・・これくらいでいいかな。」
川から大根を引き上げ、家に戻ろうとくるっと振り返る。
すると私の真後ろに誰かが立っていたようで、私はぶつかった。
「ふぎゃっ・・!」
「あ、悪い。声かけんの忘れてたわ。」
悪びれる気も無さそうに言ったのは・・・セダムだ。
「・・・セダム!?」
「よぉ、アイビー。久しぶり。」
にかっと笑って手をひらひらと振ってる。
「どうしたの?」
水で濡れてる大根を抱えながら聞いた。
「ちょっと出かけないか?」
「私は別にいいけど・・・。」
「シャガさんには言ってあるから。」
「そう?じゃあこれ置いてくるからちょっと待ってて?」
そう言って私は一旦家に戻った。
念の為に家にいたシャガに確認すると、確かにセダムはシャガに言ってたようで『疲れる前に帰って来い』とだけ言われた。
晩御飯の支度もあることだし『短い時間だけ』とセダムに伝えて私たちは町に向かって歩き始めた。
「何か用事でもあったの?」
歩きながら聞くと、セダムは両手を頭の上で組みながら話始めた。
「そうだな。・・・アイビーはあの日のこと覚えてないんだろ?」
「町で転んだ時のこと?こけたときに石があって頭をぶつけたんだよね?」
シャガから聞いたあの日のこと。
山から落ちたことを忘れてることになってる私に、シャガは『町でこけた』とう情報をくれた。
そこで頭をぶつけて記憶が少しおかしくなってる・・・と。
「そうだな・・・。」
セダムはそのあと黙ってしまい、一言も話さないまま私たちは歩き始めた。
町の中を通り過ぎ、学校の横を通り抜けて・・・私たちは湖に出た。
セダムとここに来るのは初めてだ。
「この回り、1周して帰ろう。」
「?・・・うん。」
用事があって私を誘ったと思ったのに、セダムは何もいわないまま帰ることを提案してきた。
病院を退院して時間は経ってるものの、もしかしたら体調を気遣ってくれてるのかもしれない。
そう思いながらゆっくり湖のほとりを歩き始めた。
回りに建物がないからか、風が程よく吹き抜けていき髪の毛が揺れる。
ぼさぼさにならないように手で押さえようとしたとき、セダムが後ろから抱きしめてきた。
「え・・・?」
「・・・ごめんな、守れなくて。」
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