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第4話
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私の中で、なにかが音を立てて崩れていく。
今まで積み上げてきた、彼への信頼。彼との幸せな思い出。彼がくれた優しい言葉。そのすべてが、ガラガラと足元から崩れ落ちていく感覚。
「フレッド様……それは、どういう意味で……?」
やっとの思いで絞り出した声は、自分でも驚くほど震えていた。
姉とヒューゴ様も、信じられないものを見るように目を見合わせ、明らかに空気が変わったのを感じ取っていた。ヒューゴ様の銀灰色の瞳が、氷のように冷たい光を放っている。カミーユ姉様の顔からは、血の気が引いていた。
けれどフレッド様は、まったく悪びれることなく、ただ神妙な顔で首をかしげて言った。
「忠告だよ。お前には私にふさわしく、そして、幸せになってほしいからこそ言ってるんだ。大神官の妻となるからには、それ相応の品格が求められる。今のままのお前では、正直言って、少々物足りないんだよ」
そう言うその目は、私ではなく、また姉を見ていた。
祈るような眼差しで、すがるように見つめる。その視線が、すべてを物語っていた。
ああ、そうか。
私は、知ってしまった。
この人が私を選んだのは、私の素朴さを愛してくれたからじゃなかった。扱いやすくて、家柄もそこそこで、彼の隣に置いても邪魔にならない、都合のいい存在だったからだ。そして、もっと華やかで、彼の野心を満たしてくれるであろう『姉』という存在を知って、私という存在が急にくすんで見えたんだ。
私が彼の理想の聖職者という仮面を信じ込んでいたように、彼もまた、私のことを『美しい姉を持つ、地味で従順な妹』という型にはめて見ていたに過ぎない。
清廉潔白だと思っていた人の仮面の裏に、冷たく輝く野心と、偽善の影が潜んでいたことを。私が愛したのは、この人が作り上げた幻だったことを。
……フレッド様。
声が出ない。唇が震える。涙が溢れそうになるのを、必死で堪える。こんな男のために、泣いてたまるか。
そのとき、すっとカミーユ姉様が私の前に立った。まるで私を庇うように。その横顔は、いつもの柔和なものではなく、氷のように冷たく、そして鋼のように強い決意に満ちていた。
「大神官様。妹は、今のままで十分に魅力的ですわ。あなたの『物足りない』という評価は、あなたのご器量を映す鏡のようですわ。まさか、それが本心だとしたら……少々、残念に思いますの」
凛とした声が、静まり返った部屋に響き渡る。フレッド様が、はっとしたように姉様を見た。
今まで積み上げてきた、彼への信頼。彼との幸せな思い出。彼がくれた優しい言葉。そのすべてが、ガラガラと足元から崩れ落ちていく感覚。
「フレッド様……それは、どういう意味で……?」
やっとの思いで絞り出した声は、自分でも驚くほど震えていた。
姉とヒューゴ様も、信じられないものを見るように目を見合わせ、明らかに空気が変わったのを感じ取っていた。ヒューゴ様の銀灰色の瞳が、氷のように冷たい光を放っている。カミーユ姉様の顔からは、血の気が引いていた。
けれどフレッド様は、まったく悪びれることなく、ただ神妙な顔で首をかしげて言った。
「忠告だよ。お前には私にふさわしく、そして、幸せになってほしいからこそ言ってるんだ。大神官の妻となるからには、それ相応の品格が求められる。今のままのお前では、正直言って、少々物足りないんだよ」
そう言うその目は、私ではなく、また姉を見ていた。
祈るような眼差しで、すがるように見つめる。その視線が、すべてを物語っていた。
ああ、そうか。
私は、知ってしまった。
この人が私を選んだのは、私の素朴さを愛してくれたからじゃなかった。扱いやすくて、家柄もそこそこで、彼の隣に置いても邪魔にならない、都合のいい存在だったからだ。そして、もっと華やかで、彼の野心を満たしてくれるであろう『姉』という存在を知って、私という存在が急にくすんで見えたんだ。
私が彼の理想の聖職者という仮面を信じ込んでいたように、彼もまた、私のことを『美しい姉を持つ、地味で従順な妹』という型にはめて見ていたに過ぎない。
清廉潔白だと思っていた人の仮面の裏に、冷たく輝く野心と、偽善の影が潜んでいたことを。私が愛したのは、この人が作り上げた幻だったことを。
……フレッド様。
声が出ない。唇が震える。涙が溢れそうになるのを、必死で堪える。こんな男のために、泣いてたまるか。
そのとき、すっとカミーユ姉様が私の前に立った。まるで私を庇うように。その横顔は、いつもの柔和なものではなく、氷のように冷たく、そして鋼のように強い決意に満ちていた。
「大神官様。妹は、今のままで十分に魅力的ですわ。あなたの『物足りない』という評価は、あなたのご器量を映す鏡のようですわ。まさか、それが本心だとしたら……少々、残念に思いますの」
凛とした声が、静まり返った部屋に響き渡る。フレッド様が、はっとしたように姉様を見た。
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