美人な姉を溺愛する彼へ、最大の罰を! 倍返しで婚約破棄して差し上げます

佐藤 美奈

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第20話

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【ヒューゴの視点】

『セイレーンの涙』
その魔道具の存在を知った時、俺は、天と地がひっくり返るほどの衝撃を受けた。
カミーユが、操られていた?
あの裏切りは、彼女自身の意志ではなかった?

胸のつかえが取れたようだった――いや、違う!
ならば、俺のこの怒りは、この絶望は、どこへ向けたらいい?
妻を憎んでいた。裏切りを許せないと思っていた。だが、その妻が、俺と同じ、フレッドの被害者だったとしたら?

怒りもある、あきらめもある――それでも心のどこかに、消えかけた愛が残っている。
それらすべてが、ぐちゃぐちゃに混ざり合った。
何とも言えない気持ちに、俺は押しつぶされそうになっていた。

離婚は、もう成立している。
だが、このままでは終われない。俺は、俺自身のけじめをつけるために、意を決して、カミーユが幽閉されている離れの塔を訪れた。

重い扉を開ける。
そこにいたのは、俺の知っている太陽のように輝いていたカミーユではなかった。
光を失った金髪はばさばさに乱れ、頬はこけ、生気のない虚ろな瞳で、ただ壁の一点を見つめている。俺が入ってきたことにも、気づかない様子だった。

「カミーユ」

俺が声をかけると、彼女の体がびくりと震えた。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、彼女の顔がこちらを向く。そして、俺の姿をその瞳に映した瞬間、彼女の目に、正気の光が戻った。

次の瞬間、彼女は、感情を抑えきれず、声を上げて泣きながら俺の足元に崩れ落ちた。

「ヒューゴ……! あ、あなた……! ごめんなさい、ごめんなさい……! うわあああん……!」

床に額をこすりつけ、子供のように泣きじゃくる。
彼女は、自分が魔道具で操られていたことを、途切れ途切れに、声を詰まらせながら語った。しかし、決してそれを言い訳にはしなかった。

「でも、でもっ、私が、私が弱かったから……! あなたという、世界一の夫がいながら、他の男の甘い言葉に、心を揺らしてしまった、私が、愚かで、汚らわしい女だから……っ!」

「……」

「どうか、お願い……! 私を、罰して……! どんな罰でも受けますから……だから……だから……」

どうしてほしいと、彼女は言いたかったのか。
許してほしい、とでも?

俺は、目の前で泣き崩れる彼女を見下ろしていた。
その姿は、紛れもなく、俺がかつて命をかけて愛した、カミーユだった。
抱きしめてやりたい衝動に駆られる。お前も被害者だったんだと。

俺は、ゆっくりと、その場にしゃがみこんだ。
そして、カミーユの肩に、そっと手を置く。彼女の体が、驚きに大きく震えた。

「カミーユ。顔を上げろ」

彼女は、おずおずと顔を上げる。涙と鼻水で、ぐしゃぐしゃの顔だった。

「大丈夫、君は何ひとつ汚れてなんかいない」

「……っ!!!」

「お前はそんなふうに思われるような人間じゃない! 君を汚いなんて言う世界のほうが、間違ってる!」

「……っ!!!!!」

「子供たちが、ママに会いたいって……子供たちの心が、母親の帰りを待っている」

彼女の壊れかけた心を包み込むように、俺は静かにその体を引き寄せた。そこには、これまでにないほど深い想いがあった。
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