「神に見捨てられた無能の職業は追放！」隣国で“優秀な女性”だと溺愛される

第14話 仕事が決まる

「それで仕事は、いつ紹介していただけますか？」
「普通の場合はアンナさんに合った仕事をこちらで探して、数日後に改めてお越しいただいて仕事を紹介するというのが一般的な形になります」
「あの、実はお金が今あんまりなくて……」
「そうですか。それならすぐに、今ある仕事を紹介いたします」
「ありがとうございます」
「そういう方も結構いらっしゃいますから大丈夫ですよ。調べますので少しお持ちください」

アンナは催促するように言った。お金に余裕がないので、すぐに仕事を紹介してもらいたかった。受付の女性はアンナの気持ちを察して現在募集している仕事はないかと書類に目を通して探してくれた。

アンナのように今お金がなくて、すぐに仕事を求める人も珍しくないので、嫌な顔することなくいつも通りの出来事みたいに世話してくれる。アンナは親身な感じに接して相談に乗ってくれる受付の女性に、感謝して心が熱くなって涙が溢れる思いに浸る。

「今はここから近くの場所で、掃除の臨時職員の募集をしていますね。依頼主は貴族で購入された別荘の掃除みたいですね。そちらで働くのはどうですか？」
「ぜひ、お願いします！」

受付の女性はアンナに向いている仕事が見つかったらしく再び口を開いた。貴族が買い上げた別荘の掃除の募集をしているという。アンナは強く望む気持ちで仕事を引き受けると言った。

掃除なら自分にもできるだろう。公爵家では使用人たちに毎日のように様々な仕事を押し付けられていた。アンナも自分は家事で無能なんだからと健気に文句も言わずに雑用係として働いていた。仕事が決まって重荷を下したように安心してアンナは表情を緩める。

「――何の用だ？」
「斡旋所あっせんじょからの紹介で参りました。アンナと申します。あのこれを……」

アンナは職業安定所から二キロの距離を歩いて目的の場所にやってきた。広い敷地に建てられた城のような屋敷でした。門番の男性に鋭く厳しい表情を向けられると、アンナは不安になりながら受付の女性に渡された紹介状を出した。

「通っていいぞ」

門番は無愛想な態度を見せた。ぶっきらぼうな口調にもアンナは軽く会釈をして、こんなものだと言う思いで敷地内に入って行く。実はこの時、門番はなんて綺麗な娘なんだと胸が弾んでいた。

「この部屋の掃除をお願いします。一時間後に確認に来ますから、やれるだけやってみてください」
「わかりました」
「アンナさんは職業は『家事』なんですね」
「はい」
「こんなことを言うのもなんですが、アンナさんには期待していませんから適当に頑張ってください。でもあまりにも使えなかったらクビにしますからね」

すでに屋敷には掃除の募集で十数人集まって黙々と作業に従事していた。掃除募集の総責任者はメイド姿の女性。アンナの職業が家事と分かると、メイドの女性は冷たい口ぶりで言う。

（家事なんてほとんど役に立たないに決まっています。どうせ仕事も遅くて使えないわよね。でもあまりにも酷いようならすぐに解雇すればいいか。それにしても美しい顔をしてるわね。この容姿なら、もっと楽でお給金が高い別の仕事をしたほうがいいんじゃないかしら？）

メイドはそんなことを思ってアンナに部屋の掃除をするように言った。アンナは緊張した顔で返事をしていた。メイドが部屋からいなくなるとアンナは気を引き締めて掃除を始めた。