「神に見捨てられた無能の職業は追放!」隣国で“優秀な女性”だと溺愛される

佐藤 美奈

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第37話 普通じゃない女性

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「では、ご厚意に甘えてお邪魔させていただききます」

アンナはルークの熱心な説得に参ってしまい、わかりましたとルークの家にお世話になることにした。アンナは遠い異国の地で、落ち着いて過ごすことのできる場所を探していた。

この国に着いてからは、普通に歩いていたら人々から好奇的な視線を浴びて、何か自分の噂をしているような感じで反応をうかがわれた。アンナは怖くていたたまれない気持ちになってその場から逃げ出した。それから朝食を食べに入った店で、甘いお菓子をサービスしてもらって良いこともあった。

幸いなことに職業安定所の職員のマリンからは親切に面倒をみてもらった。紹介してもらった仕事をすぐにクビにされて悲しいこともあったけど、最後には思いがけない出会いでルークに巡り会えた。アンナはやっと安心した顔になって、一気に肩の力が抜けた。

「――アンナ何をやっているんだ?」

その後しばらくして、ルークはアンナに声をかけた。アンナがやっている作業が気になった。

「くすんだ色で輝きの悪い石があったので、軽くこすって光らせています」

アンナは宝石や結晶質の石を一つずつ手に取って、埃《ほこり》を払うように軽く手で撫でていた。すると不思議なことに色の彩度が落ちた石が、何倍もキラキラ光り輝くようになった。それをアンナは手慣れた手つきで行っている。

ルークは不思議なものでも見ているようであった。普通の石が価値の高い宝石に変わっていく。その瞬間をルークはアンナの隣で、いったいどんな手品を使ってるんだと思いながら首をかしげて見ていた。

「なんでアンナはそんな事ができるんだ? 家事の特別な能力か? でも家事には最初からスキルがないしな……」
「慣れたら、誰でもできると思いますよ」

ルークは疑うような目で質問した。家事にそんな能力があるなんて聞いたことがないぞ、と何かぶつぶつ言っていた。アンナは普通なことですよ、みたいな感じで誰でもできると言葉を返した。

「え……? 誰でもできる事なのか?」
「はい、ルークさんも簡単なのでお試しいただければ」

ルークはアンナから返された言葉で頭の中で混乱が起きた。誰でもできるものなのかと口にして疑いが消え去らない様子。そんなルークを見て、アンナは試しにやってみたらどうですかと勧めた。

「じゃあちょっと、僕もやってみようかな。どうするんだ?」
「ただ軽く石を数回なでるだけですよ」

アンナがそういうのでルークは自分もやってみるという。石を手にとって触るだけなので難しいことはない。むしろ簡単すぎることだ。ルークはやり方を聞いたが、やり方と言っても石を軽く手でなでるだけなので、詳しく説明するまでもないとアンナは思った。

「――あれ? 全然できないけど? アンナみたいに石が眩しいほどに光り輝かないんだが?」

おかしいな。アンナが簡単って言ったのに自分にはできないぞ。ルークは何度も石をこすってみた。少しも光らないので、力を入れて強くこすってみたりした。隣でアンナのしているのを見ながら試してみたが、結局ルークの石がアンナと同じように光を放つことはなかった。

「初めてだからじゃないですか?」

アンナからしたら大したことないことなのに、どうしてルークはできないのだろうと不思議に思う。初めてだから仕方ないですよとアンナは気を遣うように言った。

「そうなのか……? あ! この石が悪いかもしれないな。アンナちょっとやってみてくれないか」

ルークは自分が未経験者だからできないのか、と思いながらも素直に納得できるわけもない。その時、ルークは頭に閃きがあった。自分の選んだ石が良くなかったのだと思った。アンナに試しにやってみてほしいと手渡した。

「光りましたよ」
「な、なぜだ!?」

ルークに渡された石をアンナがささっと撫でると、一瞬で白い閃光が輝きだした。アンナがいともあっさりとやってのけると、ルークは信じられないという顔で脳の理解が追いつかなかった。
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