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第12話 ただより高いものはない
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「あ、はい……トーストをお願いします」
「トーストだけでよろしいでしょうか? 他に何かサラダに飲み物などは?」
「トーストだけで大丈夫です」
「かしこまりました」
顔を伏せて休んでいたアンナは、突然に声をかけられてすぐに言葉が出なくて動揺するが、テーブルに置いてあったメニュー表を見てトーストを注文した。マスターは以外そうに尋ねた。客の注文でトーストだけと言うのは珍しかったから、もう一度確認して飲み物などはいかがでしょうとすすめた。
アンナはお金がないので節約するためでもあった。アンナが持っていたお金は馬車代と食費などの雑費でかなり減っていた。贅沢な食事をしていては、お金はすぐに底をついてしまう。客がそう言うならと納得したマスターは頭を軽く下げて厨房に消えてゆく。
「美味しい……」
アンナは運ばれてきた焼いたパンを一つちぎって口に入れた。もぐもぐと噛んで心置きなく味わっていた。空腹だったので涙が出るほどの思いだった。何の変哲もないトーストだけど感動的に美味しくて、いくらでも食べられる気がした。でも一つで我慢するとしよう。
「これ、よろしければどうぞ」
未練の残る顔でアンナがトーストを食べ終わると男性が何かテーブルに置いた。見ると果物を使ったパイ菓子でした。甘い香りがアンナの鼻先に漂ってくる。マスターはひげの中で口元が微笑み好意的な感じで食べるように勧めてきた。
「え? いや、頼んでませんけど?」
「サービスですので」
アンナは理解できないという風に首を振って言葉を返した。それに先ほど人の顔をじろじろ見てきたのであまり良い印象はない。アンナの言葉にマスターは無意識に筋肉がゆるむように微笑みサービスだという。
「どうして?」
「何となくです」
「はぁ?」
「どうぞ、ご遠慮なく召し上がってください」
アンナは怪訝そうな表情で、なんでサービスしてくれるのかと疑問を投げかけた。マスターは深く考えずに何となくサービスするという。アンナはこの店に初めて入った。別にマスターと親しい間柄というわけでもない。それなのにどうしてサービスしてくれるのかと、考えても頭の中は混乱するばかりだった。たまたま立ち寄った客にサービスしてたら店が潰れてしまう。
マスターの本音はアンナが美人だからサービスしただけのこと。美人にトーストだけでは気の毒という気分になったし、この喫茶店はお菓子にも力を入れていて、常連客にも好評でアンナに食べてもらいたかったのもある。それで美味しかったら店をよく利用してくれたら言うことないし、これがきっかけで美しい女性と親しくなれたら嬉しい。マスターにはそんな思惑が隠されていた。
「後で代金を請求しても払いませんからね!」
「もちろんです。お代はいただきません!」
アンナは念押しするように言った。あることが脳裏をかすめたのだ。ぼったくりをする悪質な飲食店があると聞いたことがあった。客が注文してないものを勝手に出して無料と言っておきながら後で追加料金を請求する。実際にそういう店があるのも事実。
この人は何も知らない私を罠にはめようとしてると思ってアンナは厳しい視線を向ける。美人に警戒心でいっぱいの瞳を向けられて、マスターは虚を衝かれ慌てながらも切り返す。こちらのサービスですから料金は発生しないと力強く言う。
そう言われてアンナもやっと納得した気分で甘いデザートに口をつける。サクッとした仕上がりのパイ生地に、中に入っている甘い果物の快い香りを深々と吸いこんだ。疲れているので甘さが体に染み渡る。うっとりするほど美味しい。本当言うとアンナは甘いものに飢えていた。早く食べたくて仕方なかった。
(ああ、美しい……)
マスターはアンナの幸福そうな顔を瞬きせずに見惚れていた。
「トーストだけでよろしいでしょうか? 他に何かサラダに飲み物などは?」
「トーストだけで大丈夫です」
「かしこまりました」
顔を伏せて休んでいたアンナは、突然に声をかけられてすぐに言葉が出なくて動揺するが、テーブルに置いてあったメニュー表を見てトーストを注文した。マスターは以外そうに尋ねた。客の注文でトーストだけと言うのは珍しかったから、もう一度確認して飲み物などはいかがでしょうとすすめた。
アンナはお金がないので節約するためでもあった。アンナが持っていたお金は馬車代と食費などの雑費でかなり減っていた。贅沢な食事をしていては、お金はすぐに底をついてしまう。客がそう言うならと納得したマスターは頭を軽く下げて厨房に消えてゆく。
「美味しい……」
アンナは運ばれてきた焼いたパンを一つちぎって口に入れた。もぐもぐと噛んで心置きなく味わっていた。空腹だったので涙が出るほどの思いだった。何の変哲もないトーストだけど感動的に美味しくて、いくらでも食べられる気がした。でも一つで我慢するとしよう。
「これ、よろしければどうぞ」
未練の残る顔でアンナがトーストを食べ終わると男性が何かテーブルに置いた。見ると果物を使ったパイ菓子でした。甘い香りがアンナの鼻先に漂ってくる。マスターはひげの中で口元が微笑み好意的な感じで食べるように勧めてきた。
「え? いや、頼んでませんけど?」
「サービスですので」
アンナは理解できないという風に首を振って言葉を返した。それに先ほど人の顔をじろじろ見てきたのであまり良い印象はない。アンナの言葉にマスターは無意識に筋肉がゆるむように微笑みサービスだという。
「どうして?」
「何となくです」
「はぁ?」
「どうぞ、ご遠慮なく召し上がってください」
アンナは怪訝そうな表情で、なんでサービスしてくれるのかと疑問を投げかけた。マスターは深く考えずに何となくサービスするという。アンナはこの店に初めて入った。別にマスターと親しい間柄というわけでもない。それなのにどうしてサービスしてくれるのかと、考えても頭の中は混乱するばかりだった。たまたま立ち寄った客にサービスしてたら店が潰れてしまう。
マスターの本音はアンナが美人だからサービスしただけのこと。美人にトーストだけでは気の毒という気分になったし、この喫茶店はお菓子にも力を入れていて、常連客にも好評でアンナに食べてもらいたかったのもある。それで美味しかったら店をよく利用してくれたら言うことないし、これがきっかけで美しい女性と親しくなれたら嬉しい。マスターにはそんな思惑が隠されていた。
「後で代金を請求しても払いませんからね!」
「もちろんです。お代はいただきません!」
アンナは念押しするように言った。あることが脳裏をかすめたのだ。ぼったくりをする悪質な飲食店があると聞いたことがあった。客が注文してないものを勝手に出して無料と言っておきながら後で追加料金を請求する。実際にそういう店があるのも事実。
この人は何も知らない私を罠にはめようとしてると思ってアンナは厳しい視線を向ける。美人に警戒心でいっぱいの瞳を向けられて、マスターは虚を衝かれ慌てながらも切り返す。こちらのサービスですから料金は発生しないと力強く言う。
そう言われてアンナもやっと納得した気分で甘いデザートに口をつける。サクッとした仕上がりのパイ生地に、中に入っている甘い果物の快い香りを深々と吸いこんだ。疲れているので甘さが体に染み渡る。うっとりするほど美味しい。本当言うとアンナは甘いものに飢えていた。早く食べたくて仕方なかった。
(ああ、美しい……)
マスターはアンナの幸福そうな顔を瞬きせずに見惚れていた。
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