妹に「あの男は危険」と注意するが、彼を溺愛する妹は結婚する「助けて!」嫁いだ妹から緊急の手紙が届いた。

佐藤 美奈

文字の大きさ
9 / 11

第9話

しおりを挟む
「ローサ声が震えているよ」
「私にこんなことしてただで済むと思ってるの!お父様に言いつけますからね!」

ローサは弱みを見せないように、虚勢を張って強がっているのは明らかだ。足が震えるほど心が乱れて激しく汗をかいている。

義父母と夫のリチャードは、完全に自分の敵だと認識した。早くこの家から逃げ出したいと思い、慌てて周囲の状況を確かめる。だが前も横もメイドの壁で囲まれていた。

それでも強引に突破する決意をし、何とか包囲網を抜けようと頑張りますが、ローサの華奢な体で抵抗することができるわけもなく、瞬く間に意識を失っていく。


「ここは……?」

一時もうろう状態に陥っていたローサが目を覚ます。視界はほとんど真っ黒になって何も見えない。この場所がどこなのか?不安げな表情のローサは小さな声を発した。

「早く出しなさい!」

気絶する寸前のことを思い出したローサは、怒って抗議の声を上げるも室内から響く自分の叫び声が虚しく反響するだけだった。ローサは問答無用で地下に閉じ込められてしまう。

寒気が走るのを感じて、思わず両手で身体を丸めて身を守った。ふと毛布の上で寝かされていたことに気がついて、毛布にくるまって横になる。

徐々に空気が冷えて一段と暗くなっていく。突然放り込まれたローサは、一人ぼっちでたとえようもなく心細くて、自分だけがこの世界から取り残されたような複雑な気持ちだった。

「お姉様ごめんなさい……」

あの男は頭がおかしい。ローサに接する態度にも異常が見られるから結婚を考え直したら?そう言って自分を心配してくれた姉クレアの顔を思い浮かべると、泣けてきて謝罪の言葉と涙が止まらない。

クレアの助言は常に適切であった。品行が悪いリチャードの性格をいち早く察知し、自分の未来を案じて正しい方向へ導いてくれようとしていたのだ。

「お姉様は妹の私が先に結婚するので、うらやましく感じてジェラシーに狂っているのでしょ?」
「ローサそうじゃないの!あの男がまともな人間性を持っているとは思えないの」
「妹の結婚を素直に祝福もできないのですね。お姉様はご自分が恥ずかしく思わないのですか?」

両親からも結婚して大丈夫かと何度か心配された。彼のことを告げ口しているのかと、卑劣な手段で結婚を邪魔する姉に憎らしさが込み上げる。

一生懸命に説得してくれたクレアを冷たく突き放してないがしろにした。そればかりか結婚する自分に嫉妬していると思い、見下す発言を繰り返して好戦的に応じていた。

「お姉様助けて……」

悲しみで感傷的な涙を流すローサは過去を振り返って、ささやき声でクレアへの懺悔と救済を願う気持ちがどこまでも尽きなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一年付き合ってるイケメン彼氏ともっと深い関係になりたいのに、あっちはその気がないみたいです…

ツキノトモリ
恋愛
伯爵令嬢のウラリーは伯爵令息のビクトルに告白され、付き合うことになった。彼は優しくてかっこよくて、まさに理想の恋人!だが、ある日ウラリーは一年も交際しているのにビクトルとキスをしたことがないことに気付いてしまった。そこでウラリーが取った行動とは…?!

皇后陛下の御心のままに

アマイ
恋愛
皇后の侍女を勤める貧乏公爵令嬢のエレインは、ある日皇后より密命を受けた。 アルセン・アンドレ公爵を籠絡せよ――と。 幼い頃アルセンの心無い言葉で傷つけられたエレインは、この機会に過去の溜飲を下げられるのではと奮起し彼に近づいたのだが――

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

【短編版】憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化進行中。  連載版もあります。    ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    義務的に続けられるお茶会。義務的に届く手紙や花束、ルートヴィッヒの色のドレスやアクセサリー。  でも、実は彼女はルートヴィッヒの番で。    彼女はルートヴィッヒの気持ちに気づくのか?ジレジレの二人のお茶会  三話完結

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

魔性の女に幼馴染を奪われたのですが、やはり真実の愛には敵わないようですね。

Hibah
恋愛
伯爵の息子オスカーは容姿端麗、若き騎士としての名声が高かった。幼馴染であるエリザベスはそんなオスカーを恋い慕っていたが、イザベラという女性が急に現れ、オスカーの心を奪ってしまう。イザベラは魔性の女で、男を誘惑し、女を妬ませることが唯一の楽しみだった。オスカーを奪ったイザベラの真の目的は、社交界で人気のあるエリザベスの心に深い絶望を与えることにあった。

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

処理中です...