婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

佐藤 美奈

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第5話

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 両家が正式に顔を合わせて話し合い結論として婚約はなかったことになり二人の関係はあっけなく終わりを迎えたと思っていたクロエでしたがその5日後に彼から手紙が届きました。

「今さら何かしら?」

手紙の内容はもう一度やり直したい。自分と家族の欠点や間違いを自覚して幼馴染のエリザベスとは今後関わりを持たないと書いてあります。

この前の話し合いで最初から最後まで声高な主張でエリザベスのことを自分達の家族と吠えるような叫び声を上げていたのをクロエはしっかりと強く記憶に残っている。

それなのにジャックが意外なくらいあっさりと手のひらを返したことに疑問が頭の中に絡みついて離れない。エリザベスを本当に遠ざけることができるのかとまだ半信半疑で信じられませんでした。

「落ちないトイレの汚れのように執念深い男ね」

手紙には彼が両親に鋭い意見で繰り返し説得したらクロエとの結婚に同意するように頷いてくれた。手紙の最後には二人で話し合って落とし所を見い出してクロエと関係を修復したいと言う。

最初に手紙を読んだ時は不愉快そうに頬をふくらませて彼の自分勝手な呼びかけに手紙の返事をしないで相手にしなかった。だがほとんど毎日のように送られてくる彼からの蛇のようにしつこい手紙に一度だけ会うことを決意する。

「今日は来てくれてありがとう。今までのことすまなかった。クロエ許してくれ」

会うなり床に額をこすり付けて謝罪をするジャックにクロエは心を揺さぶられる。彼と会ったら噛み付くような言葉で手紙を粘り強く送って来る執念深い性格だと厳しい言葉を浴びせた上でビンタでも一発食らわせようと考えていた。

「もういいから泣かないで」
「ごめんクロエ……家に来たあの時寂しい気持ちにさせてごめんよ……辛かったよね。反省してる」

だけど気の毒に思うほどにみっともなく情けない表情で悲しい鼻声で泣きながら詫びる彼の姿にクロエも気持ちが高ぶって涙が溢れてきてもらい泣きしてしまう。ジャックの後悔の言葉もどこまでも尽きることはない。

最後は痛々しい状態で倒れている彼をクロエが捨て犬を見るような慈愛に満ちたぬくもりを感じさせる瞳で優しく寄り添い体を起き上がらせて支えていた。彼はクロエの胸にすがって両手で顔を覆いすすり泣く。

これがきっかけで二人は強い絆で結ばれクロエは彼の言葉を信じて再び付き合う意思を固めた。
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