心から信頼していた婚約者と幼馴染の親友に裏切られて失望する〜令嬢はあの世に旅立ち王太子殿下は罪の意識に悩まされる

佐藤 美奈

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第25話

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「何もないから心配しないで……」

勘が鋭いマリアンヌ夫人はアイラ令嬢が嘘をついていると一点の曇りも無く即座に理解できました。

この子は今、母親である自分にも言えない秘密があり悩みを背負い込んでいるのだと思うと、脳に激しい雷が落ちるほどのショックを受けて体全身を貫いた気持ちになる。

「わ、わかったわ……い、言いたくなったら話してね……」

マリアンヌ夫人は平静を装おうとすればするほど余計に声が震えて言葉がつっかえていました。

ガブリエル殿下の体のいたるところに恋人の自分以外のキスマークが両手足の指では足りないくらい付いていたなんて、アイラ令嬢は口が裂けても母親には言えなかったのです。

バレた時に自分に見せた口にするのもはばかられるガブリエル殿下の品位に欠ける途方もない姿。

小動物のように震えて身を縮めている恥さらしの婚約者。とても生きていけないような屈辱に襲われて悲鳴を上げたみっともない人並み外れた美少年。

強い恥と自責の念でしどろもどろになり逃げ出した涙ぐましく情けない王太子殿下。不名誉な忘れかけていた記憶が次々にはっきりと脳裏に現れる。

うまく伝えられるかどうかも自信がなく、自分が味わった悲しみも怒りも何一つ洗いざらい打ち明けることはできませんでした。

その一番の理由はガブリエル殿下のことをまだ深く愛していたので、彼の尊厳を守り名誉を傷つけないようにするためです。

マリアンヌ夫人に隠すという行為の後ろめたさで、うら若き乙女の心の底は悲しい音がして容易に晴れることはなく、淋しい影の中へ消えていくような思い。

家族が病室から居なくなると生気のない魂が抜けたような顔で深呼吸をして心を落ち着かせていた――


3日後の昼頃、病室のドアをノックする音が聞こえました。

「どうぞ」

起きていて読書をしていたアイラ令嬢が返事をすると病室に入って来たのは学園で同級生の親友と呼べるほど仲の良い3人の令嬢でした。

アイラ令嬢の体を心配した3人は相談してお見舞いに来てくれたのです。

ジュリア伯爵令嬢にフローレンス子爵令嬢にクラリス男爵令嬢です。アイラ令嬢とこの3人はとても相性が良くて話も合い趣味もあって心が通じ合うベストフレンドだと思っています。

しかし一生親友を誓い合った仲なのに、この中の誰かが裏切り者でガブリエル殿下と浮気をしているとはこの時は思いもよらなかった。

疑惑は限りなく黒に染まって犯人を知った時は、現実が受け入れられない気持ちでアイラ令嬢は深い失望を感じて体内を風が吹き抜けるように寂しさが心の一面に広がる。

この世がひっくり返ってしまったような気持ちで信じていた親友に奈落の闇に突き落とされ絶望の鐘が脳内に鳴り響く。

ガブリエル殿下の誇り自尊心を消し去った冷酷無比な犯人は、表ではアイラ令嬢と旧知の間柄で笑顔を向けて集まって一緒にお茶して楽しく喋って遊んでいたのです。

(殿下と婚約をするなんてアイラを許せない……私のほうが誰よりも彼を愛しているのに……)

裏では、どす黒い闇を抱えていてアイラ令嬢に、嫉妬の感情が溢れていて毎日心臓が震えるほどの激しい怒りで狂っていました。
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