婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。

第12話

「この前シルビアから聞いた時は僕も驚いたよ。まさか……って感じだった」
「自分で関係しておきながら何をふざけたことを言ってるの？」

カミュがシルビアを妊娠させたことを申し訳なさそうに答えてくれた。やがてそう遠くない時期にアリーナに話そうと思っていたと、カミュは苦しい言い訳をしていた。

アリーナは男女が逢瀬を重ね続ければ、子供が出来ることは当たり前の事だと不機嫌な顔で叱り飛ばす。まるで他人事みたいなことを言う恋人にも苛立つ。

割り切って別れるのが正解なんだろうけど、アリーナはまだちょっとカミュに対する未練を捨て切れないからなのだろう。

付き合った記念日に、生まれてから初めてプロポーズされて幸せな気分に満たされていたのです。それを思い出すと気持ちの整理がつかない。

「そんな男と結婚しなくて良かったね」
「今結婚していたのと比べれば気が楽でしょ」
「そうだね」

以前に友人達と恋愛がらみの話題になった時に、今のアリーナと同じような立場の女性の話を聞いて、そうだねとアリーナは心が激しく揺れることもなく答えていた。

だが、自分が実際に複雑な状況に置かれてみると、正常な判断ができなくなっていることに気がつく。こんな最低な男であるが、まだ心の片隅に愛情が残っていたのです。

浮気は浮気される側にも問題があることが多いってよく言う意見もありますが、それは多少あるかもと思いを抱いてしまう。

前はそのようなことを絶対に許せなかったのに、カミュを許すためにアリーナは考え方が変わりつつあった。そして周囲を納得させるほどの理由づけが欲しかったのだ。

「とてもかわいい幼馴染がいるんだ」
「ふーん、そうなの」

少し前にカミュから何気なく言われた。その時アリーナは気のない相槌を打って、それほど深刻に考えてなかった。今思うとシルビアのことなのだろうと頭によぎる。

その時にカミュの気持ちを徹底的に追及していれば、残酷な結末を未然に防いでくれただろうか？としばし頭を巡らしてしまう。

シルビアの妊娠の告白がなかったら、間違いなく許していたと思ったことが情けなく感じる。アリーナは、カミュのことを否定しない自分の体も心も悔しい。

「アリーナ僕を捨てないで……」

カミュは目がはれるほど泣いて懇願していますが、心の中で何を考えてるのか理解できない。人生の大事な行事である自分との結婚に対して、カミュはいい加減な態度に見える。

アリーナは正直どうしたいのか自分でもわからない。だが彼女は温かい心をもっているので、道に放置された捨て犬のような男をほっとけない性格だった。