妹に幼馴染の彼をとられて父に家を追放された「この家の真の当主は私です!」

佐藤 美奈

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1話 突然の婚約破棄

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「アリシア様、お茶の用意ができました」

冷たい声が、アリシアの背後から聞こえた。振り返ると、義母と娘のローラが嫌味な笑みを浮かべて立っている。アリシアは小さく息をつき作り笑顔で答えた。

「ありがとうございます、義母様」

広大な公爵家の邸宅で、アリシアはいつも一人だった。幼い頃に母を亡くし、父はすぐに継母を迎えた。継母とその娘ローラは、露骨にアリシアを避け、父も彼女たちばかりを可愛がるようになった。使用人たちも継母に逆らうことを恐れアリシアには冷淡だった。

それでもアリシアは、次期当主としての責任を果たすべく日々勉学に励んでいた。孤独を紛らわせるように、書斎にこもり歴史書や経済書を読みふけった。窓の外に広がる庭園を眺めるのが彼女の数少ない息抜きだった。

ある日、父から呼び出しがあった。重々しい口調で告げられたのは、幼馴染である伯爵家の次男オリバーとの婚約だった。アリシアにとって、それは束の間の希望の光だった。オリバーは、物腰が柔らかく聡明な青年だった。幼馴染の彼は母が亡くなって孤独なアリシアにとって心のよりどころだった。

婚約が決まり準備が進められる中、ローラは何かと理由をつけてアリシアを避けた。父も相変わらず継母とローラばかりを気遣い、アリシアに目を向けることはなかった。それでもアリシアは、オリバーとの結婚に希望を託し耐え忍んだ。

結婚式の数日前、アリシアは父に呼ばれ書斎に通された。父は険しい表情で、一枚の羊皮紙をアリシアに突きつけた。

「これは一体……?」

アリシアが戸惑いながら羊皮紙に目をやると、そこにはオリバーの署名と、婚約破棄を申し出る言葉が書かれていた。

「オリバー様が、婚約を破棄なさったと?」

アリシアは信じられない思いで父を見つめた。父は冷たい声で言った。

「伯爵家から、お前との婚約はなかったことにしたいと申し入れがあった。理由は知らん。だが、お前が何か粗相をしたのだろう」

アリシアは言葉を失った。オリバーが突然婚約を破棄するとは考えられなかった。何か、裏があるに違いない。

「父上、私は何も…」
「言い訳は聞きたくない! お前はいつもそうだ。大人しくしていればいいものを余計なことをして」

父の怒声が、アリシアの耳に突き刺さる。アリシアは震える声で訴えた。

「どうか、オリバー様にお会いさせてください。直接、お話を伺いたいのです」

しかし、父は冷たく言い放った。

「もう遅い。伯爵家との縁談は破談だ。お前はもう、誰にも必要とされていない」

アリシアは絶望に打ちひしがれた。オリバーとの婚約は、彼女にとって唯一の希望だった。それが絶たれた今、彼女に残されたのは孤独と絶望だけだった。

その夜、アリシアは自室で一人静かに涙を流した。窓の外では、月明かりが庭園を優しく照らしていた。アリシアは、遠い空を見上げ心の中で呟いた。

「オリバー様、一体何があったのですか?」

彼女の問いかけは夜の闇に吸い込まれ誰にも届くことはなかった。
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