美人な姉を溺愛する彼へ、最大の罰を! 倍返しで婚約破棄して差し上げます

佐藤 美奈

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第24話

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それから、私たちは、まるでずっと昔からの友達だったかのように、毎日のように顔を合わせるようになった。

ある日は、茶目っ気のある笑みを浮かべて、私を市場へと誘った。

「貴族の食事は肩が凝るだろ? もっと美味いもん、食わせてやりますよ」

活気のある市場は、色と音と匂いで溢れていた。アレスターは私の手を取り、人混みをかき分けるように進んでいく。握られた手から伝わる彼の手のひらの熱さに、どきりとした。

「ほら、これ! ここのパンが絶品なんだ」

彼は焼きたてのパンを二つ買うと、一つを私に差し出した。行儀悪く大きな口で頬張る彼を見て、最初は戸惑ったけれど、そのあまりに美味しそうな顔に、私もつられて一口かじってみる。

「……おいしい!」

「だろ?」

私たちは、焼きたてのパンを片手に、串焼きの魚をつまみ、搾りたての果実水を飲んで歩いた。侍女のリナは少し呆れた顔をしていたけれど、私の顔が本当に楽しそうだったからか、何も言わずに後ろからついてきてくれた。
私が『伯爵令嬢マリア』であることを忘れ、ただの『マリア』でいられる時間。それは、驚くほど自由で、楽しかった。

またある日は、街外れの崖の上まで、私を連れて行ってくれた。

「俺のお気に入りの場所に、案内してやりますよ」

そこからは、ラ・セリーヌの青い海と空が、一望できた。

「すごい……!」

「だろ? ここにいると、悩み事なんて、どうでもよくなる」

私たちは、崖の縁に腰掛けて、とりとめのない話をした。彼は、子供の頃に家庭教師を困らせた悪戯の話や、初めて船に乗った時の失敗の話を、面白おかしく語ってくれた。私も、子供の頃の姉様との思い出や、飼っていた小鳥の話をした。

フレッドは、いつも私をしていた。『君は素朴でいい』『もっと気を遣うべきだ』と。でも、アレスターは違った。彼はただ、私という人間そのものに興味を持って、私の話を、楽しそうに聞いてくれた。それが、どれほど私の心を軽くしてくれたか。

散歩の途中で、突然のスコールに見舞われたこともあった。

「うわ、最悪だ!」

私たちは、ずぶ濡れになりながら、近くの漁師小屋の軒下で雨宿りをさせてもらった。

「あーあ、びしょ濡れだ。風邪ひくなよ」

アレスターは、自分の上着を脱いで、私の肩にかけてくれた。彼の匂いと体温に包まれて、心臓が大きく高鳴るのを感じる。雨の音にかき消されるくらい、大きく。
ふとした瞬間に、視線が絡み合う。彼のヘーゼル色の瞳が、すぐそこにある。私は思わず目を逸らしてしまった。

「……はは、今の顔、真っ赤だぜ、マリア」

アレスターは、そんな私の気持ちに気づいているのかいないのか、わざと茶化すように言って、空気を和ませてくれた。その絶妙な距離感が、もどかしくて、でもやっぱり心地よかった。
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